先月に続いてJAIA(日本自動車輸入組合)主催の試乗会で乗ったクルマの印象を、ユーザー目線でお伝えします。
まずは話題のBEV、BYDのATTO3(440万円)。エクステリアは普通、という印象ですが、内装はいい意味で驚きの連続でした。高価な素材は使われていませんがデザインの妙で安く見えません。ドアポケットにはベースの弦をモチーフにしたヒモが付いており実際に音が鳴ります(笑)。ガンダムの操縦桿風の走行セレクターは、ジムのダンベルをモチーフにしているそうです。回転するモニター画面も含め、室内の雰囲気はまるでイタリア車のようです。
走ってみると310Nmと十分なトルクで、かなり力強く感じました。カタログ上の航続距離は485km。家や家電に給電可能なV2H/V2Lに対応しているため、補助金は満額。実質350万円前後で購入できます。納車まで時間を要さないというのもアドバンテージ。ちなみにBYDは元々バッテリーや半導体を生産している会社です。
続いて乗ったのはアルピナXD4(1450万円)。私はアルピナを3台、乗り継いだ経験がありますので、その魅力を理解しているつもりです。滑らかでパワフルなエンジンと「マジック」と称される足のセッティングは絶品。また所有してみたいと思っています。
でもXD4はエンジンを掛けた瞬間の、ブルッとした振動に驚いてしまいました。あれ、こんなだっけ!?
しかし、3リッター直6クワッドターボディーゼルの800Nmという怒濤のトルクと滑らかな足に感銘を受けるに違いない! そう思って西湘バイパスに乗りました。西湘バイパスに乗るためには短い距離の合流路で一気に加速しなければなりません。
XD4はアクセルを踏み込むと、一瞬の溜めがあって、その後に暴力的な加速に入ります。よくいえば、豪快な加速ですが、見方を変えるとリニアに加速できず、少し、ギクシャクするイメージです。
BEVのBMW・i7は、アクセルを踏むのと同時にトルクが発生し一気に加速、安心して合流できました。それと比べると大きな違いです。BEVを味わう前はXD4に違和感を覚えることはなかったと思います。しかし、BEVに慣れたいまではギクシャクすると身体が受けとっていることに驚きました。
最大トルクのスペックはXD4が800Nm。i7は745Nm。XD4が上なのですが、i7のほうが滑らかに圧倒的な力感で加速したと記憶しています。誤解がないように申し上げるとXD4が遅いわけではなく、違う種類のクルマという事を実感したのです。
3台目はフィアット500eのオープン(520万円)。500eはコンパクトBEVの世界的標準車です。42kWhの駆動用バッテリーを積み、航続距離はカタログ上335km。
エクステリアは可愛いく、高級感が漂います。内装もデザインが素晴らしく、内側からボタンを押して開けるドアの感触も上々。220Nmの最大トルクで合流加速はスムーズ。キビキビと走り、こんな愛すべき相棒はないと思いました。しかし価格は500万円超えのプレミアム級。皆さんは、どのように感じますか?
最後はテスラ・モデルYデュアルモーターAWDパフォーマンス(750万9000円)です。これまで内外装の質感に失望することが多かったテスラですが、徐々に質感も上がり、パワー一辺倒だった走りの質も向上してきました。実質航続距離の長さやスーパーチャージャーによる圧倒的な充電性能も評価ポイントです。でもなぜか個人的には購入意欲が沸きません。
どうしても馴染めない速度計の位置(中央ディスプレイの右上端に数字が出る)と、簡素な室内は従来のまま。走行中に回生力の切り替えができない点も残念です。
とはいえ動力性能は、笑ってしまうほど圧倒的。カタログ値の0→100km加速3.7秒、最高速度250km/hに嘘はありません。それでいて750万円(いまなら補助金適用で実質685万円)という圧倒的なコストパフォーマンス。上海工場で生産している関係で、1カ月以内で納車できるなど、かなりのアドバンテージがあると思いました。
BEVの存在によって、ますます個性に磨きが掛かってきた輸入車たち。日本メーカーは、どのように個性を発揮してくるのか。そちらも楽しみです!
【プロフィール】あんどうひろき/フリーアナウンサー。1967年、神奈川県生まれ、元TBSアナウンサー、現在は独立し、TBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s〜愛車のこだわり」。TOKYO MX「バラいろダンディ」、MBS「朝日奈央のキラめきスポーツ〜キラスポ〜」、テレビ東京「ミライの歩き方」、bay fm78「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。趣味・特技はモータースポーツ、クルマ全般、弓道、スキー。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員