2024年3月29日、東京・お台場にあるシティサーキット東京ベイ(東京都江東区)で、モータースポーツの世界で女性が活躍することが、どのような体験かを知ってもらうためのFIA主催イベント『FIA ガールズ・オン・トラック』が実施された。
午前中はここシティサーキット東京ベイで女性ドライバーによるキャリアトークと最新EVカートの乗車体験、フォーミュラE公式シミュレーター体験を実施。午後は東京E-Prix会場にてワークショップやピットレーンウォーク、シェイクダウン走行の見学などのアクティビティを提供するプログラム。
本記事では午前中のプログラム、あいにくの悪天候でEVカート体験はかなわなかったものの、KYOJO CUPに出場する現役女性ドライバーによるトーク・セッションと、スペシャルゲストのトーク・セッションの様子をお届けする。
トーク・セッションでは、KYOJO CUPで活躍する翁⻑実希選手、バートン・ハナ選手、織戶茉彩選手が参加。各々のキャリア、モータースポーツをはじめるきっかけや、そのなかで感じた困難など、各々の経験談が語られた。
女性がモータースポーツをするということは、ないことではないとの認識はある程度あるものの、当人を取り巻く環境からすると、前向きな応援が得にくいという実態があるそう。ことこの3名はそれぞれバックアップを得られる状態であったのは幸運であったとも。
とくにバートン・ハナ選手は、日米のモータースポーツ文化の違いについても触れ、グラスルーツカテゴリのモータースポーツが盛んなアメリカでも、女性の参戦ハードルが非常に高いそうだ。対して日本では比較的入りやすい女性専用のカテゴリであるKYOJO CUPが存在したことが来日するきっかけでもあり、自身の夢を叶えながら、諦めずに挑戦することの大切さを語っていた。
後半、サプライズゲストとして、F1ドライバー・角田裕毅選手が登場。予想だにしていなかった展開に、来場者たちのテンションが一段と高まった。
角田選手は先日行われたオーストラリアGPで7位入賞と、トップ5チーム(レッドブル、フェラーリ、メルセデス、マクラーレン、アストンマーティン)に次ぐ、ミッドフィールドでの最高位を獲得し、そこでの安定したレース運びもあって評価を上げている。本人も調子について聞かれ「最高です!」と即答、「クルマがカラダに慣れてきて、自分の一部としてコントロールできている」といい、来週鈴鹿サーキットで開催されるF1日本GPに向けては「いい状況で母国GPを迎えられて楽しい」と語った。
参加者の一人、12歳のレーシングドライバーを目指す女の子から「12歳の時にしておくべきことはなにか?」との質問があがり、23歳の若きF1ドライバー・角田選手が回答したのは「言い訳をしないこと」だと語った。
「モータースポーツは物を使っているので、エンジンの違いや、クルマのメーカーごとのパフォーマンスの違いなど、いくらでも言い訳ができるのですが、まずは自分の技術を上げることに集中してほしいし、モノのせいにする習慣をつけないことが大切だと思います。自分自身、7歳8歳のころに負けたことがショックで、そうなりかけたこともあったけれど、厳しい父の教えもあって、自分のパフォーマンスに集中することができた。これはモータースポーツに限らず、どのスポーツ、あるいはどんな仕事にも通じることだと思います」