ボクが2019年9月から2023年3月まで部会長を仰せつかって、お手伝いしていた、国土交通省交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会が、この6月末に最終とりまとめを発表(QRコード1参照)しました。
地域の鉄道、バス、タクシー等の全体を地域の未来とともに再構築していく、その中で、交通機関の間、交通サービスと産業の間、行政と民間の間をつなげ、そのためにも、DXを活用し、GXの流れにも当然乗っていく、そういうトーンでやってきたのですが、多くのマスコミの関心は、利用者数の少ないいわゆるローカル鉄道路線の行く末に集中している傾向があります。
鉄道を残すか廃止するか、その一点だけに絞るのではなく、地域の未来を考えて、そのとき交通体系をどうしていけばよいのか、関係者全員で汗をかきながら考えていく、これは言い換えると、地域の中でみんなが利用する鉄道にするためには、誰が何をしていかなければいけないのか、という課題設定につながります。「鉄道は使い勝手が悪いから使わない」といわれがちですが、では、使い勝手をよくするためには、言い換えれば、「いま存在している鉄道が地域の生活の中に溶け込むにはどうすればよいか」と考えていくと、ボクの中では、以前にも取り上げましたが、“まず駅をどうするかを考える”になっていきます。なので、もう一度、駅を取り上げることにしました。
今回は、九州での取り組みの例を少しだけ紹介します。JR九州でのさまざまな取り組みは、ホームページで紹介されています。ホームページでは、観光や商業を中心とした大規模なものが紹介されていますが、ここでは、少し違う、なかなか気づきにくいけど、実は画期的な例を2つ紹介します。共通テーマは、鉄道会社とバス会社の連携を駅で、です(QRコード2参照)。
ひとつめは、日豊本線の下曽根駅です。北九州市の都心の小倉地区の後背市街地の玄関口のひとつです。従前は、小倉駅まで、鉄道とバスが競合している状況でしたが、都心地区まで直行するバスを大幅減便するとともに、駅前のロータリーもほぼなかった下曽根駅の北口側を乗換拠点として再整備しました。写真にあるようなバスのリアルタイム発車時刻を一覧できる液晶パネルを改札口正面に取り付けました(写真上)。やや大きな駅では、改札前にバス発車案内を掲出する例もないわけではないですが、鉄道と並行するバス路線の減便、乗り継ぎ施設の整備と連動して、改札口正面に設置する例は珍しいです。
もうひとつの写真は、同じ北九州市内の鹿児島本線戸畑駅です。一見すると何の変哲もない写真です。特急列車の指定券等を取り扱う鉄道事業者の有人窓口と、路線バスの定期券等を扱うバス事業者の有人窓口が並んでいます(写真下)。鉄道事業者が所有、管理している駅構内の中に、競争関係ともいえるバス事業者の窓口が、しかも並んで設置されていることは、きわめて珍しいです。
冒頭に述べた国の審議会部会のとりまとめで述べている共創というのは、この2つの事例のような、一見、地味に見える、でも具体的に結果の見えるプロジェクトをひとつずつかたちにしていくところから始まるように思えます。
駅で取り組むことは、まだまだたくさんあると思います。その中で、これまで一緒に活動していなかったものを具体的に“共創”していく事例が増えることを望むとともに、できるところからお手伝いしていこうと思っています。