待望の新型日産フェアレディZに乗りました。舞台は陸別(北海道)にある日産の試験場。ドイツのニュルブルクリンク・サーキットを模したテストコースです。
エクステリアは、往年の1st・Z(S30型)の面影を踏襲しながら見事にモディファイされた素敵な仕上がりだと思いました。ボディカラーは黄色系のイカズチイエローや、かつての240ZGに設定されていたグランプリマルーンのオマージュと思われるバーガンディーなど、伝統色を現代風に蘇らせており、Zファンの心をつかむのは間違いありません。ちなみに新型の開発コードはRZ34、旧モデルのZ34を踏襲しています。理由は基本骨格が同じだから。とはいえ、エンジンは先代の3.7リッターV6自然吸気(336ps)から、3リッター・V6ツインターボ(405ps)のVR30DDTT型に変わり、全体の80%を刷新。実質的にはフルモデルチェンジといっていいでしょう。
内装は、もう少しZらしさがほしかったというのが本音です。メインメーターは最新のデジタルディスプレイ式で、メーターフードは普通の直線。Zのアイコン、ダッシュボード上の3連メーター(ブースト計、ターボ回転計、電圧計)はよかったのですが、正面のメインメーターにZらしさが希薄だったのは残念です。また、ATのシフトスイッチは他の日産車とほとんど同じです。
開発担当の方に「せめてシフトスイッチ上部にZの文字を刻むだけでも雰囲気が出るのではないでしょうか」と提案したところ、「それは、できます!」と仰ってくれ、「もし今後変更したら、安東さんの意見を参考にしたと思ってください!」とうれしい言葉をいただきました(笑)
走りの感想をお伝えしましょう。最初にドライブしたのは、ベースグレードのMT。ホイールは、このクラスのスポーツカーとしては、やや小径の18インチですが、デザインを含めて、廉価版の残念な雰囲気はなく、十分に迫力があります。
ワクワクしながら1速に入れ、アクセルオンでクラッチを繋ぐと、ホイールスピンを伴ってスタートしました。思わず笑ってしまうほどの反応に、あわててアクセルを少し戻します。
愛車、ロータスエリーゼの感覚でアクセルを踏んでしまいましたが、Zのトルクはエリーゼの倍近く。予想以上に力強くスタートしてくれました。シフトアップを繰り返し、スタート後の長いストレートで、あっという間にスピードリミッターに当たってしまいました。メーターが186km/hを示したところでピタリと速度が固定されます。超高速域でも安定しているので速度感は麻痺。そのまま高速周回路に入るために右にターンするのですが、スピードを落とすことなく周回路に進入できました。思わず、また笑顔です。しばらく最高速をキープしているとスローダウンの案内が現れ、高速周回からカントリーロードへ。今度は足回りの懐の深さを感じました。ロールは抑えられ、しかも不快な突き上げは少ない、という理想に近い味付けです。
排気音も素晴らしいものでした。ふだんエリーゼに乗っている私からすると、もう少し車内に音が入ってきてもいいのではないかと思いましたが、同乗者のことを考えたら、これくらいがいい塩梅なのかもしれません。
続いてステアリングを握ったのがSTグレードの9速ATです。タイヤは19インチ。このモデルではスタート時にローンチコントロールを試しました。スポーツモードにセットし、左足でブレーキを強く踏み、両側のシフトパドルを引き、右足でアクセルを床まで思いっきり踏んで、6秒以内にブレーキとパドルを一気にリリースすれば、軽いホイールスピンを伴って、ロケットスタートが決まります。
実はこのAT、海外市場向けのピックアップトラック用のシステムを味付けを変えて積んでいるそうです。トラック用だけに耐久性や信頼性は十分担保されている、とのこと。STグレードの走りは、ベースグレードをさらにシャキッとさせた印象で、両グレード共に美点が、はっきりしています。
新型の価格は、524万1000円から646万2500円。残念ながら注文が予想を超えてしまい、受注を一旦停止することが決まりました。それにしても実車のZを見たとき、止まっているだけで誰もが振り返る日本車は本当に久しぶりだと思いました。早く日本の路上で見てみたいものです。
あんどう ひろき/フリーアナウンサー。1967年、神奈川県生まれ、元TBSアナウンサー。現在は独立し、TBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s〜愛車のこだわり〜」、TOKYO MX「バラいろダンディ」、MBS「朝日奈央のキラめきスポーツ〜キラスポ〜」、テレビ東京「ミライの歩き方」、Bayfm78「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。趣味・特技はモータースポーツ、クルマ全般、弓道、スキー。2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員