【表紙のクルマの物語】フィアット500(2025年2月号)

『ルパン三世』の愛車としも知られる合理性を突き詰めた伝説の名車

イラスト/渡邊アキラ

 フィアット社は1950年代、名設計者ダンテ・ジアコーサのもと「ティーポ110」と称するプロジェクトを積極的に推進する。

 創意工夫を凝らしたそのモデルは、1957年に500の車名で市場デビュー。戦前に発売した初代500と区別する意味で、“ヌオーバ・チンクェチェント”と呼ばれた。

 ちなみにチンクエチェントはイタリア語で500を意味する。

 500は空冷2気筒エンジンをリアに搭載するRRモデル。巧みな設計により全長2970㎜ながら定員4名の室内空間を実現し、イタリアの風景の一部になった。

 日本では、『ルパン三世』の愛車としても有名である。ルパン三世がフィアット500を駆ったのは、TVアニメ『ルパン三世』(TV第1シリーズ。1971〜72年)と映画の『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)。TVアニメでは当初、ルパンはメルセデス・ベンツSSKに乗っていた。

 しかし、演出を手がけていた当時Aプロダクション在籍の宮崎駿氏が作画監督の大塚康生氏に変更を要請。

「愛らしい庶民の足」という理由で、フィアット500が抜擢された。また、同車は大塚氏の当時の愛車だったため、ディテールまで描きやすかったことも採用の理由だったという。この作品でのボディカラーはホワイト

 一方、宮崎氏が監督・脚本(脚本は山崎晴哉氏と共同)、大塚氏が作画監督を担当した『カリオストロの城』ではボディカラーを淡いイエローに変更。さらにスーパーチャージャーも組み込み走りにも磨きをかけていた。

 この映画のフィアット500の描写は秀逸で、リアエンジンやインパネセンター中央の灰皿など、ディテールまできちっと描かれている。

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