交通事故死者ゼロを実現するためには何が必要なのか? 「その1」で「人、道、クルマ」のそれぞれが大事だというお話をした。今回は「人」、ドライバーに焦点を当てて考えてみたいと思う。
いちばん問題なのは安全運転をしようという意識のないドライバーだ。運転の経験を積み、ある程度走れるようになると、自分だけが速く行ければいいという利己主義な運転をするドライバーが出てくる。正義感を持って、そんなドライバーを懲らしめてやろうなんて思ってはいけない。あおり運転の応酬になるからだ。
自分勝手な走りをするドライバーは、事故を起こした場合でも他人のせいにする。このようなドライバーは本当に運転がへただと思った方がいい。うまいドライバーはへたなドライバーがいたとしても事故にならないように守ってあげられるドライバーなのだ。
通行の邪魔になる場所に駐車するのも利己主義の現れだ。自分のことだけしか考えていない。こうしたドライバーを減らすのはなかなか難しい。色々な意見はあるだろうが、駐車のときも走っているときも、警察の厳しい取り締まりで対応してもらうしかないだろう。捕まって運が悪かったと思わせるのではなく、誰もが納得できる検挙方法で取り締まってもらいたい。
「安全運転しているから大丈夫」と思っているドライバーでも危ないケースはたくさんある。たとえば、乗員のシートベルト着用確認を行っているだろうか。20〜30km/hの走行スピードでも、コンクリートの壁にぶつかればベルトをしていない乗員は死亡する可能性がある。
いくら安全なクルマを作ってもシートベルトなしでは、その安全性は発揮できないからだ。
子供を乗せるときは、チャイルドシートを使っているだろうか? 乳児(赤ちゃん)期はベビーシートに寝ていたとしても、成長して幼児用チャイルドシートを使うころになると、座るのを嫌がって駄々をこねるケースがある。親は子供が泣いたり騒いだりするのを避けるためにチャイルドシートに座らせずに運転しているシーンを見かける。JAFの調査でも子供が大きくなるにつれてチャイルドシートの装着率が下がる。
小学校に入ると6歳を超えるので、チャイルドシートに座らせなくてはならないという法律も適用されず、罰則がなくなる。そうなると大人用のシートベルトを着用するわけでもなく、子供は危険にさらされることになる。小学校低学年では大人用に作られたシートベルトは体に合わないから、児童用のチャイルドシートに座らせなくてはならない。
安全運転していますというドライバーが、勘違いか最新の知識がないために危ない運転をしている可能性もある。
ハンドルを回すときに「内掛けハンドル」で引っ張るように操作するドライバーは、男女を問わず意外と多い。この内掛けハンドルをしている最中にぶつかってエアバッグが展開したとすると、ひじが逆関節技のようになり複雑骨折してしまう可能性もある。こんな操作をするドライバーは、たいがいドライビングポジションが遠い。
ハンドルのどこを持って運転するか。エアバッグが装着されるようになってからは、この点も注意が必要になった。基本は9時と3時の位置を持つこと。よく見かける12時を持ってぶら下がるようにしているドライバーは、エアバッグで腕が飛ばされてしまう。
10時10分も昔の教習所で教えた方法だが、これもエアバッグの影響を受けてしまう。快適で操作性がよく安全なのは、9時/3時である。カーブを曲がっている最中は腕がクロスして必ずしも安全ではないが、そこではエアバッグのリスクを負っている。
昔は急ブレーキを踏んではいけませんと教わったが、現在は事故を防ぐためには急ブレーキを踏むことを教習所で体験してから卒業しているはずだ。ABSが装備されるようになり、思い切り速く、強くブレーキペダルを踏み込むことが制動距離を短くするには有効な方法なのだ。
急ブレーキの操作は、練習しないとできない。止まっているクルマでときどき練習するといい。