欧州委員会では電動化を促進し、エンジンを締め出そうとしている。電気をどこから調達するのか、グリーン電力をどう確保するかはまだ未知数だ。日本では世の中の半分が電気自動車になったら、原発をあと13個作らないと電気が足りなくなるという計算もある。
今年の夏は電気が足りないといわれているが、そんな中でも新型BEVはどんどん市場に出ている。そこでBEVやPHEVを所有したら電費をよくする運転は必須になるだろう。
これまでICE(内燃機関)のクルマに乗っていて燃費をよくする運転をマスターしていれば、基本的なところはBEVでもPHEVでも共通だと考えていい。
走行スピードが上がったり下がったり変化させるとロスが出る。アクセルを戻してスピードダウンするときには、ICEは燃料カット、BEV、PHEVはエネルギー回生するからそんなに損はしないと思うかもしれないが、実は下がったスピードをもう一回上げるためにはエネルギーが必要なので、そこでエネルギー回生以上の浪費してしまうからだ。
一定速走行をするためには車間距離を開けなくてはならない。車間距離が短いと先行車のスピード変化をすぐにそのまま反映させる必要があるから、無駄なスピード変化を強いられる。先行車に影響されない程度まで車間距離を空ける。どれくらいが適正かというと、世界中で2秒間が標準になっている。
スピードは高くならないようにする。走行抵抗を減らすことが燃費と電費を良くするポイントだが、スピードが高いと空気抵抗が二次曲線で大きくなるから交通の流れを乱さない範囲でスピードを抑える。ICEの場合にはトランスミッションがあるのでギヤ比が高いほうが有利。エンジン回転数が低くなって燃費がよくなるからだ。空気抵抗とのバランスでいうとだいたい80〜100km/hくらいだろう
ほとんどのBEVはギアを持たないのでギア比のことは考えなくてもいいが、空気抵抗は最重要課題だ。70km/hくらいで走れればいいが、最近はボディデザインによってCd値(空気抵抗係数)が小さくなっているから、高速道路では80km/hでも結構いい燃費になるはずだ。
ICEでもBEVでも自分の目の前のクルマしか見ていないのは論外だ。数台先のクルマまで確認しながらの先読み運転が大事になる。それがエコノミー、エコロジー、セーフティの3つとも満足できる運転になるはずだ。たとえば前方で渋滞が始まっているのがわかったら、また信号が黄色に変わったのが見えたら、すぐにアクセルペダルから足を話す。これで無駄な駆動力を使わなくて済む。
こうして先読みができれば、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)で走るより燃費も電費もよくなる。
電費をよくするというテーマでも、何が目的かによって運転を始める前からの行動が変わってくる。単に電気代の払いを安く済ませたいのか、レンジ(航続距離)を伸ばしたいのかという点だ。
電気代を安くするなら夜間電力を安く契約するなど、電気のコストダウンをしながら先ほどの電費をよくする走り方を実践してもらいたい。
レンジを伸ばしたいのであれば、充電中にエアコンを使って車内を最適温度にしておく手がある。クルマのバッテリーを使わずに充電中の電気を使うからレンジに影響がないのがメリット。冬は事前に室内を十分に温めておき、走行中はエアコンを使わずステアリングヒーターとシートヒーターを使った方がバッテリーの消耗は少なく快適に走れる。
夏はクーラーをばっちり効かせておいて、走り始めたらエアコンのファンはゆるゆると回しておくほうがバッテリーの消費は少ないからレンジが長くなる。
BEVでもPHEVでも同じだが、あまり極端な電費走行は周囲に迷惑がかかるし、安全上の問題があるから周囲に配慮して実践してもらいたい。