Gクラス(ゲレンデヴァーゲン)は、1979年にデビューした。当時のメルセデス・ベンツは「最善か無か」のポリシーのもと、最高品質のモデルを限られたユーザーのために送り出す生粋のプレミアムメーカーだった。
そのメルセデスが新開発する4WD車である。周囲は、その完成度に期待を抱いた。
というのも、すでに1970年に英国のランドローバーが、パワフルなV8ユニットとフルタイム4WDを組み合わせたレンジローバーを発表。富裕層の間で静かなブームを巻き起こしていたからだ。メルセデスの新4WD車は、レンジローバーのライバルに違いないと考えられたのである。
だが、実際に発表された「G」は、レンジローバーとはまったく方向性が違っていた。NATO軍の制式車両として開発されただけに徹底的にヘビーデューティで、乗用車ラインアップの一員というより、商用車ラインアップ(メルセデスは大型トラックなどの商用車でも高い評価を得ていた)の仲間といったほうが適当だった。
駆動方式はFR→4WDのセレクティブ式で、当初のエンジンは3リッターの直5ディーゼルのみ。スタイリングはあくまで武骨だった。まさにゲレンデヴァーゲン(オフロード車両)という呼称にぴったりのクルマだったのだ。
だがこの本格志向が年月を経るほど評価を高め、現在のGクラス人気を形作った。人気を高めた要因は、メルセデスらしく技術のアップデートを積極的に行ってきたからだろう。
駆動方式は本国では1989年からフルタイム方式となり、パワーユニットもパワフルなガソリンユニットを投入。1990年代にはV8ユニットも加わった。
イラストは、1980年代の初期型モデル。オーバーフェンダー未装備のロングボディ車だ。この時代の全幅は1700㎜。日本で3ℓディーゼルを搭載した300GDは5ナンバー登録が可能だった。