小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜17時50分~18時TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●旧世代の品質に新世代のハイテク!
先日紹介したティグアンとほぼ同時期、4月に上陸したミッドサイズカー、VWパサートのマイナーチェンジモデルに乗ってきた。グレードはディーゼルワゴンの最上級モデル、パサート・ヴァリアントTDI Rラインだ。
パサートは、いわば「拡大版ゴルフ」ともいうべき実用FFセダン&ワゴン。
当初はアウディ80と同じくエンジン縦置きレイアウトで、1970年代に日本上陸。現行モデルは2015年に上陸した8世代目で、ゴルフ同様に横置きレイアウトのMQBプラットフォームで作られている。
品質感や走りは一部プレミアムブランドに匹敵し、それでいて価格は大衆車クラスというお買い得さがある。
現在も全長4.7m台のガソリンセダンが429万円、同ワゴンが449万円スタートとお手軽なうえ、基本的な先進安全はほとんど付いている。
今回のマイチェンの要点は、ティグアン同様のデジタル化だ。
いま、VW車全体が電動化でコストダウンが図られているなかで、質感の高い旧世代のボディを使いつつ、イマドキのデジタル技術が投入されている。
あらためてTDI Rラインの実力だが、実用性はやはりものすごい。
今回のTDI Rラインの全長×全幅×全高は4785×1830×1500mmと大きく、リアシートには大人3名がゆったり座れ、なんとヒザ前にはコブシが3つは入りそう。
同時にラゲッジ容量は650Lと超広大で、スペース的にはBMW5シリーズツーリングやメルセデスのEクラスワゴンを凌ぐレベルだ。
インテリアクオリティはあいかわらずハイレベル。インパネ上部は上質なソフトパッドで覆われ、下には横一直線の凝った模様が入ったアルミデコラティブパネルが付く。
セミバケット型のシートはしなやかなナッパレザーで覆われ、とくにRラインはサイドホールド部がカーボン調合皮に変わる。
同時に専用のマルチレザーファンクションステアリングやレザーシフトノブも備わり、このあたりの質感は、今後のVW車にはないレベルかもしれない。
●安心して買える円熟味
なにより肝心のデジタル性能だ。
片側32個のLEDを使うLEDマトリックスヘッドライト「IQライト」やLEDテールランプ、ダイナミックコーナリングライトは全車標準装備。ライト類は最新世代になっていて、いわゆる「車外のスマホ化」は進んでいる。
新型ゴルフ8でも話題のデジタルメーター、「デジタルコックピットプロ」や、9.2インチのタッチスクリーンを使った純正インフォテイメント「ディスカバープロ」は、Rラインを始め上級グレードでは標準装備だし、ベースグレードでもオプションで付けられる。
タッチスクリーンに触れなくてすむジェスチャーコントロールも当然可能だ。
そのほか、スマホを使わずネット接続できる通信モジュールやモバイルオンラインサービスの「We Connect」も全車標準装備。まさに走るスマホ世代なのだ新型パサートは。
運転支援も最新レベルで、ACCアダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストシステム、レーンチェンジアシストシステムは当然、標準装備で、全車速対応の同一車線運転支援システム「トラベル アシスト」も採用されている。
走り出せば、スイッチひとつ入れるだけでペダル操作要らずの運転支援が受けられる。このあたりは完璧にゴルフ8と同レベルのイージーさだ。
一方、走りの質感は従来のパサートと変わらず上品なもの。
ボディ剛性感は高く、乗り心地はしなやか、エンジンは190ps&400Nmの2リッター直4ディーゼルターボ搭載で、7速DSGを介して全域で厚みのあるトルクが楽しめる。発進加速からディーゼルらしく力強く、アクセルを踏めば踏んだだけ前に出る。
ステアリングフィールはFRレイアウトのメルセデスのCクラスやBMW3シリーズほどの繊細さはないが、剛性感にあふれた素晴らしいもの。
スペック燃費はWLTCモードで16.4km/Lと、驚くほどではないが、東京ー群馬間を200km以上走ったところ、メーター計測で19km/L台を記録。さすがはドイツが生んだ本格ディーゼルユニットだ。
唯一気になるのはアイドリングからゴロゴロとディーゼルサウンドが若干響く部分だが、これまた高速に入ると気にならなくなる。
まさに旧世代のVWの走りに、新世代のデジタル性能を融合させたクルマ、それがマイチェン版パサートなのだ。
ゴルフ8と違って48Vマイルドハイブリッドも付かないし、操作系も基本従来どおり。
だが、その分、VW車らしい鉄板の高品質感は味わえ、同時に新世代VWらしいデジタル性能も味わえる。やはりマイチェンティグアン同様、いま最も安心して買える最新VWなのではないだろうか。