1962年式アルファロメオ2600スパイダー。1962年に発表された2600を最後にアルファロメオは現在まで直列6気筒エンジン車を生産していない。2600シリーズはセダン/クーペ/スパイダーのボディが選べた。スパイダーの造形と生産は名門ツーリング社が担当。スパイダーの総生産台数は2256台
第2次世界大戦後のアルファロメオは、戦前の「レーシングカーとスーパースポーツカーを少量生産する」という現在のフェラーリのような体制から、スポーティカーを得意とする量産車メーカーに経営方針を転換した。
戦後の第1弾モデルは、1950年発表の1.9リッターエンジンを積む1900。高い人気を博してロングセラーとなり、58年には1900が2000に発展した。この2000の後継車として62年に発表されたモデルが、今回、紹介する2600シリーズである。
戦後の量産アルファは、すべて直列4気筒DOHCエンジンを積んでいた。ところが2600は、新開発の直列6気筒DOHCを搭載。戦前の名車、6C1750などで高性能をアピールしたアルファロメオの6気筒復活である。
FRのシャシーレイアウトは2000と共通で、ボディタイプはセダン、クーペのスプリント、オープンのスパイダーの3種が用意されていた。アルファの伝統に従い、クーペとスパイダーは社外のカロッツェリアが造形と生産を担当しており、スパイダーはミラノの名門、ツーリング社が架装していた。スパイダーのエンジンはセダンの130psから145psにパワーアップされた。
2600シリーズは1968年まで作られたが、スパイダーはその3年前、65年に生産を終了する。というのも、ボディ製作を担当していたツーリング社が解散してしまったからだ。スパイダーの生産台数は2255台。2600の後、現在までアルファロメオに直列6気筒エンジンが搭載されたケースはない。2600は最後のストレート6アルファである。
取材車は、2002年に日本に輸入され、フルレストアを受けた希少モデル。ツーリング社が造形と生産を担当したボディは、伸びやかな印象。新車時のオリジナルカラーで塗り替えた塗装には十分な艶があり、クローム部品の状態も良好である。気になるキズやサビはない。室内はシートやカーペットを張り替え済み。メーターやステアリングホイール、各種スイッチ類は新車時からのもので、各部のオリジナル度は高い。大きなメリットは、エンジンとトランスミッションがフルOH済みという点だ。アルファロメオに精通した熟練メカニックの手により、摩耗した部品をすべて交換している。それだけに145psを発揮する2.6リッターの直列6気筒エンジンはパワフルで、発進直後から、高回転域まで豪快に吹き上がる。
2.6リッターのストレート6はサウンドも最高。全域で快音をドライバーの耳に届ける。とくに3500rpmを超えるとエンジン音が引き締まり、アルファロメオの魅力が実感できる。5速MTのシフトフィールも確実である。4輪ディスク式のブレーキの制動力は強力。しかし、感覚がつかめないステアリングは要注意だ。直進付近に大きめの遊びがあり、操舵力は非常に重い。交差点を曲がるだけでも、そうとうな腕力がいる。タイヤは特殊サイズ(165R400)のミシュランXラジアル(チューブタイプ)を装着。幌は日本で張り替え済みである。
取材車は、日本でヒストリックカーラリーに積極的に参加していた。メカニズムなど各部はグッドコンディションをキープしている。今後も各種イベントで美しい姿が楽しめるに違いない。