森永卓郎のミニカーコラム「マッチボックスのポンテアック」

60年代のアメ車の華やかさを見事に表現

レズニー社の人気シリーズ、マッチボックのポンティアック・ボンネビル・コンバーチブル。紹介したバイオレット系のボディカラーのボンネビルは希少。販売されていた当時はレモンイエロー系のモデルが主流だった

 今回は、基本の基本に立ち返って、マッチボックスのレギュラーシリーズをご紹介したい。

 マッチボックスは、イギリスのレズニー社が1953年に発売したミニカーブランドで、75台が収納できるショーケースを玩具店の店頭に並べ、新車が出ると、旧車を絶版にして、新しいモデルに入れ替えるという手法を採り入れた。

 いまのトミカにつながる販売手法だが、トミカの発売当時にトミーの担当者に聞くと、「マッチボックスのビジネスモデルを真似た」といっていたので、ある意味でトミカの原点を作ったミニカーシリーズだ。

もりながたくろう/1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する“博物館(B宝館)”を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日開館)

 実は、ボクがコレクションを始めた原点もマッチボックスだった。オーストリアで9歳からコレクションを始めたのだが、半年足らずで、75番までのラインアップをすべて揃えてしまった。ただ、そのときに、玩具店に、ショーケースから外された古いモデルが残されていることを知った。

 その時、昔のモデルもほしいという気持ちは子供心の中にもあって、見かけた絶版車は全部買っていった。だが、当時は絶版品を取り扱う専門店がなかったので、なかなか揃わなかった。ボクが、マッチボックスのレギュラーシリーズの歴史をすべて手に入れたのは、大学生になってからだった。

 写真は、ポンティアックのカブリオレだ。説明にはポンティアックとしか書かれていないので、車種を特定することは難しいのだが、おそらく1960年式のポンティアック・ボンネビルだろう。ポンティアックは、ゼネラルモーターズの中級車ブランドで、ボクはこの頃のアメ車がいちばん美しかったと思う。

 1950年代のテールフィンは、痕跡を残すものの大人しくなる一方で、全体にシャープなデザインと大型のボディ、そして豪華な装備で、まさに繁栄するアメリカの象徴だったのだ。

 写真のモデルは、レアカラーのもので、一般的なモデルは、レモンイエローのボディに黄緑色のフロントウィンドウが付いている。ちょっと玩具っぽいミニカーなのだが、こちらのメタリックバイオレットのボディは、当時のアメ車の豪華さを見事に再現している。

 わずか7cmのボディサイズでアメ車の重量感まで再現しているだけでなく、60年もの年月を経て、ほとんど劣化がみられないというのは、当時のイギリスがもの作り王国だったことを物語っている。マッチボックスは、何度見ても、飽きない傑作なのだと思う。

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