“めんたいロック”という言葉をご存じだろうか。1980年代初頭の日本のロック界を賑わしたシーナ&ザ・ロケッツ、ザ・ロッカーズ、ARB、ルースターズ、ザ・モッズといったバンドを称するジャンルのことだ。
この言葉が生まれた理由は、彼らが辛子明太子で有名な福岡でバンドを組み、人気を集めデビューしたからだ(ARBは結成されたのは東京だが、主要メンバーの2人が福岡出身だったため同じく扱われた)。音楽面では、パンクに影響を受けた激しく、速いロックということが共通点だ。
なぜ当時、福岡から、同時期に彼らのようなバンドが登場したのだろうか。その理由は、当時の福岡が日本で稀にみる激熱ロックシティだったからだ。
ライブハウスは数多く存在し、毎日ライブが行われていた。特に大きな存在が『80's FACTORY』。大きめのライブハウスで、来福したプロのバンドと地元のアマチュアバンドが同じステージに立ち、しのぎをけずり、多くの観客でにぎわった。特にザ・モッズは、縁が深く、オープン前の店内で、毎日練習をしていたという。
彼らを紹介する地元メディアがあったことも大きい。テレビはテレビ西日本の『エルモーションラグ』、ラジオはFM福岡の『LIVE EXPLOSION』、雑誌は『BLUE-JUG』。地元のミュージシャンをメインに取り上げて紹介していた。ちなみに80年代アイドルのチェッカーズは、久留米のアマチュア時代『エルモーションラグ』で初テレビ出演している。
さらにコンテスト。1年に1回行われるYAMAHA主催の『L-MOTION』は福岡のバンドがメジャーデビューするキッカケとなるアマチュアコンテストで、ザ・ロッカーズ、ルースターズ(ボーカルのみが違うバンド『人間クラブ』で出場)、ザ・モッズはここで入賞をし、知名度を上げている。ちなみに先ほど名前が出たチェッカーズもこのコンテストがデビューのキッカケとなっている。
その他にも、レアもの大きくそろえた松本康のレコードショップ『ジュークレコード』、ロックファッションが数多く並んだ洋服屋の『はちや』など。
街全体でロックを応援していた。ここで実力や感性が磨かれたからこそ、今も多くのロック好きはもちろん、人気のロックミュージシャンからリスペクトされる“めんたいロック”のバンドが生まれたのだろう。
シンコーミュージックから2024年11月25日に発行された書籍。『ルースターズの時代 THE ROOSTERS AND THE ROOSTERZ』、『Hey! Two Punks The Mods:The Early Days 博多疾風編』。この2冊には、福岡だからこそ誕生した、彼らの魅力が、彼らの言葉で綴られている。
書籍情報
『Hey! Two Punks The Mods:The Early Days 博多疾風編』(320ページ/3000円)
販売サイト:https://www.shinko-music.co.jp/item/pid0655451/
『ルースターズの時代 THE ROOSTERS AND THE ROOSTERZ』(312ページ/3000円)
販売サイト:https://www.shinko-music.co.jp/item/pid0655427/
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