小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜17時50分~18時TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●いまやミニバンは「顔が命」の時代
かなり絶妙、ついにこの手で来たか!? 見るなりそう思わされたのが、昨年11月に7年目のマイナーチェンジを受けた5thホンダ・オデッセイだ。
そもそもオデッセイは1994年に当時の国産ミニバンブームを作った先駆者。
その後24年間で4回のフルモデルチェンジが行われ、いまとなってはラージミニバンとして短めの4.8m台の全長や、1.7m弱の高からず低からずの全高は、正直中途ハンパ。
販売ではオラオラ系の大型メッキグリルを持つ、背の高いトヨタ・アルファードに押されまくっているが、今回乗ってあらためて意外なる魅力を発見することができた。
スタイルは前述通り絶妙。グリル、フルLEDライト、バンパーを刷新。高さを70mm上げたフロントマスクと、これまたフルLED化&セパレート化したコンビランプとバンパーを変えたリア以外は変わってない。
ドア回りやサイドの造形は旧型と同じなのだ。
しかし、それでも一体感はそれなりにあるし、やはりグリルだろう。
旧型も決してメッキ部分が小さすぎたわけではない。しかし、新たにデコッパチ度が増し、5重のバーを持つ長方形グリルはなかなかの存在感。
下のバンパーと合わせると8重メッキだ。それでいてアルファード的なモンスターっぽさもなく、ホンダらしいシンプルさも併せ持つ。
いままでホンダは、歴代オデッセイはもちろん、弟のステップワゴン、かつてあった大型のエリシオンも一貫してシンプルグリルで通してきた。
しかし、いまやミニバンは完全に顔の時代。埋没しては選択肢にも残して貰えない。
そこで今回、主張した大型グリルを採用したわけだが、それまでの美意識をギリギリ守りつつというところ。つくづくホンダはガンコなメーカーだ。
●リアのキック式は使えるが、サイドのジェスチャー式は結構ナゾ
インテリアもそれなりにクオリティアップしている。
小沢が乗ったのはハイブリッドのe:HEVアブソルートだが、基本的な造形は変わってない。
だが、ウッド風の加飾パネルを上部に、ソフトパッドが手の触れやすい位置へと配置され上質感アップ。またメーター内カラーディスプレイを3.5インチから7インチに、ディーラーオプションナビを10インチに大型化することでかなりイマドキのインパネになった。
使い心地も悪くなく、手元に来るインパネシフトは便利だし、運転席の大型ひじ掛けはその下に物を入れようとすると面倒だが、ゆったり腕を乗せられる。
なによりもいいのは走りだ。今回は2リッターガソリンのハイブリッドに乗ったが、新型フィットはもちろん、話題の日産ノートe-POWERとほぼ変わらない2モーターハイブリッド方式を採用する。
加速では、ほとんどのシーンを184ps&315Nmの電気モーターで行うのだが、これが上質かつパワフル。
1.8トン台のボディをグイグイ押してくれる上、実燃費が予想以上にいい。
WLTCモードでも20km/L以上、今回長距離335km走らせたらトータルで15.6km/Lを記録した。これは完全にアルファード・ハイブリッドを凌ぐ上質さとエコ度だ。
乗り心地も完全にライバル超えで、確かにオラオラ度、乗った時の見晴らし度では負ける。
だが、上質感、静粛性、スムーズさでは完全に勝っているし、小さめのボディも狭い国内では使いやすい。個人的には新型オデッセイ、マジで欲しいなと思ったくらい。
唯一ナゾなのは新たに加えられた電動快適装備で、キックジェスチャーで開くハンズフリーアクセス・パワーテールゲートはいい。レスポンスも普通。
だが、ハンドジェスチャーで開閉できるはずのジェスチャーコントロール・パワースライドドアが、何回やっても反応せず、動いたのは10回に1回ぐらいだった。
小沢のやり方が悪かった可能性もあるが、ほかの人がやっても反応は鈍かった。
このあたりは改善が可能だと思うが、他の出来が良いだけに残念。
とはいえ、個人的には総合的な扱いやすさと上質感で、かなり満足の高いミニバンでありました。