▲ポルシェ・マカンのビッグマイナーチェンジモデルは2018年10月から先行予約を開始 ベースモデルは699万円という戦略的価格で話題を集めている
●スマホ化と走り味の向上...そして?
ベイビー・カイエンこと、ジャストサイズのプレミアムSUV、ポルシェ・マカンが2014年にデビューしてから、はや5年! 遂に本格的ビッグマイナーチェンジを受けました。
ピークパワー&トルクが14ps&20Nm上がって354ps&480Nmになった3LV6ターボ搭載の「マカンS」に注目が集まりますが、ソイツは違います。
▲後席の広さを確認しながらポルシェのマーケティング戦略について一考する
小沢コージが指摘したいのは全体のスマホ化&快適化です。
外観で、1番目立つのはリアデザインでしょう。これまで独立していたコンビネーションランプに横長ガーニッシュが加わり、左右繋がりデザインになりました。
▲左右のリアコンビランプをつなげたデザインは新世代ポルシェの共通モチーフ マカンもマイナーチェンジで採用
これで最新992型911はもちろん、ボクスター、ケイマン、パナメーラ、カイエンと共通のデザインになったわけです。ようやくポルシェの最新デザイン言語で描き換えられました。フロントの格子型マスクも微妙にモダンになりました。
一方、インテリアはセンターモニター7インチから10.9インチに大型化したのがわかりやすい注目点。操作プログラムも改良され、新たにモニター上から車両や足回りの一部セッティングができるようになりました。
▲インテリアではモニターサイズの大型化が注目ポイント 10.9インチの大型モニターはタッチパネル操作が可能 音声でコントロールできるポルシェコミュニケーションマネジメント(PCM)を標準装備
微妙に「走るスマホ化」がなされたわけです。
さらに走り味のブラッシュアップです。マカンは2014年のデビューから、兄弟車アウディQ5と世代こそ違えども共通のプラットフォームを使用。しかし乗ってみると意外なるリアルポルシェハンドリング!
とくにステアリングフィールは素晴らしかったのですが、その分足回りが固く、ボディサイズのわりに狭めなリアシートの乗り心地も硬質でした。
▲フロントシートはサイドサポートを強めたスポーティな形状 座るとポルシェらしさが実感できる
そこが今回かなり改善されたのと、フロントサスペンションの一部アルミ化で、若干ステアリングフィールが軽くなりました。
しかし、それでも直進性、滑らかな味わいは相変わらず素晴らしい。快適になっても、やはりポルシェはポルシェなのです。
▲リアシートの乗り心地改善も実施 従来の固くて狭いイメージがかなり払拭された
●サラリーマンのポルシェがますます買いやすくなった!
とはいえ本題はここからです。
実はマカンの日本マーケットにおける最大の貢献は、価格の引き下げと扱いやすさの導入でした。
かつては、いくらポルシェがほしくても、事実上2人乗りの911、ボクスター、カイエンか、実質1000万円超えのカイエンやパナメーラしかなかった。やはり普通の人には手が届かないブランドだったのです。
しかし、マカンは当初からスタートプライス600万円台で(オプション入れると800万円台でしたが)で大人5人乗り。購入層が劇的に変わったのです。
小沢も都内ディーラーで確認しましたが、「比較的リッチなサラリーマンのお客様が増えた」(セールスマン)。そして彼らが買うのは、やはり最も手頃な2Lターボ搭載のベーシックモデルで、実は今回ノーマルマカンがさらに買いやすく乗りやすくなっているのです。
▲リアシートの足元は十分な広さを確保
乗り心地は前述の通りですが、エンジンは252ps&370Nmのスペックは変わらずに微妙にトルク特性が変わっているのと、装備が大きく変わりました。
かつてはセットで100万円以上していたアクティブクルーズコントロール、レーンチェンジアシスト、パークアシストの半自動運転セットがほぼ標準装備化され、それでいてスタート価格は据え置きの699万円!
▲アダプティブクルーズコントロールやレーンチェンジアシスト、パークアシストを標準装備化して価格は据え置きという点は注目に値する
実質100万円以上の値下げで、ヘタすると700万円台で買える!! 今回はここがポイントなのです。
さらにいうとこの現象は、日本のポルシェオーナーの特性変化も表しています。
なぜなら当初マカンではオプション装備だった半自動運転セットですが、市場に出してみると装着率が非常に高く、よって今回実質値下げと標準装備化がなされたようなのです。
いままでのポルシェだったら、あくまでもドライバーズカーなので、クルーズコントロールやレーンチェンジアシストなどは決して求められなかった。
しかし、マカンはオーナーのサラリーマン化と同時にイージードライブに貢献するドライブアシスト機能が求めるようになった。そこが最大のキモなのです。
走り味の快適化と同時に自動化やスマホ化がなされ、さらに実質的に求めやすい価格になった。
硬派スポーツカーブランドの象徴だったポルシェも、時代とともにどんどん変わっていくということなのです。
▲ラゲッジの広さも十分に確保されている リアシートは分割可倒式で長尺物も積載可能