クルマは、楽しい。その楽しみ方の「最高」は人それぞれの価値観によって異なるが、「共感」できることはたくさんあるはず。そこで本企画を通じて、現代のカーライフ事情をふまえつつ、自身もクルマ好きの一人であるゲストと共にこれを探求していこうと思う。記念すべき第一回のゲストは、レーシング・ドライバーとして長年にわたり活躍している谷口信輝さん。彼がどのようにクルマとの人生を歩んできたのかを紐解きながら、谷口さんが考える「クルマの楽しみ方」について聞いていこう。
僕は小さい頃から乗り物が好きでした。最初は自転車からスタートしバイク、そしてクルマとその時々の年齢で許されるところで興味が変わっていきました。負けず嫌いな性格もあって、乗るからにはすべてを自分なりに極めてきたんです。その中でもクルマは別格でした。どう考えても必要なもので、自分の分身というか体の一部みたいな感じですね。自転車やバイク、そしてクルマは、自分の能力を高めてくれる存在。小学校、中学校、高校、そして大人になるのに対応して行動範囲をどんどん広げてくれた。とくにクルマは、遠く、そしてもっと遠くへと行きたがる自分にとって、素晴らしいアドベンチャーツールといえる存在でした。
いまはもう趣味の範疇ではなく、仕事とライフスタイルになっています。僕の生活すべてになくてはならないものです。他の乗り物、たとえば船とか飛行機とは大きく違います。クルマは、僕の人生を左右した存在です。なにしろ人生の大半を、クルマでお金を稼いできました。自分が培ってきた運転技術と知識といろいろな功績で、僕の人生が回っているのですから。間違いなくヒエラルキーの頂点はクルマですね。この先、世の中がどう変わってくるのか、いままで過ごしてきた50年間もすごく変わりましたけれど、いまの僕が知っている、見えている中では僕がクルマから降りることはないと思います。なので、これからもいい付き合いをしていきたいし、世間が許す限り、大いに楽しみたいですね。
クルマってものすごく便利で、自分の力を増幅してくれて、ポテンシャルを上げてくれて、いろんなものを助けてくれる、いわばロボット的な存在だと思っています。でも、使い方を間違えると、とても危ない武器、凶器になってしまう。だから僕らがちゃんと発信しなくてはいけないと思っています。
ビギナーの方はもちろん、運転レベルに高い低いが生じるのはしょうがないんです。経験値が足りないとか、得手不得手があるとかの問題なので。でも、やっぱり周りが見えていない状態は危ないですね。意識として、周囲と調和しよう、安全にしようと気をつけることは必要です。
世の中には、なにかの事情で急いでいる人もいれば、のんびり走りたい人もいます。いろいろな人がいる前提に立って、つねに余裕を持った判断を心がけてほしいです。
人馬一体とはどういうことかというと、クルマを自分の手足を動かすかのように思いどおりに、クルマと同調して動かすということです。大半の人はクルマが語る言葉を聞き取ることができず、ただただ景色、たとえば曲がっている道とか車線に意識がいって、目で見えていることに対応しているだけのように思います。
僕が考える運転テクニックというのは、ステアリングワークだとかアクセル・ブレーキの操作とか動作の仕方ではありません。まずはクルマから来ているインフォメーションを感じ取って、ステアリングを握り、ペダルに足を載せている「自分」をコントロールしていくことだと常々いっています。
クルマが走っているとき、タイヤが回転する、サスペンションが縮む、そのひとつひとつから、ドライバーには確実にインフォメーションが来ています。実際に感じ取れるかどうかは経験値もあるんですけれど、それを「感じ取ろうとする意識」をもって運転することが大事なポイントです。
普段の道で、しかも制限速度内で十分です。カーブにさしかかって、ハンドルを切って、タイヤがつぶれ、外側に倒れ込み、サスペンションが縮むといった一連の動きの流れを「こういう感じかな」とか想像でいいので、意識しながら運転してみてください。
すると、それまで見た目で反応するだけの運転だったのと異なり、全身のセンサーを研ぎ澄ませた運転をすることになるので、自然とステアリングとペダルワークに対して、自分で課題を持ちながら、丁寧な操作を心がけるようになっていきます。
いつブレーキを踏んだかとか、ステアリングをいつ戻したかわからないようにしたりするとか、これって完全に自己満足の世界ですけど、制限速度内でも十分楽しめるし、面白いですよ(笑)。
大事なのは自分が思っているとおりに動かせるかなんですが、これを極めていけば、同乗者にも不快な思いを極力させない、めちゃくちゃスムーズで、速い走りができるようになりますよ。
ランボルギーニが作ったSUVなので、アツい血潮が流れているのを感じるし、何より心躍る。スーパーカーなのに車高を気にせず乗れるというのはとても楽。ブレーキが高性能ゆえか、低速域の扱いは若干シビア
天井の低さ、ピラーの傾き、完全にスーパーカーとしての佇まい。乗り心地は硬めではあるが、ノーマルモードでは足もよく動くし、角がとられていて許容範囲。7速DCTもスピーディかつ滑らか。エンジン音は官能的