ヒット曲が誕生するための絶対条件は、多くのリスナーの耳に入ること。そのため、テレビ視聴が盛んだった2000年代、ヒット曲の多くはドラマの主題歌やテレビCM曲だった。たとえば、ドラマでは2001年の木村拓哉主演『HERO』(フジテレビ系)の主題歌『Can You Keep A Secret?』(宇多田ヒカル)や、2003年草彅剛主演『僕の生きる道』の『世界で一つだけの花』(SMAP)などがあり、2001年に携帯電話のツーカーセルラー『Tu-Ka』(現・KDDI『au』)のテレビCMで流れた浜崎あゆみの『M』や、2002年NTTドコモ『FOMA』のテレビCMで使われた宇多田ヒカルの『traveling』がそれぞれ年間上位のヒット曲となっていた。
2023年も数々の大ヒット曲が生まれ、年間チャート(Billboard Japan Hot100)を見ると1位『アイドル』(YOASOBI)、2位『Subtitle』(Official髭男dism)、3位『怪獣の花唄』(Vaundy)、4位『KICK BACK』(米津玄師)、5位『第ゼロ感』(10-FEET)となっていた。これらの曲を耳にしたことがある人は多いだろうが、実はこのうち『アイドル』はアニメ『推しの子』、『KICK BACK』は同じく『チェンソーマン』、『第ゼロ感』はアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』の主題歌だった。
なぜヒット曲誕生のきっかけの多くがドラマやテレビCMから、アニメに変わったのだろうか。その理由としてまず挙げられるのが若者のテレビ離れである。SNSやストリーミングサービスの普及もあって、テレビドラマやCMが話題なる機会は減少傾向にある。
アニメが展開するストーリーの世界観やビジュアルの質が向上し、幅広い層に観られるようになった。2020年の社会現象にまでなったアニメ映画、劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』は、大人から子供まで話題が広がり、主題歌『炎』は大ヒットした。
ビッグネームがアニメの主題歌を担当するケースが増えた点も見逃せない。ヒットチャート上位常連のAdoやKing Gnuなどもアニメの主題歌を手掛けている。レコード会社は戦略として、ドラマ主題歌よりもアニメ主題歌に舵を切っているようだ。
アニメマーケットは海外に広がっている点も大きい。日本語の歌詞がそのまま受け入れられるようになり、YOASOBIの『アイドル』は2023年、海外で最も聴かれた日本の曲になっている。
こうした状況は2024年も続いており、アニメ映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の主題歌は、西川貴教 with t.komuroの『FREEDOM』に決まった。小室哲哉が西川貴教を初プロデュースした作品で、1月24日のリリースすると、すぐにbillboard JAPAN Download Songs 1位を記録。
他にも緑黄色社会が1月25日に配信リリースしたアニメ『ダンジョン飯』のエンディング曲の『Party!!』は、メンバーが勇者一行を演じたミュージックビデオと併せて話題になり、ヒットしている。
3月22日に公開されたアニメ映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の主題歌『絶絶絶絶対聖域』は、anoと幾田りら(YOASOBIのikura)のコラボ作品。両者とも同作に声優としても出演しており、話題性と注目度は高い。
アニメ『マッシュル-MASHLE-』の『Bling-Bang-Bang-Born』(Creepy Nuts)が、リズミカルなラップが受け海外からも“踊ってみた”動画が続々アップされるなど、最近ではグローバルでも注目されるほどになっている。
最新アニメから、今後もヒット曲が続々と誕生しそうだ。
西川貴教 with t.komuro
『FREEDOM』
発売中
仕様・価格:完全生産限定盤¥6000/通常盤¥1300
緑黄色社会 最新シングル『Party!!』
発売中
仕様・価格:初回生産限定盤¥3900/通常盤¥1,100/期間生産限定盤¥2,000
ano feat. 幾田りら