本線が渋滞しているときに、スマートに合流するには、右と左のクルマが交互に1台ずつ進む“ファスナー方式”がいい。ところが、これができないドライバーがいる。1台たりとも自分の前にクルマを入れさせたくないのだろう。実は、こうした運転がトラブルや渋滞のタネになっているのである。
都市高速道路で混雑する時間帯は渋滞を覚悟しなくてはならない。数珠つなぎでノロノロ運転している本線に合流するときは、ファスナー合流と呼ばれる交互合流がスムーズにいくし、合流する相手も納得できる方法だ。
しかしウインカーを点けてファスナー合流しようとしているのに、前に詰めて来て入れてくれないクルマをときどき見かける。こんなとき、つばぜり合いが起き、こちらのノーズが入ったかと思ったら、さらにマクリ返されて入れてもらえない、さらに……などという意味のない争いに発展するケースも少なくない。この最後までしつこく闘うシーンを筆者は日本でしか見かけない。
マカオグランプリを現地に取材しに行ったとき、レンタカーを借りて走った。グランプリということもあり、カオス状態の市街地を走ったときにもこうした合流は頻繁にあった。このときにどちら側も譲る気配はないのだが、ノーズが入ったときに勝負がつく。そのあとでマクリ返してくることはなく終わった。少しでも先に行くために戦ってはいるのだが、決着が付いたらそこであっさり終わるから気分は悪くない。
イタリアでも似たようなもので、混雑したローマ市内の道路では先を争って走る。3車線の道で信号待ちのとき、前から3台が揃ったかと思ったら、その隙間に1台ずつ入り込み、フロントローが5台になる。信号が青になると、多くのケースで隙間に入ったクルマやバイクが先頭で元気よく飛び出していく。合流の場合もつばぜり合いはするが、マカオと同じようにノーズが入り込んだらそこで争いは終わり。それ以上に発展することはない。だから、気持ちよく運転できる。
こうしたあっさりしたものなら、ある程度の緊張感を持って気持ちよく運転できるが、マクリ返してくるドライバーがいると誰でも気分が悪くなる。そうして煽り運転に発展してしまうのが日本なのだ。
このような合流でのつまらない争いはしないほうがいい。入れてくれない素ぶりを見せる相手がいたら、争わずに先に行かせるほうがスマートだし、大人の対応だ。
ドイツでは混雑時の合流は交互合流が基本。これを守らず、接触した場合は、100対0で交互にしなかったドライバーに責任が負わされるという判決が出ている。
交通量の少ない交差点で右折待ちをしているとき、少し距離はあるが対向車が来るので待っていると、その対向車は交差点に差し掛かってからウインカーを左に出して曲がって行った。直進するように見せかけて対向車線の右折車を待たせ、自分が先に行くというキタナイ運転だ。
厳密にいえば、これは道交法違反になる。左折する場合は、まずウインカーを点けて道路の左側に寄っていき、さらに曲がる30m手前からもウインカーを出すというのが正しい左折の仕方だ。車線変更のときも同じだが、右左折のときもウインカーを出すのが遅いと、カー・トゥー・カーコミュニケーションが取りにくくなる。
自分だけが先に行ければそれでいいというエゴなドライビングは、キタナイ運転の始まりである。そしてキタナイ運転は法律違反にもつながり、さらに事故になる可能性を高めてしまう。
こうしたキタナイ運転に直面しても、対抗しようとしてはいけない。そんな相手はレベルの低い人間だと判断して、かかわらないようにするのが賢明だ。下手にかかわると同じレベルの人間になってしまうから。