日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)受賞車を題材とした本企画。今号は、前々回の第41回(2020-21年)と前回の第42回(2021-22年)を振り返ります。
第41回は、2位以下に120点近い差をつけて、437点を獲得したレヴォーグが本賞を受賞しました。2位は320点でフィット、3位は300点のヤリスでした。下馬評ではヤリスを本命視していた関係者が多く、フィットも評価が高かったので、この3台のうちどれが獲ってもおかしくない状況でした。結果はレヴォーグの圧勝となりました。 筆者はフィットに10点、レヴォーグに6点、ヤリスに4点を配点しました。
フィットを高く評価したのは、発売後に乗る機会があるたびに新たな“心地よさ”を本当に発見できるクルマであったからです。さらに、時代が求める環境性能と安全性能を高い次元で身につけており、“このクラスでここまでやるか”と感心させられる部分が多かったからです。
一方レヴォーグも、これまた完成度が高く、乗って“気持ちよさ”を直感させるクルマであることに好感を抱きました。しかし、発売時期が秋になってからで、その真価を十分に確認する機会がなかったことや、発売されて間もなく、まだ街をあまり走っていないクルマに10点を投じるのはどうかという思いもあったことから6点にしました。(かつて似たようなケースでのちのち後悔した思い出があったこと、結果を知った一般の方々が違和感を感じると思ったので)。
もう少し発売時期が早く、乗る機会も多くあったら、筆者もこの2台の順位が逆転していたかもしれません。
輸入車はプジョー208でした。この年はディフェンダーの導入が大いに話題になり、3人の選考委員から10点を獲得したほか、アルピナもエントリー。3シリーズをベースとするニューモデルの導入を機に存在感を示し、パフォーマンスカー部門賞を獲得したことも印象的でした。
記憶に新しい第42回は、筆者が10点を投じたノートが本賞を受賞しました。ノートが335点で、以下2位のGR86/BRZが264点、3位のヴェゼルが227点、4位のアウトランダーが206点と、かなり配点が割れたことも印象的でした。輸入車は、全体でも5位のゴルフが168点で受賞したのは順当でしょう。
筆者は、このクラスでかつてないほど本格的に「上質」という概念を取り入れたノートを高く評価しました。
さらには、第2世代となるe-POWERの高い完成度に感心するとともに、日本で販売するラインアップはe-POWERのみとした「英断」にも共感を覚えました。
その他ではヴェゼルとゴルフに5点ずつ投じたほか、GR86/BRZに3点、アウトランダーに2点を配点しつつ、後者2台については部門賞のほうで多めに配点しました。
一方でこの年、輸入車の中でひときわ存在感を発揮したのが、ミッドシップに生まれ変わったコルベットでした。
クルマ自体の出来栄えはもちろん、特殊なクルマにもかかわらずわれわれに対して積極的に試乗する機会が設けられたことも功を奏して、パフォーマンスカー部門賞を受賞しました。
※COTYの投票は持ち点配分法によって行われ、各選考委員が25点の持ち点を対象車10車(10ベスト)のうち5車に配点する(1台は必ず10点にする)ことが定められている。
おかもとこういちろう/1968年 富山県生まれ。1970年代前半の幼少期を横浜で過ごし、その頃からクルマに目覚め、小学1年生で街を走るクルマの車名をすべて言い当てるほどになる。学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのちフリーランスへ。2004年、AJAJ会員入り。2008年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員