2024年がスタートしました。自動車を動かす次世代パワーユニットに関しては、これ、という正解が定まらず、まだしばらくは混沌とした状況が続きそうです。そんな中、私自身としては、ひと筋の光が見えてきました。
昨年、BEV(純電気自動車)を購入し、半年ほどの運用経験からいろいろとわかってきました。それをお伝えしようと思います。
実は3年ほど前から、ガレージにソーラー発電器とクルマ用充電設備(200Vのコンセント)を設置していました。設置時点では具体的なBEV購入は想定しておらず、1、2年後にPHEV(プラグインハイブリッド)車を購入するかもしれない、という程度の思いでした。しかし、近年、各メーカーのBEVを試乗する機会が増え、そのドライバビリティと静粛性、何より走行中に排出ガスを出さない特性に感銘を受け、興味が加速していきました。
走行時の排出ガスZEROといっても、走行するための電気を化石燃料で生み出していたら、地球環境に対する負荷は通常のエンジン車とさほど変わりません。ですが、私のガレージには発電設備があります。ひとつの実験例として「私が個人的にBEVを使ってみるのも意味がある」という考えが生まれ、思い切ってBEVを購入しました。
購入したのは2023年の6月下旬。ガレージは自宅とは別棟です。ソーラーで発電した電気は電力会社に売っている状況が続いていました。その額は平均で月額1万5000円前後。ちなみに、この数字を元に試算すると5年ほどでソーラー発電設備の費用がまかなえるという計算でした。BEVを導入すると、売電価格が減る、場合によっては売電生活から買電生活に変わると覚悟していました。ですが、それは杞憂。実質的にBEV運用前と変わりません。私の場合、頻繁に自宅から仕事場への往復約100㎞をBEVで走っていますが、充電は週に3回ほど。それも毎回、空の状態から満充電にするわけではないので、1回当たり200V/3kwのコンセントから5〜6時間の充電で済みます。結果、BEVに乗り始める前と後で、売電価格の差は誤差程度。燃料価格が高止まりしている昨今、毎日のようにクルマに乗っているのにもかかわらず、ランニングコストが大幅に減るという状況になったのです。私は、他にガソリンとディーゼルのクルマも所有していますが、BEVの導入で、そちらに乗る機会が相対的に減ったため経済的なメリットが生じました。
BEV用の電気を自身で設置したソーラーバッテリーでまかなうケースは珍しいかもしれません。マンションなどにお住まいの方や、戸建てでも住宅の構造や、日照条件などで、ソーラー発電器を設置できない、という方も多いのは承知しています。とはいえ、もし条件が揃うのでしたら、ソーラー発電とBEVの組み合わせを、検討していただきたいと思います。
BEVはおもに「環境負荷」の観点で語られるケースが多いですが、クルマとしての魅力度も高いと感じています。走りの気持ちよさや静粛性など、美点はたくさんあります。BEVと日常的に接してみて、改めて「いいな」と感じる今日このごろです。
現在、近距離はBEV、長距離はディーゼルのSUV、そして純粋にドライビングを楽しむガソリン車(MT)という、贅沢にも3台体制のクルマ生活を満喫させてもらっています。BEVを導入した結果、それぞれの長所や、最適な使い分けが以前よりも見えてきた気がしています。今年は、自分自身が身をもって感じたことを、積極的に伝えていきたいと考えています。
私は、これまで「ジャーナリスト」ではなく、「常軌を逸した、一人のクルマ好き」として日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を務め、本欄のようなコラムを書かせていただいてきました。ですが、最近、私のような、これまで、自動車業界にいなかった人間が「ジャーナリスト」のひとりでいることも必要なのではないかと思うようになってきています。日本のクルマ社会を盛り上げるには、さまざまな立場からの声が必要だと考えるに至ったのです。そうした思いを元に、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)入会を目標に広く自動車業界に貢献するジャーナリストを目指すことにしました。2024年、これまで以上に覚悟をもってさまざまな仕事に向き合う所存です。なにとぞ、皆さまの御指導、よろしくお願い申し上げます。
【プロフィール】
あんどうひろき/フリーアナウンサー。1967年、神奈川県生まれ、元TBSアナウンサー、現在は独立し、TBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s ~愛車のこだわり~」、TOKYO MX「バラいろダンディ」、MBS「朝日奈央のキラめきスポーツ〜キラスポ〜」、テレビ東京「ミライの歩き方」、bayfm78「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。自身のYouTubeチャンネル「no car, no life」もスタート。趣味・特技はモータースポーツ、クルマ全般、弓道、スキー。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員