オーナーの愛情あふれるクルマをイラストに 大好きなノスタルジックカーのネットワークが広がる
ロットリングペンで仕上げる精密なモノクロイラストから、色鮮やかな街並みとクルマ、日本の街で活躍する重機など、多彩なイラスト作品を発表する鬼武龍一さん。最近手がけているのは、友人たちの愛車イラスト。ライトウエイトスポーツ、オープンカーが大好きな鬼武さん流のこだわりがつまった作品をご紹介します。
最近、『あなたの愛車、描かせてください』をテーマに、友人たちのクルマをイラストに描いています。作成にあたり、自分で取材するか、オーナーから写真を提供してもらい、ワックスがけしたみたいにピカピカなイラストに仕上げるのを心がけています。ピカピカとはいっても、カタログに載っているような新車の輝きより、オーナーの愛情あふれる生活感のあるクルマに魅力を感じます。
作品(1)『伊藤さんのNA8CE ロードスターVスペシャルⅡ』 下図:ステッドラーペン カラーリング:フォトショップ 制作:2023年
作品(1)は、『伊藤さんのNA8CE ロードスターVスペシャル2』。
とてもコンディションのいいロードスターのリアビューです。撮影場所は東京西部の笹久保大橋。ボクの人生最大のポカミスで手放したロードスターNA6CEのヘッドライト(スペアパーツ)をオークションで落札してくれた縁で、親しくおつきあいしています。次はサイドビューを描かせてほしい、と秋波を送っています。
作品(2)『畔蒜さんの新旧RDロードスター』 下図:ステッドラーペン カラーリング:フォトショップ 制作:2024年
作品(2)は、『畔蒜さんの新旧RDロードスター』です。畔蒜さんは、2シーターオープンにずっと憧れ、ロードスターはNA発表時から試乗して、2018年に念願のND.AT.Sスペシャル(赤)を購入。でも2022年発表の990S(白)がず〜〜っと気になり、40年ぶりにMTを購入したそうです。新築のご自宅前で2台揃ったシーンをイラストにしました。「何ともうらやましい!」を「絵にするとこうなる」の見本のような作品になりました。
作品(3)『HBTさんのR32スカイラインGT-R 1992年製』 下図:ステッドラーペン カラーリング:フォトショップ 制作:2024年
作品(3)は、『HBTさんのR32スカイラインGT-R 1992年製』。新車時から32年間、フルノーマルを維持して、走行距離8万1000km。雨天未走行で車庫保管され、最高の状態で動態保存されている愛車。ここまでオリジナルを維持している32GT-Rはとても珍しく、整備担当の日産ディーラーが驚いているとか。イラストは、埼玉にあるコーティング専門店「ぬぬふぁくとりー」でさらに磨きをかけた際の写真を参考に制作しました。美しく仕上がったクルマをボクがさらにツルピカに描きました。
ボクのマイカーヒストリーの始まりは、大学在学中に初めて中古で購入した1959年製の日野ルノーです。結局3台乗り継いで、学生時代の思い出の中に必ず出てくる愛嬌のある楽しいクルマでした。コンテッサ1300クーペ、いすゞベレット1600GT、ホンダ1300クーペなどを経て、初のオープンカーは白いシティ・カブリオレ。パワーステアリング未装備で取り回しは楽ではありませんでしたがオープンカーの魅力に目覚めました。もう一度乗ってみたいクルマです。
その後、1990年からユーノス・ロードスターNA6CE Vスペシャルに30年以上乗り、手放した後はポッカリ空いた車庫のスペースが寂しくて……。いろいろ検討して、造形作品が運べる2009年製BMW MINIクラブマン(本当はクラシックBMC MINIにしたかったけど)、MINI R57コンバーチブルと乗り換えました。足まわりは硬めで、ゴーカートフィーリングといわれるようによく走ります。MINIに乗り始めて気がついたのは、すれ違うMINIの多いこと、そのほとんどがボクのクルマより新しく、車体も大きくて雰囲気が異なります。それでもやっぱり屋根が開くクルマは明るくて気持ちがいい!
オープンカーの魅力はまだまだ尽きません。
インタビュー/山内トモコ
おにたけりゅういち/東京都出身。1968年、東京藝術大学美術学部工芸科卒業。1970年、同鍛金専攻科修了。HONDAのエポックメーキングなバイクやクルマのイラストを手がける。2009年、初個展(K‒ HOUSE画廊)。2011年「奇才カクテル・三人展」(文春画廊)。2013年「鬼のいるまに」展(いりや画廊)。2023年9月「おにのいる間に」展(神田アジギャラリー)。AAF(オートモビル・アート連盟)会員。東京都在住
やまうちともこ/TOKYO-FMパーソナリティを20年以上つとめ、インタビューした人1000名以上。映画評論家・品田雄吉門下生。ライター&エディター