ボクの個人的なクルマ選びをご紹介しよう
今号の特集は「価値あるクルマ」、ボクのページも同様なテーマでお願いしたいとの依頼が編集部から届いた。
ちょっと困った。価値には幅広い多様性があり、人それぞれ違う答えを持っているからだ。COTY(カー・オブ・ザ・イヤー)を獲得したクルマは「優れたクルマ」だと思う。だが、多くの人たちの価値観を示すものではない。
COTYの選考委員は、自分の価値観で投票するのではなく、その時々の時代背景に照らした、いわば社会的価値観の高いクルマに高得点を与えているはずだ。言葉を換えれば「「理性と知性」で選んでいるのである。「個性と情熱」で選んでいるのではない。
ボクもかつてCOTYの選考委員を務めていた。冷静に淡々と「優れたクルマ」を選んだ。「好きなクルマ」「楽しいクルマ」「ほしいクルマ」、つまり「個人的価値観」を優先させたことはない。
でも、今回は「ボクの個人的価値観でのクルマ選び」ということで、話を進めさせていただく。
ボクはもちろん「クルマ好き」だ。しかも「新しいもの」を受け容れる許容度は高い方だ。だから、クルマ選びの自由度は高くなる。こだわりの強い人から見れば「節操がない」ようにも見えるかもしれない。でも、もちろん、ボクにもこだわりはあるし、ボクなりの価値観もある。
ボクが重視するポイントは、デザイン、ブランド、心地よい走り、使用条件適応度、そして現在は運転支援システムも入る。
中でも、最優先はデザインとブランド。内外装ともデザインが気に入り、それが好きなブランドであれば迷わず手が出る。ボクにとって「ブランド」は、「無形のデザイン」ともいえる。
そんな意味で、ポルシェ、アウディ、BMW、アルファロメオ、ジャガー、ルノー、プジョー、MINI、フォルクスワーゲン、フィアットなどが、「ボクの価値観」に当てはまる。
次に重視するのは「サイズ」。昔からボクはコンパクトにこだわってきた。若気の至りで買ってしまったディムラー・ダブルシックス2台とデソートファイアスイープの計3台を除けば、ボクの車歴はコンパクト系で埋まる。ポルシェ911も930と964以降、愛車選びからは外れた。サイズ(とくに全幅)の拡大が理由だ。
最新モデルではアウディ e-tron GTがほしくてたまらなかった。だが全長4990×全幅1965mmのサイズを受け容れる決断は無理だった。ボクには、昔から「大型で押し出しの強いクルマは似合わない」という感覚があった。だからRRやベントレーの所有などチラリとさえ頭を掠めたことはない。ボクは運転が大好きなので、気軽に心地よく「人馬一体感が楽しめる」という意味でも、コンパクト系に惹かれるのかもしれない。
今は、BEVのプジョー e-208 GTに乗っている。モダンで粋なフレンチデザイン、コンパクトなサイズ、心地よいレスポンスと加速、低い重心と優れたバランスによる軽快な身のこなし、すべてに満足している。