森永卓郎のミニカーコラム 「オートピレンのパトカー」

オートピレンのパトロールカー

 スペインのオートピレンは、6年前の本欄で、シトロエンDS23を採り上げている。70年代から80年代に、彗星のように現れて、消えてしまったミニカーメーカーだ。

もりながたくろう/1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する“博物館(B宝館)”を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日開館)

 その後わかった情報は、同社は、1960年代にスペインの南東部アリカンテ県で創業されたということだ。当初はセールボートやキーチェーンなどを販売していたが、70年代にフランスのディンキーから技術供与を受けて43分の1スケールのミニカー製造を始めたという。そのためか、作りが全盛期のフランス・ディンキーに似て、プロポーションがよく、作りが精巧で、塗装もきれいだ。

オートピレンのパトカー

 オートピレンのラインアップは、ボクが知る限り40車種ほどで、その大部分がヨーロッパ車だ。ただ、例外もある。それが、写真のオールズモビル・トロネードだ。オールズモビルは、ゼネラルモーターズの一部門で、トロネードは前輪駆動のスポーティークーペだ。

 写真のミニカーの実車は、1966年から1970年に製造された初代モデルである。リトラクタブルのヘッドライトが特徴で、ミニカーでも裏板の爪を動かすと、ヘッドライトが立ち上がるギミックが付いている。

 ノーマルモデルもリリースされているが、ボクはこのポリスカー仕様のほうが好きだ。トランクにPOLICIAと書かれていて、スペイン警察の仕様となっている。警告灯も赤色灯の左右に緑と黄のライトがついていて、何とも艶やかだ。こんなパトカーの実車が存在したのかは、よくわからない。

 そもそもアメ車のパトカーは、ボクが住んでいたスイスやオーストリアでは、まったく見かけなかった。ただ、そんなことはどうでもよい気もする。ミニカーは、雰囲気を楽しむものだからだ。

 実は、オートピレンのミニカーはいまとても安い。箱付きの綺麗なモデルが、3000円から5000円程度で手に入る。新製品よりも安いくらいだ。シリーズが続いておらず、コレクターにあまり知られていないことが最大の原因だろう。

 オートピレンには、紙箱入りのものもあるが、多くは透明のプラスチックケースに収められている。ただ、もう40年以上経過していて、プラスチックの土台とゴムタイヤが癒着する“持病”が出ていることが多い。

 一度癒着してしまうと、取り外すのは、なかなか大変なので、購入するときには、注意して癒着していないモデルを入手する必要があるだろう。

オートピレンについて
オートピレンは43分の1スケールの欧州車を中心にラインアップを展開。フランス・ディンキーのミニカーを製作し、スペイン国内ではオートピレン・ブランドで販売していた経緯がある。1990年代はじめに会社はなくなった

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