2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー結果発表と選考委員の評価

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー結果発表と選考委員の評価

 2024−2025日本カー・オブ・ザ・イヤー(第45回))は12月5日に最終選考会が開かれ、ホンダ・フリードが本賞を受賞した。ホンダの本賞獲得は2010-2011日本カー・オブ・ザ・イヤー(第31回)のCR-Z以来になる。
 日本カー・オブ・ザ・イヤーは11月26日に10ベストカー選出し、ここにノミネートされた10モデルを対象に選考委員が投票する。各選考委員は日本カー・オブ・ザ・イヤーにふさわしいモデルに10点、6点、2点を投票。その合計得点が多いモデルが日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞する仕組みだ。今年の選考委員は59名。

 ホンダ・フリードの受賞理由は「5ナンバーサイズで3列シート。日本市場で重用されるファミリーカーゆえ、これまでは突出したキャラクターを生み出しづらかったことも事実。ホンダはそこに切り込んだ。居住性、使い勝手のよさに磨きをかけるとともに、動的質感の向上、ひいては操縦の喜びをも加味することに成功した。ガソリンエンジンモデルに加え、ホンダ独自のハイブリッド「e:HEV」を加えたことも大きな魅力のひとつ。ホンダが大切にしているM・M(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想を見事現代に体現した1台である」と説明されている。

 フリードは220点を獲得。16人の選考委員が10点を投票している。

大谷達也さん
「フリードは決して派手なクルマではない。しかし、広々とした室内はもちろん、快適で良質な乗り心地やハンドリングなど、クルマの基本となる部分をしっかりと煮詰めながら、ハイブリッドにより省燃費を達成。そしてスタート価格を250万円台に設定したことも注目に値する。電動化やデジタル化により自動車の価格高騰が予想されるなか、フリードのように実用的でCO2排出量も低く、かつ価格も低廉なモデルは、多くの人々の「日々の足」として、今後、その重要性をますます深めていくことだろう」

岡崎五朗さん
「全長4.3mのコンパクトなボディに実用的な3列シートを収め、ハイブリッド仕様では25km/Lという低燃費を実現し、両側電動スライドドア、後席クーラーを備え、走らせれば静粛性が高く乗り心地も快適。デザインを含め尖った部分はどこにもなく、日本に住んでいると有り難みを忘れがちな存在だが、実はこんなクルマを300万円程度で提供できる国は他にない。日本車の魅力を世界に発信することも日本カーオブザイヤーの重要な役割のひとつであり、その観点でもフリードはイヤーカーにふうさわしい1台だ」

世良耕太さん
「多様な使い方に対応する間口の広さが拡大しており、この点を高く評価した。内外の見た目は“新しくなった”感にあふれており、変化点はことごとく機能に裏打ちされている。例えばAピラーまわりの処理変更により死角が大幅に減少し、より安心して運転できるようになった。2列目、3列目席のすごしやすさも大幅に改善。AWDは氷雪路だけでなく乾燥路でも有効。パワートレインはガソリン、ハイブリッドともに洗練の度合いが増している」

 輸入車が本賞を獲得しなかった場合に選出される2024-2025インポート・カー・オブ・ザ・イヤーは、MINIクーパーが受賞した
「シンプルさ、痛快なドライブフィール、ラジカルさ……新型MINIクーパーはその伝統的名称からユーザーが期待するすべてを高次元で進化させた。10ベストカーに4台の輸入車が選出された中で、EVだけでなくガソリンエンジンモデルをラインアップしたのはMINIクーパーのみである。BMW7シリーズと同等の安全装備/運転支援システムを装備したことも注目に値する。コクピットのデジタライズ、リサイクル素材の積極採用等、実用性と遊び心を満載させた点も面白い」

 MINIはエンジン車とBEVをラインアップするほか、3ドア、5ドア、カントリーマンなど多彩なボディバリエーションを展開。今後、コンバーチブルの販売が予定されており、MINIワールドは大きく広がっていく。

九島辰也さん
「今年はMINIという自動車業界を代表するクルマのフルモデルチェンジに当たった。なので注目するのは当然だが、想定以上に全てが進化していた。エクステリアひとつとってもそうで、「MINIはこうあるべき!」といった概念に沿いながらの仕上がりは素晴らしい。デザイナーは相当苦労したはずだ。また、インターフェイスの劇的な進化も本賞に値する。MINIだからできることを具現化した。走りも良い。MINIのゴーカートフィーリングはさらに磨かれた。それとBEVの登場も高く評価したい」

渡辺慎太郎さん
「パワートレインはBEVと純粋なICE、ボディは3ドア/5ドア/コンバーチブルの3種類を用意して、幅広い選択肢を提供。一方で、パワートレインやボディ形状の違いを問わず、MINIの独特な世界観がどの仕様からも感じ取れました。乗り味だけでなく装備や内外装の細部に至るまで、包括的に「MINI 」というブランドをプロデュースすることに成功していると思います。走る/曲がる/止まるの基本性能はBMWの技術力に裏打ちされていて、時代のニーズと顧客の多様化に応えつつも信頼性の高い1台です」

