【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】「ニュースにあふれた元気モデル」、1981年に誕生した初代ホンダ・シティ(E-AA型)はトールデザインで話題を独占

初代シティは、シビックの弟分として1981年10月にデビュー。全長3380mmのコンパクトサイズだが、全高をシビック比で120mm高い1470mmとすることで広い室内空間を実現。クラスレスなコンパクトカーとして高い人気を誇った。当初のラインアップは乗用車登録のR/E、商用車登録のプロT/プロFの4グレード。それぞれ最適チューンの1.2リッターエンジンを積んだFF仕様で、その走りとユーティリティは抜群。トランクに搭載できる50ccバイクの「モトコンポ」も話題を集めた

初代シティは、シビックの弟分として1981年10月にデビュー。全長3380mmのコンパクトサイズだが、全高をシビック比で120mm高い1470mmとすることで広い室内空間を実現。クラスレスなコンパクトカーとして高い人気を誇った。当初のラインアップは乗用車登録のR/E、商用車登録のプロT/プロFの4グレード。それぞれ最適チューンの1.2リッターエンジンを積んだFF仕様で、その走りとユーティリティは抜群。トランクに搭載できる50ccバイクの「モトコンポ」も話題を集めた

トランクに積めるバイク、モトコンポも話題に

 ウェストコースト・サウンドがスパークし、レーザー光線が飛び交うシティの発表会は、ゴキゲンだった。シティには若さがある。そう、シティは、若いキミたちのために、ホンダの若いスタッフが開発したクルマだ。「年寄りは口をださない」が開発のモットーだった。スタッフの平均年齢は27歳である。

 シティのサイズは、全長が3380mm、全幅は1570mm、軽自動車とさほど変わらない。「エッ、キャビンは狭くない?」という心配は無用。トールデザインのシティは1470mmと高さでカバーする。室内高が高くなるから、シートを高くでき、足元がたっぷりになる。175cmクラスが4人乗っても大丈夫だし、170cmが4人なら楽なものだ。

透視図

 コンパクトで高効率な1.2リッターの4気筒エンジンを、フロントに横置きし、前輪を駆動する。5ナンバー仕様は、スポーツタイプの「R」と、エコノミータイプの「E」を用意する。Rは67ps、Eは63psのエンジンを積む。

 Rはズバリ速い。ゼロヨン公表直は18秒フラット。テクニックが優れていたら、17秒台で400mのゴールを切るはずだ。Rの実力は走り出せばすぐにわかる。山岳路を登らせてもアベレージは高い。コーナリング性能もいい。ハードなワインディンロードほど、生き生きしている。低めのギアリングが、3速に強力なパンチを与えたのは、こうした条件下では有利だ。Rはどこを走っても文句なく活発。キミたちのスポーツ心を満足させてくれることは間違いない。

 Eもよく走る。Eのエンジンは、Rより500回転ほど低回転よりにトルクカーブを描く特性だ。低回転域のトルクではEが勝って、トップエンドのパワーの伸びはRが優れている、と考えればいい。つまり、ギンギンに走るとき、Rは確かに各ギアのパンチがある。Eは低速側に膨らんだトルクで、市街地でも扱い勝手がいい。RとEの走りは、どちらもOKだから、あとは好みだ。足の性能も含めて、スポーツ派にはやはりRを、クルージング派ならEが順当なチョイスだろう。

パッケージ

 ホンダ車は静粛性の高さで定評がある。シビック、アコード、プレリュードと、それぞれのカテゴリーでトップをいく。しかし、シティだけは並のレベルだ。600kg台の軽量車だから、それでもリーズナブルなところ。だが、ホンダ車らしく、もうひと息、静粛性をアップしてほしい。といっても2500rpmあたりまでは、静粛性にほぼ文句はない。高速道路以外では、とくに不満を感じないだろう。2500rpmというと、5速ギアでRが80km/h、Eなら90km/hプラスである。

 サスペンションは4輪独立式だ。Rはバネ/ダンパーが固められ、リアにはスタビライザーが付く。タイヤは165/70である。ノーマルサスのEは、タイヤが145サイズだ。

 Rはステアリングレシオをクイックに変えて、動きもキビキビしている。ステアリングを切れば、敏感に反応してすぐに向きを変えてくれる。パワフルな動力性能、キビキビしたハンドリング、コーナリングでの踏ん張りのよさ。Rは、まさに若いスポーツ派にぴったりの走りっぷりである。もっとも、足を固めただけに、乗り心地も硬くなっている。良路なら問題はないが、荒れた舗装路や強めの段差、突起などに出合うと、いささか荒い感触を伝えてくる。
 Eは乗り心地がいい。ゴツゴツもバタバタもない。スムーズだ。

モトコンポ

 燃費はどうか。燃費計測用にテストしたAT仕様のEは14.4km/リッターをマーク。これはハイウェイ250km、山岳路50kmを走行した結果だから、かなり優秀といえる。AT車のデータから判断すると、MT車なら16〜17km/リッターも可能だろう。燃費は、まさに「軽自動車並み」だ。

 シティは小さいが、たっぷりしたスペースで、小気味よく走る。燃費もいい。しかも安い。若い人たちにピッタリの条件を揃えたクルマだ。ルックスも、ボクの目には素敵にカッコよく映る。大いに勧めたい。
※CD誌/1982年1月号掲載

諸元

表紙

【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員

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