走っているときだけが運転ではない。クルマを利用しているときは、つねに運転中という意識を持とう。たとえば、駐車。SA/PAで空きスペースが見つからないからといって、大型車用のスペースを利用するのはキタナイ運転だ。物流を支えるトラックドライバーに多大な迷惑をかける実態を理解しておこう
きれいな運転キタナイ運転は、何も走っているときだけの話ではない。高速道路のPA/SA(パーキングエリア、サービスエリア)での駐車方法でも、きれいな運転、キタナイ運転がある。
最近のPA/SAは乗用車用の駐車スペースと大型車用の駐車スペースに分かれている。乗用車用の場所に大型車が止めてはいけないし、反対に大型車用に乗用車が止めてはいけない。
大型車用が空いているからと乗用車が止めてしまうと、たった1台の乗用車が止まってもそのスペースは大型車が利用できなくなってしまう。
トラックドライバーは厚生労働省が策定した「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」により、運転時間・労働時間に制限が設けられている。一日13時間が基本だが上限は16時間。また、15時間を超えての拘束は週に2回まで。1カ月間のお労働時間は原則293時間までで、年間3516時間とされている。
そんな中で連続運転時間は4時間までで、4時間走ったら必ず30分以上の休憩をしなくてはならない。4時間の中で1回10分以上の休憩を挟んで合計30分以上の休憩を取ることも奨励されている。
つまりトラックドライバーはルールにより強制的に休まなくてはならない決まりになっている。そのためにも大型車用の駐車スペースは有効に活用される必要がある。そのことを理解して、乗用車は乗用車用の駐車スペースに止めないと、キタナイ運転になってしまうと思ったほうがいい。
ちなみに推奨の連続運転時間は2時間までで、2時間経ったら10分以上の休憩を取ることをお勧めする。これはトラックでも乗用車でも共通で、一度クルマから降りて体を動かすことで血流をよくし、眠気を催さないようにすることで結果的に長い距離を安全に走れるようになる。
ちなみに日本では大型トラックがPA/SAで止まっているところを見ると、ほとんどのトラックがエンジンを掛けっぱなしなのが気になる。ドイツのアウトバーンでもPA/SAに大型トラックやトレーラーが止まっているところを見かけるが、エンジンを掛けっぱなしのトラックは1台もいない。
これはドイツの州法の騒音防止条例によって厳しく取り締まられているからだ。乗用車でもトラックでも同じで、友人の家に迎えに行ったときに出てくるまで待つ時間もドイツではエンジンを止める。踏み切りで列車の通過を待つ間でも、エンジンを止めない日本人ドライバーをドイツ人が注意する場面を目撃した経験がある。
カーボンニュートラルだ、SDGsだと世の中では騒がれているが、PA/SAでエンジンを止めないトラックの現実を見ていると日本は遅れていると思う。これは走っていないときのキタナイ運転になる。
筆者が主宰するトラックドライバー向けのエコドライブ講習で、駐車するときにはエンジンを止めることを義務付けると、ドライバーは反発する。夏は暑い、冬は寒いという理由から「休憩できない」という。しかし気候のいい春や秋ならちょっと窓を開けておけば快適に休憩できるはずなのに、それをしようとしない。エンジンを掛けたまま駐車することを基準に考えているからだ。どうやら、昭和の時代から考え方が抜け出していないのだ(トラックドライバーに限らず)。
エンジンを止めることで燃料代を節約できるのにそれをしない。日本もドイツのように法律で縛るほうが簡単かもしれない。