クルマのある空間を水彩画と鉛筆で表現する/溝呂木陽さんの代表作・好きな作品

フェラーリの本拠地、イタリアのモデナを訪問 取材旅行で見たクルマと現地の空気感

作品1

 作品1は、イタリア北部、フェラーリの本拠地があるモデナの小さなスタンゲリーニ・ミュージアム(ムゼオ・スタンゲリーニ)で描きました。現地の説明員・福井エリーナさんにお世話になり、夕方、椅子に座って、作品をその場で仕上げることができました。午後の斜めの光が大きな窓から差し込み、赤いクルマたちと対話しながらの水彩紙への色つけはドキドキするものがありました。

 1900年代初頭、自動車分野に業種転換してモデナ最古の自動車メーカーといわれるスタンゲリーニ。モデナの街でフィアットの販売店をしながらスクーデリア・スタンゲリーニを興し、シャシーやエンジンまで自製して小排気量でチャンピオンを取るなど、ミュージアムでは、その文化と歴史を伝えています。日本語解説は、ミュージアムのホームページでも見ることができます。

 ミュージアム訪問時、たまたま出会った日本人見学者が、後日、ボクの個展に来場。この作品を購入されました。その場の空気をわかっている方の手元にこの作品が飾られるのは嬉しいです。

作品2

 作品2の250GTOは、モデナのフェラーリ本社のクラシケ(レストア)部門に展示されていた、ツール・ド・フランス出場車で有名なシルバーのマシンです。GTOの美しさは息を呑むほどでした。

 イタリア取材は、フェラーリに勤務する友人の石田さんにお世話になり、数年ぶりの「フェラーリ・ファミリーデイズ」の本社解放日に広い敷地内を探索、工場内や開発ルームなども見学しました。

 この作品は、現場で撮影した写真をパソコン画面に写して、その場で見ているつもりで大型水彩紙に鉛筆でスケッチし、透明水彩絵の具で着彩しました。この絵の具は、後から色味を薄くすることが難しいので、偶然の力も借りながら絵を描き進めました。

作品3

 作品3はトリノ自動車博物館のランチア・フェラーリD50。大展示室にコーナーを駆け抜けるように歴代マシンが配置され、照明が切り替わるごとに各マシンが走行しているように見えるドラマチックな展示でモータースポーツの歴史を俯瞰できました。D50は、ランチアが放出してフェラーリが発展させた貴重な1台で、ランチアを愛するトリノの人々の愛情が伝わりました。水彩紙に描きながら、光と影の表現に何かひとつ掴んだ気がする作品です。

 今回の旅の作品は10月18日から23日、原宿ペーターズショップ&ギャラリーの個展で展示しました。次回個展も開催予定です。また皆様に原画を見ていただけたらと思います。AAF作品展(12月4〜8日)でも原画を見る楽しみを味わってください。

みぞろぎあきら/1967年、千葉県出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。中学生のころから1960年代のクルマを描き続けている。海外旅行先・取材先の風景を水彩画作品にまとめる仕事もライフワークのひとつ。個展開催、ミニカー作りなど幅広く活躍。2022年、千葉県市川市に予約制私設ギャラリー、アトリエキャトレール(http:// blog.livedoor.jp/scgmizorogi/)を開設。予約はamizo@beige.ocn.ne.jp。AAF(オート モビル・アート連盟)会員。千葉県在住

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