小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜17時50分~18時TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●パッケージングの良さはいまだぶっちぎり!
約4年ぶりのマイナーチェンジを敢行したミディアムSUV、新型VWティグアンに乗ってきた。
世代的にはゴルフ7時代のモデルであり、多少古くさい感じもなくはない。
だが、実際に乗ってみるとデザイン、質感、パッケージングのどれも素晴らしく、とくにインテリアクオリティは最新モデルを凌駕するレベルだ。
インプレッションとともにそのナゾを分析してみよう。
わかりやすい部分からいうと、圧倒的に優れているのはパッケージング。この点ではヘタな最新SUVも超える。
グレードにもよるが、全長×全幅×全高は4515(4520)×1840(1860)×1675mmと、旧型比で15mm伸びただけ。2675mmのホイールベースも全く変わらない。
だがこの状態でも全長が4545mmのマツダCX-5、4600mmのトヨタRAV4、4670mmのメルセデスGLC、4720mmのBMW X3より短い。
ところが乗るとビックリ。身長176cmの小沢がフロントに座った状態でリアに乗るとヒザ前にコブシが3個近くも余って、頭上も広い。
さらに驚くのはラゲッジ容量で、この状態でも615Lと相当に広い。ヘンな話ここまでスペース効率の高いSUVはなかなかない。
ポイントは高さ方向を重視したパッケージングだ。フロント&リアシート共に背もたれを立て、足を真っ直ぐ下ろすシートポジションになる。イマドキのスポーティSUVと考え方が違う。
このパッケージングが影響しているのがスタイリングで、背が高くて箱っぽいザ・SUV! とくにリアクォーターピラーが寝ていてスタイリッシュな弟分のVW TーROCとはかなり違う。
マイチェンでは前後ライトデザインやバンパーデザインが変わり、ボンネット形状も進化して少しワイルドになった。
水平基調のグリルは下に4本目のルーバーが入ってイマドキのVWマスクに。このあたりは微妙にリフレッシュしている。
●質感はゴルフ7世代の進化型で、ハイテク機能はゴルフ8世代!
あらためて素晴らしいのはインテリアだ。
現行ゴルフ7世代のモデルは総じて内装にお金がかかっていて、マッドな質感のソフトパットといい、カーボン調パネルといいかなり上質。
実はインテリアにお金をかけない傾向もある最新世代VW車よりいいかもしれない。
同時にいいのが走りとハイテク性能だ。
骨格はゴルフ7譲りのMQBプラットフォームで剛性は相変わらず高い。
さらに今回、従来の1.4Lガソリンターボに代わって100cc排気量がアップした1.5Lガソリンターボを搭載し、ギアボックスもDSGが6速から7速に多段化。
スペック的には150ps&250Nmのピークパワー&トルクは同じだし、気筒休止システムも変わらず備えている。
だが、燃費はWLTCモードで最良14.3km/Lと向上してる上、乗った時のパワー感も上がっている。ギア比の最適化が幸いしているのだろう。
足回りはとくに変わりなしというが、可変サスペンションのDCCを備える試乗車のRラインは乗り心地良好。
厳密に格上のメルセデス・ベンツGLCやBMW X3と比べてどうかとはいい難いが上質感は高い。400万円台スタートのSUVとしては十分だろう。
ハイテク性能も確実に進化している。
1つは先進安全で、今後ゴルフ8などにも導入される「トラベルアシスト」を標準装備。
これは可変追従クルーズコントロールとレーンアシストが同時に効くだけでなく、時速0〜210kmの範囲での高速同一車線運転支援を可能にする。
スイッチひとつでアクセル、ステアリング操作が楽になるわけで使い心地はかなりいい。
加えてベーシックグレードの「TSIアクティブ」を除き、全グレードに付くマトリクスLEDヘッドライトの「IQライト」や電子メーターの「デジタルコクピットプロ」、全車標準の静電容量式の「マルチファンクションステアリングホイール」はまさに新時代。
従来型ティグアンには無かったハイテクぶりだ。
今回のマイチェンモデルからディーゼル未対応になり、価格も400万円台スタートと「高くなった」と思う方もいるかもしれないが装備内容を見ると相当に充実。
個人的には、いま買えるミディアムSUVとしての総合力はトップクラス。ぜひ一度実車に乗っていただきたい1台なのである。