ミニカー業界の老舗、コーギーは、長らく標準スケールのモデルをリリースしていたのだが、レズニー社が小スケールのマッチボックスシリーズで世界的な大ヒットを飛ばすのをみて、1960年代に小スケールのシリーズを発表した。それがハスキーシリーズだ。コーギーという犬つながりで、ハスキーという犬ブランドを新たに作ったのだ。
ただ、ハスキーは、なかなかマッチボックスに勝てなかった。ブランド力がないからだと考えたコーギー社は、ハスキーをコーギージュニアと名称変更したが、ハスキーが売れないのは、ブランド力不足の問題ではなかった。
ハスキーやコーギージュニアは、標準スケールのコーギーモデルをそのまま縮小してリリースするモデルが大部分だったのだが、全長7㎝程度の小スケールモデルには、標準スケールとは異なるデフォルメが必要になる。ハスキーやコーギージュニアは、そこまでの対応ができていなかったのだ。
何事にも例外がある。それがポパイ・パドルワゴンだ。もともとのコーギー製モデルは、コミックス・シリーズといって、全長20㎝ほどの、標準スケールを大きく上回る大型モデルだった。だから、それを縮尺したコーギージュニアのモデルも全長10㎝近くあり、小スケールとしては異例に大きい。標準スケールに近いといってよい。だから、コーギー得意の標準スケールの製作手法がそのまま適用できたのだ。
ボディの塗り分けや、ワゴンに乗っているポパイ、オリーブ、スウィーピーという登場人物の表情に至るまで細かく描かれている手の込みようは、他のコーギージュニアにはみられないものだ。もちろん、このモデルは通常のコーギージュニアよりも価格の高いエキストラというシリーズに属しているのだが、他のエキストラモデルと比較しても、コーギージュニアの最高峰ともいえる作品になっているのだ。
実はこのモデルが日本に正規輸入されたのかどうか、よくわからない。ただ、ボク自身に百貨店の玩具売り場でこのモデルを見た記憶がないのと、ネットオークションに出品されるケースが非常に少ないことを考えると、一部の販売店の並行輸入だけだったような気がする。
コーギージュニアの最高傑作が、日本のコレクターに十分行き届かなかったことは、とても残念だ。