クルマが誕生した時代の空気感を大切にして描く/田川博之さんの代表作・好きな作品

 

作品1『トミカ・リミテッド・ヴィンテージ』

作品1『トミカ・リミテッド・ヴィンテージ』 使用ソフト:Photoshop(デジタルペインティング)   サイズ:縦×横210×297㎜(解像度350dpi) 制作:2022年

*最近のニュースに、出版3社が海賊版サイトの運営者に19億円の損害賠償請求を起こした、と大きく報道されていました。田川さんの作品が、ご本人に無断で使われた経験はありますか?

■クルマのイラストはないですが、スポーツ関係で、筋肉の解説イラストがネット上で無断使用されたことがありました。

*モラルの問題ですかね。ちなみに、出版業界では海賊版サイト(おもにマンガ)は約1000ほどあり、被害総額は昨年だけで金額にして約1兆円とか、報告されています。驚きました。さて、作品①について。

■最近のアウトドアブームに合った5台をコラージュしました。トミカのミニカーシリーズの中で、大人のコレクター対象のトミカリミテッドヴィンテージ(TLV)のパッケージイラストから選びました。上左=トヨタ・スタウト(1969年)、上右=三菱パジェロ(1991年)、中央=トヨタ・ハイラックス(1991年)、下左=ホンダ・シティ・カブリオレ(1984年)、下右=マツダ・ポーターキャブ(1973年)です。  ハイラックスは、いま、若い世代にも人気があるようですし、先日のAAF作品展では、「スタウトも懐かしい!」との感想もいただきました。シティ・カブリオレはピニンファリーナ・デザインでした。一時代を築いたパジェロは、製造販売が終了しているんですね……寂しい限りです。

クルマが誕生した時代の空気感を大切にして描く

*旧車を描くときに気をつけている点は

■そのクルマが誕生した時代の空気感を大切にしています。時代ごとに流行したデザインが特徴的で面白いですから、イラストで再現するのも楽しいです。また、パッケージイラストの場合は、ボディのツヤやテカリは控えめにします。ポーターキャブのようにあえてツヤやテカリを入れない仕上げにする場合もあります。  パーツでいえば、ホイールの質感は時代感が出ます。スタウトのスチールホイール(ボクらは〝鉄チンホイール〟と呼んでいました)は完全なツヤ消しにしたり、アルミホイールでもピカピカにしない、とか、ですね。

*ポーターキャブは可愛いです。

■フロントデザインがキャラクターの顔みたいで、可愛いですよね。日本のKトラは、意外にもアメリカで、「小さくて可愛い」と人気があるようです。右ハンドルは原則禁止のアメリカですが、〝25年ルール〟をクリアしたクラシックカーとして愛されているそうです。

*田川さんも、Kトラを運転する機会があったとか

■はい! 近所のホームセンターで、荷物の持ち帰り用にKトラのレンタルサービスがあったので、あるときお借りしてみました。大きな荷物を運ぶ際に、本当に便利で助かりました。もちろん、安全運転厳守で利用させていただきました。Kトラの運転は初めてでしたが、細いハンドルで、背筋をピンと伸ばして運転する感じが、新鮮でした。自宅用に1台ほしいと思ったくらいです。

作品2 『ローバーミニ ヘリテイジ 1997年』

作品2 『ローバーミニ ヘリテイジ 1997年』 使用ソフト:Photoshop(デジタルペインティング)   サイズ:縦×横210×297㎜(解像度350dpi) 制作:2012年

旧車を中心に作品作りを続けていきたい

*作品②は

■ローバー・ミニ・ヘリテイジ(1997年)です。ヘリテイジ・コレクションは、ボディカラーが7色のラインアップで、印象的だったのがイラストで描いたサーフブルーでした。ほかに、アーモンドグリーン、ホワイトベージュ、チャコールブラックなどがありました。  この作品は、「第1回AAF作品展」に出品しました。ボクが乗りたいクルマの1台です。若いときはヘリテイジカラーが好きでしたが、最近は落ち着いた感じのブルーグレーなどが好みです。年々、価格高騰の傾向で、夢のクルマとなっていますが……。
 ミニといえば、かつて、ザ・スパイダースのムッシュかまやつさんがミニ・カントリーマンに乗っていらしたのが印象的でした。彼らのヒット曲『あの時君は若かった』が聞こえてきそうです。

*将来、描いてみたいテーマは

■いまと変わらず、旧車中心に描いていきたいです。仕事はパッケージ対象で背景がないので、オリジナルは味のある背景を組み入れた作品にしていきたいです。オートバイ、自転車、重機や農機具も描きたいと考えています。

たがわひろゆき/1960年、神奈川県横浜市生まれ。1990年からフリーのイラストレーターとしてミニカーやラジコンのパッケージを中心に、スポーツ雑誌、広告イラスト、キャラクターデザイン、ロゴマークなどを手がける。AAF(オートモビル・アート連盟)会員。横浜市在住

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