菰田潔さん
「時代が変わってもMINIのゴーカートフィーリングは変わらない。しっかりしたボディと、しっかりしたサスペンションにより、ドライバーの意思を忠実に表現することができる。MINIらしい走る愉しさは健在なのだ。ワインディングロード、サーキット、高速道路、市街地でも楽しめる。それは飛ばすという意味ではなく、ドライバーが正確にコーストラッキングできること。ハンドルだけでなく、アクセルやブレーキコントロールも思いのままだ」

 デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーは三菱トライトンが受賞。三菱自動車は昨年、デリカミニで同賞を獲得しており2年連続での受賞になった。
「今回はピックアップトラックの世界戦略車、トライトンでの受賞である。スリーダイヤモンドのお家芸である4WDを、一見武骨な、しかしだからこそ新しいライフスタイルを想起させる造形としたことが授賞につながった。堅牢なフォルムに同社が「ダイナミックシールド」と呼ぶ大胆なフロントエンドのデザインが調和。難しいダブルキャブでありながらバランスの取れたプロポーションを実現している」

 ピックアップトラックが米国で高い人気を誇っていることは周知だが、国内では販売されている車種が少なく、日常を彩るモデルとしては浸透しているとは言い難い。トライトンが普及することで、ピックアップトラックが「SUVのバリエーション」として人気を高めていくことが期待できる。

安東弘樹さん
「刷新されたフレーム・シャシーによってオフロードでのタフな走りとオンロードでの乗り心地の良さを、それぞれ高い次元で具現化した事を評価。乗員に優しい装備も満載です。大きな体軀はユーザーを選ぶものの、ピックアップトラックとして使える道具でありながら、その武骨なデザインは都会にも馴染む洗練さも持ち合わせています。逞しいパワーユニットにも好感を持ちましたが、このようなクルマを評価できる時代は終焉に近づいているかもしれません。それだけに今の時代に爪痕を残すクルマとして選びました」

 テクノロジー・オブ・ザ・イヤーはホンダCRーVe:FCEVが獲得した。
「燃料電池車のパイオニアであるホンダのCR-V e:FCEVが受賞した。いまだマイナープレイヤーであるFCEVの民主化を目指し、スタックの小型化、高効率化を実現。同時に低コスト化と高耐久性も両立し、人気カテゴリーであるミドルクラスSUVカテゴリーに投入した意義は大きく深い。また水素ステーションが少ない不安を払拭するために、外部充電が可能なプラグインハイブリッドとして使い勝手を向上させた点も高い評価を得た理由である」

 水素と酸素の化学反応を利用して発電する燃料電池は、排出物が水だけと極めてクリーンな環境性能を持つ。ホンダは燃料電池車の開発に早くから取り組んできたが、最新世代は外部充電機能を持たせるアイデアで「水素ステーションがどこにあるのか」という不安払拭を目指した。日常的には外部充電を使ったBEVとして利用し、ロングドライブ時には燃料電池車として利用する……そんな使い方を提案するモデルである。

 日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員特別賞は、マツダe-SKYACTIV R-EVが受賞した。
「マツダ独自の技術として世界で初めて実用化に成功したロータリーエンジン。環境問題を理由に命脈を閉じたかに見えたこの日本固有の技術資産を、発電機として用いる新しいパワーユニットe-SKYACTIV R-EVとして復活させ、未来に向けさらに進化させる道筋を拓いたことを評価した」
 ロータリーエンジンを「日本固有の技術資産」と表現している点は注目に値する。マツダの技術力を象徴するユニットとして、環境対応を果たしロータリーエンジンの可能性を開拓した点は将来にわたって高く評価されるだろう。

Screenshot

 得票数2位はマツダCX-80。岡本幸一郎さんはCX-80に10点を投じた。
「これまでも「その年を象徴する何かを持っているクルマ」を念頭において評価してきましたが、本当に悩みに悩んだ末、日頃から心がけている「期待に応える」ことと「新たな価値の創造」の大きさに目を向けて、CX-80に10点を投じることにしました。同じ商品群の第2弾ではありますが、同じく数々の新しいことにチャレンジし、先発モデルではやりきれていなかったことがかなり挽回できていたことや、3列目まで十分な居住性を確保したSUVとして新たな価値を生み出したところを評価したいと思います」

瀬在仁志さん
「世界のプレミアムSUVの基本パッケージングであるFRベース4WD+多気筒ユニットを採用するCX-80は、日本のSUVでは唯一となる直6ディーゼルターボ+マイルドHVユニットをトップモデルに採用し、運動性能と上質感にこだわることで強豪ひしめく世界に勝負を挑んだ。ラインナップもパワートレーンを3タイプ、駆動方式にFRや3列シートも用意するなどマツダを代表するモデルとしての選択肢も豊富。世界基準の走りが期待できるパッケージングの良さと志の高さ、今後への期待を込めて最高評価した」

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