小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜17時50分~18時TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●同じジャンルのライバル同士
話題の新型コンパクト・ハイブリッド車2台を比べてみることにした。昨年2月発売の4thホンダ・フィットe:HEVと、11月発売の3rd日産ノートe-POWERだ。
どちらも全長4m前後の扱いやすい5ドアハッチバックで、価格はどちらもざっと200万円台スタート。
パワートレインは、両車2モーターのほぼシリーズハイブリッドだ。"ほぼ"と付けたのは、フィットのe:HEVは高速域でのエンジン直結モードを備えるからだが、ほとんどのケースでエンジンを発電用として使い、モーターでタイヤを駆動する電動車。ライバルといっていい。
まずボディサイズ。フィットのほうが微妙に短い。全長×全幅×全高はフィットが3995×1695×1540mm(グレードはネス)でホイールベース2530mm。ノートが4045×1695×1520mm(X)で、ホイールベースが2580mm。簡単にいうとフィットが全長、ホイールベースともに50mm短い。
乗ってみると、ラゲッジ容量はほぼ同等だが、リアシートはフィットが微妙に広い。
センタータンクレイアウトを持つフィットのスペース効率は明らかに高く、シートバックを跳ね上げて使うこともできるし、ラゲッジ床も低い。
ノートは今回からルノーと共通のCMF-Bプラットフォームを使っており、これはドライバーを割とボディ中心に座らせるスポーティなレイアウトになっている。
スペースより運転感覚を取ったクルマだ。
スタイルは好き好きだが、個人的にはよりオーガニックなムードをまとったノートが気に入った。フィットも可愛くて良いが、この世代から癒し系のスタイルになっている。
●電動車らしさはノート
肝心の運転感覚はどうか。
視界の良さは明らかにフィットだ。フロントピラーを二重構造にして1本目を55mmと細くし、90度という圧倒的な左右視野角を獲得。ノートも悪くないが、フィットは異様に頑張っている。かたや後方視界はどっこいどっこい。
最も異なるのは電動加速感。電動フィーリングを強調しているのは明らかにノートe-POWERだ。開発者が「なるべく電気自動車のリーフに近づけたい」というとおりの味付けになっている。
そもそもモータースペックからノートe-POWERのほうが力強い。1stノートe-POWERのモーター&インバーターはリーフの流用だったが、今回から新開発して、116ps&280Nmにアップ。かたやフィットは109ps&253Nmである。
ちなみにエンジンはノートe-POWERが1.2直3で、フィットが1.5L直4。発電量はフィットが上かもしれない。エンジン回転音は静かだ。
だが肝心の電動風味は、やはりノートがわかりやすい。
フィットは電動のスムーズさを持ちつつも、ガソリンエンジン車との違和感を無くしているのに対し、ノートe-POWERは発進レスポンスが異様に速く、その後の加速感もスポーティ。明らかにEV的だ。
同時にノートはアクセルオフ時の減速度が強く、新型になって最後に完全停止こそしなくなったが、大抵のシーンでワンペダル運転が可能。
とくにシフトポジションをDではなく、Bにした時は減速度が強く、そのギクシャク感が新型は気にならなくなった。より上質な電動感覚を得たわけだ。
一方、フィットはシフト方式からして機械式。いろいろな意味でガソリン車から乗り換えて違和感がない。
ちなみにハンドリングもフィットの方が優しい。横方向の加速度の角が丸められている。逆にノートe-POWERの方が面白い、ともいえる。
燃費はモード値的には同等だが、高速を中心に走ると微妙にフィット有利だろう。
ズバリ、結論。変化を嫌うユーザーはフィットe:HEVがベター、新しいもの好きにはノートe-POWERがオススメだ。
ただし、価格的戦略にもかなり差があって、フィットは198万円台から買える「ベーシック」にも先進安全のホンダセンシングが標準で付くのに対し、ノートe-POWERは218万円の上級グレード「X」にオプション装着しないとプロパイロットが装着できない。ここは大きく違うので配慮しておきたい。