読者の皆さん初めまして、自動車ジャーナリストの西川昇吾です。まずは簡単に自己紹介させて頂きます。当方は1997年生まれの27歳、いわゆるZ世代といわれる世代となります(Z世代の中でも上のほうですが……)。元々父が自動車関係の職であったため、幼少期からクルマに興味を持ち、そのまま今日まで過ごしてきました。自身の将来の仕事も当然自動車関係で考えていた中高生のころに、「自動車メディアに携わりたい」と明確に意思が定まったのを覚えています。
「いろんなクルマに触れたい」それが一番でした。 そう思った最大の理由は、自動車以上に個性に溢れる工業製品はないと気づいたからでした。単に人や物を運ぶだけならば、約100年もあった自動車の歴史の中で効率化した形に収まっていったはずです。しかし、世界にはさまざまな自動車の使い方、さまざまな自動車メーカー、そして自動車に対するいろんな考えがあります。だからそれぞれの自動車には個性があるのです。
そう気づいたとき、もっと多くの個性に触れたい、知りたいと思いました。そして調べ物をして、それぞれの個性に触れていくと、伝統的なスポーツカーやセダンはもちろん、ミニバンや軽自動車といった効率的なクルマの代名詞とされるモデルにも個性と起源があることを強く感じました。そんな溢れる個性を伝えていきたい……知れば知るほどそのように思ったのがこの仕事を志すキッカケとなりました。
「若者のクルマ離れ」といわれてだいぶ経ちますが、われわれZ世代は世間が思うほどクルマ離れしていないかなと感じています。確かに自分のようにいろんなクルマに触れたいとか、いろいろと調べたりするのはマニアの部類でしょう。ですが、学生時代にクルマ好きでなかった友人たちと話してみても、わりと興味があり、クルマ選びにこだわりをもっていると思わせるのです。
とくにこだわりを感じるのがデザイン。自身の周囲にいるそこまでクルマ好きでない友人には、トヨタのRAV4を購入した友人が多いのですが、その理由を聞くと真っ先にデザインといっていました。
「若者は効率を求める」と思うかもしれませんが、燃費や価格ではなく好きなデザインというポジティブな理由でクルマを選んでいるのです。自身のクルマ選びの観点としては、デザインはもちろん、装備内容やスペック、乗り味などでクルマを選びます。そこに個性として魅力を感じているからですが、むしろそのような総合的なクルマ選びをしている方がマニアといえるのかもしれません。
学生時代に縁があり、現在の仕事を始めました。この4月でフリーランスとして独立し丸4年となります。自動車ジャーナリストとして活動していく中で、さまざまな目標やチャレンジしたいことがありました。そして、その大きな目標のひとつが日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員でした。
そして今年、カー・アンド・ドライバーさんの推薦で、念願の2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務めさせていただくことになったのですが、正直なところ現在の年齢でこのような機会に恵まれたことは自身が一番驚いています。これまで日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストカー試乗会は2021年から毎年取材してきました。その取材を通じて強く感じたのは、選考委員の先輩方はかなり真剣に悩み、その年一番のクルマを決めているということです。
日本カー・オブ・ザ・イヤーに関して、公平でないとか、メーカーのパワーバランスがあるとか、ネガティブな印象を持たれている人もいるかもしれません。でも実際に現場で取材してみると、そんなことはないと改めて思い直すことができました。
そして、この10ベストカー試乗会では、選考委員が最終確認として試乗することのみならず、メーカーの垣根を超えた交流の場になっていることも実感しました。そのような光景を見て、日本の自動車社会がよりよくあり続けるために、この賞は続けていくべきだと思いました。
そう思ったからこそ、私自身、この賞が後世に続いていく架け橋になりたいと感じました。これが選考委員を目指してきた大きな理由です。選考委員それぞれにクルマに対する評価軸があり、それに沿って評価をしています。若手代表としてクルマを評価し、投票するにあたり自身の評価軸をもう一度見つめ直しました。
それは「価格に対する驚きや感動はあるか?」ということです。いろんなクルマに触れてきた中で、いざ価格を見ると「この内容でこの価格ならアリかな」とか「思ったより高いかも」と振り返っていたことが多くあったことに気が付いたのです。
価格に対して適正か、優れているか、劣っているか……そう考えれば価格帯の高いクルマも低いクルマも公正に評価できる。そのように改めて発見したのです。この評価軸を芯に、今年1年活動していきます。
最後は少し固い内容となってしまったかもしれませんが、この仕事をする最大の原動力は「クルマが好きで、クルマにかかわるのが楽しい」ということです。若手なりに楽しんで活動していきますので、読者の皆さん、よろしくお願いします。
にしかわしょうご/1997年生まれ、富士スピードウェイの近くで生まれ育つ。大学時代から自動車ライターとして活動開始。現在はWEB媒体から老舗自動車雑誌、ファッション誌まで、さまざまなメディアで自動車記事を執筆。新車情報から旧車やチューニング、自動車に関するアイテムや文化、イベントの取材記事など幅広く手掛ける。定期的なサーキット走行や自身でのモータースポーツ参戦を通じ て運転技術の鍛錬も忘れない。目指すは「書けて、喋れて、走れる自動車ジャーナリスト」。2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員