雨天時、薄暮時は周囲の状況が見えにくくなる。ヘッドライトをオンにして、視界を確保するのは、安全運転の基本。そしてヘッドライトを点灯すると、周囲の人やクルマに「自分自身の存在」をアピールできる。安全ドライブのために役立つヘッドランプの使い方を、令和時代流にアップデートしていこう。
今月のきれいな運転、キタナイ運転のテーマは「ヘッドライトのスマートな使い方」である。ヘッドライトの点灯の仕方、消灯の仕方、スイッチの使い方で、きれいでスマートな運転を目指してほしい。
技術の進歩によって新しいクルマほど新技術が入っている。技術が新しくなれば、それに合ったドライビングが必要になるわけで、それはスイッチの扱い方にもあてはまる。いまだに「昭和の匂い」がプンプンする操作を見かけると、もったいないと思ってしまう。
たとえば、信号待ちでのヘッドライト消灯だ。これはバッテリーが弱く、発電機の能力も低かった時代に、信号待ちではバッテリーを労ってヘッドライトを消してスモールライトにしていた名残だ。そもそも夕方になってもなかなかヘッドライトを点けず、相当暗くなってからやっと点けたヘッドライトを信号待ちでは消していた時代の話である。
信号待ちでのヘッドライトの消灯は、欧米では見かけない。日本独自の風習かもしれない。日本人観光客がアメリカの西海岸でレンタカーを借り、信号待ちでヘッドライトを消していたらパトカーに捕まった。パトカーのお巡りさんに「なぜヘッドライトを消したのか」と聞かれた日本人は「対向するクルマが眩しくないように」と答えた。しかしお巡りさんは「あなたがヘッドライトを消したことにより、他からあなたのクルマが見にくくなり安全ではない」という理由から罰金を払わされたという。
現在のバッテリーは容量も増え、発電機もエンジンがアイドリング状態でも十分な発電能力を持っている。だから正常なクルマならヘッドライトを消す必要はない。さらにLEDヘッドライトが増え、電力消費量も少なくなっている。
ヘッドライトは前方を照らして安全確認するだけでなく、周囲のクルマに自分の存在を示すことによって安全性を高めるという役割もあることを忘れてはいけない。トンネルでは中がさほど暗くなくても出口、入り口では明暗差によってヘッドライトが点いていないクルマは確認しにくい。
また雨が降っていたら周囲が明るくても水飛沫が付いたドアミラーでも確認しやすいようにヘッドライトを点灯したほうが安全だ。ワイパーが作動したら、クルマが自動的に雨だと判断してヘッドライトを点灯させる車種も増えている。
ライトスイッチをどこに合わせるかもポイントになる。暗くなったら、雨が降ったらスイッチをオンにするのではなく、最初からAUTOに合わせておくのが正しい。そうすれば暗くなれば自動的にヘッドライトオンにしてくれるから忘れない。
最近はDRL(デイタイム・ランニング・ライト)が装備されたモデルも増えている。これは昼間でもスモールライトが明るく光って自車の存在を周囲に示すことができるライトだ。そしてDRLが装備された車種はスイッチをオフにしても走るときにはヘッドライトを消せないようになっている。
もうひとつ知っていてほしいのは、オートハイビームだ。このスイッチを押してAUTO+ライトマークの表示がインパネに点いているときは、ある程度のスピードが出ていて、先行車、対向車がいない場合には自動的にハイビームになるという機能だ。先行車、対向車がクルマの視野に入った途端ロービームにしてくれるというすぐれものである。
この機能が装備されているのに「使っていない」ユーザ−は多い。一度チェックしてみてはいかがだろうか。
こもだきよし/モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会会長。BMWドライビングエクスペリエンス・チーフインストラクター。BOSCH認定CDRアナリスト。1950年、神奈川県出身