※本記事は雑誌『CAR and DRIVER』(2024年8月号)の巻頭コラム「from Editors - カー・アンド・ドライバー編集部の視点」より抜粋したものです
最近、サーキットに足を運ぶことが多くなった。その理由は、今年を「ドライビングスキル向上」キャンペーンの1年とし、あらゆる方法で場数と経験を増やす、と自分に課しているから。
年初に手に入れたマツダRX-8を駆って、筑波サーキットのスポーツ走行に出かけたり、とある若手主体のレーシングチームが持つシミュレーターを使ったトレーニングを始めてみたりと、積極的に 「草の根モータースポーツ」を楽しみながら、その目的に取り組んでいる。いまの目標は、毎年恒例イベントであるメディア対抗ロードスター4時間耐久レースの予選で9位以内のグリッドを獲得し、決勝は6位以内で入賞することにしている。
といっても、これは本当に難しい。過去のリザルトを見ていただくとわかるのだが、その顔ぶれを見れば一目瞭然。現実的な目標ではないのかもしれない。
ただ、具体的な目標なくして上達なし、というのは、他のスポーツも同じことではないだろうか。 実際、少年時代の部活動を思い出す感覚もあり、しかもこれがなかなか心地よく、気分転換やストレス発散にもなっている。そして、練習すればするほど、徐々にではあるが、ステップアップしている手応えもあるので、モータースポーツは間違いなく「スポーツ」であると実感している。
2024年8月号は本誌初のモータースポーツを題材とした特集を巻頭企画に据えたが、これには強いこだわりがあった。私たちの編集方針は、「クルマのあるよりよい人生に資する情報や機会を提供する」である。この方針に沿って、いつかこの「モータースポーツ」は取り上げたいと日々考えていた。もちろん、私自身が単純に好きだから、というのも正直あるのだが、決してその「好き」をこの特集で伝えたいわけではない。
新たに出会った方と会話してその人がクルマ好きだとわかっても、モータースポーツという言葉を聞いた時点で、詳しくない、よく知らないなどと、まるで自分には縁がなく関係ないともいわんばかりに、反応されがちなのが「もったいない」と思っていた。とはいえ、モータースポーツそのものに興味がなくてもまったく構わない。ただ、まずは触れてほしい、とは思っている。それがきっと多くのクルマ好きな方々の「クルマのある人生」をより充実させる題材であると確信しているからだ。
たとえば、ドライブが好きなクルマ好きの方には、その目的地にサーキットを加えてみるといい。多くの場合、普通だったらあまり足を向けない場所なので、それはそれで新鮮なドライブコースになるし、大型ショッピングモールへのアクセスがいいサーキットもある。いずれも、レースを開催しているタイミングは、ご当時グルメをはじめとして多くの出店が出ているし、人も多く集まって賑やかな場所となるので、そのタイミングを狙って、ふらっと立ち寄ってみてほしい。きっと、充実した一日になるに違いない。
コロナ禍以降、モータースポーツは再び盛り上がりを見せている。人と人とが出会い、何かを共有する時間を過ごすことは幸せなひとときだが、そんな場として活用されていることもあるのだろう。これまであまり関心を抱いていなかった方が、いきなりどっぷりとレースの世界に入る必要はない。ただ少しだけ興味を持って、触れてみてもらえるとうれしい。そんな思いを持って、今回の特集に取り組んだ。
文/山本善隆(CAR and DRIVER / FM STATION 統括編集長)
<プロフィール>やまもとよしたか/東京都生まれ。株式会社カー・アンド・ドライバー 代表取締役CEO。ITコンサルティング会社、自動車Webメディア、広告制作会社を経て、マーケティング会社でさまざまな大手企業のマーケティング戦略の立案・推進、新規事業開発などのコンサルティング業務に従事。2020年に独立、2021年より現職。クルマを運転している時間が一日の中で最も好き。1995年以降は大のF1ファン。2022年より日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員
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