2月16日(日)、2020年FIA世界ラリー選手権(WRC)第2戦ラリー・スウェーデンの最終日デイ3が、スウェーデンのトルシュビーを基点に行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(ヤリスWRC 33号車)が優勝した。
カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)が総合3位で、セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組(17号車)が総合4位でフィニッシュし、チームはマニュファクチャラー選手権首位に立った。
▲表彰式
ラリー・スウェーデンの競技最終日デイ3は、トルシュビーのサービスパークの北側に広がる全長21.19kmのステージ「リケナス」を1回のみ走行する短い1日だった。ラリーウイーク前半の時点では2回の走行が予定されていたが、日曜日は気温が上昇し、また大雨が降る可能性もあってステージコンディションの悪化が避けられない状況となり、1回のみの走行に変更されたからだ。
その、最終日唯一となったSS18は、トップ5タイムを記録した選手に対してボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定され、最後まで激しいタイムアタック合戦が行なわれた。
予想通り天気は大きく崩れ、ステージの周辺は強い雨が降り続き、気温も6度前後まで上昇。道を覆っていた雪や氷が解け、非常にトリッキーな路面コンディションになった。しかし、エバンスは落ち着いた走りで6番手タイムを記録。総合2位のライバルに12.7秒差をつけ、2017年のラリーGB以来となるキャリア2勝目、そしてチーム加入後最初の勝利を手にした。
総合3位となった開幕戦ラリー・モンテカルロに続き表彰台に立ったエバンスは、42ポイントの同点でライバルに並び、彼のキャリアの中で初めてドライバー選手権で首位に立った。
▲優勝したエルフィン・エバンス選手/スコット・マーティン選手と3位に入ったカッレ・ロバンペラ選手/ヨンネ・ハルットゥネン選手
デイ2で激しい3位争いを繰り広げたオジエとロバンペラは、ロバンペラがパワーステージで2番手タイムの選手に対し、3.7秒という大きな差をつけるベストタイムを記録。3番手タイムだったオジエを逆転して総合3位でフィニッシュし、WRカーでの出場2戦目で表彰台とボーナスの5ポイントを獲得した。なお、19才でのポディウム獲得は、従来の記録を2才以上更新する史上最年少記録となる。
オジエは、表彰台こそ逃したが、総合4位に入りパワーステージでは3ポイントを獲得。首位エバンスと5ポイント差の、ドライバー選手権3位につけている。チームはマニュファクチャラー選手権において、2位のチームに10ポイント差をつけてトップに立った。
▲33号車(エルフィン・エバンス選手/スコット・マーティン選手組)
開幕戦ラリー・モンテカルロに続き、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムにより出場の勝田 貴元は、堅実な走りを続け総合9位でフィニッシュ。デイ2最後のSS16では5番手タイムを記録するなど、成長をタイムで証明した。また、プライベーターとして、ユホ・ハンニネンをコ・ドライバーに迎えてヤリスWRCで出場したヤリ-マティ・ラトバラは、デイ1でクルマにトラブルが発生し、残念ながらリタイアに終わった。
▲ヤリ-マティ・ラトバラ選手がドライブするトヨタ・ヤリスWRC。残念ながらリタイヤに終わった
■豊田 章男(チーム総代表)コメント
例年とは異なる雪のないスウェーデンで、エバンス/マーティン組が我々の新チームに今季初優勝をもたらしてくれました。エルフィン、スコット、優勝おめでとう。エルフィンはチーム加入当初、エストニアの工場に来てメカニック達と遅い時間までヤリスの使い方や整備の仕方を勉強してくれていました。仕事の後は、その仲間達とボーリングに行くなどして、早くからチームに溶け込んでくれていました。こんな新メンバーがチームと一緒に成績を残してくれたこと、本当に嬉しく思います。ありがとう。
また、ロバンペラ/ハルットゥネン組が、チームメイトのオジエ/イングラシア組とわずか3秒差の熾烈なバトルを制して3位表彰台を獲得してくれました。貴重なポイントを獲得し、ファンも沸かせてくれた4人の選手の走りにもお礼を言いたいと思います。
勝田選手は、攻めると決めたSSではタイムをしっかり残しつつ、全ての道を走りきってくれました。ひとつのステージで普段から仲の良いタナック選手よりも早いタイムを出せたことは、今後の大きな自信につながったことと思います。引き続きがんばれ!
今回のスウェーデンでは、ひとつだけ残念なこともありました。今はヒュンダイのタナック/ヤルヴェオヤ組が2位に入ってくれたことで、彼らと約束していた"私が上からシャンパンをかける"というシチュエーションが早くも実現されてしまいました。しかし、このせっかくのチャンスに、私はスウェーデンにいれませんでした。残念です。ただ、正直に言えば、スウェーデンでのシャンパンファイトは寒すぎます。暖かくなる次戦以降に、またその舞台が整えられればと思います。TOYOTA GAZOO Racingのみんな、引き続き優勝をお願いします!そして、オィットとマルティンも引き続き頑張ってください。
一戦ごとに、選手たちは、ヤリスのドライブを一層楽しんでくれていっているように思います。次戦以降も更に熱い走りをしてくれると思いますので、ファンの皆さま、引き続き、応援をよろしくお願いいたします。
▲ヤリ-マティ・ラトバラ選手とユホ・ハンニネン選手
追伸
スウェーデンでは、ラトバラ選手がハンニネン選手をコ・ドライバーにしてヤリスWRCでプライベート参戦してくれていました。WRC再参戦を果たした2017年のオリジナルメンバーの二人です。ラトバラ選手は"トヨタの一員でいられて嬉しい、ヤリスに再び乗れて嬉しい"と言ってくれていたと聞きました。二人がヤリスを選んでくれたこと、私も本当に嬉しいです。しかし、今回は、車両トラブルによりリタイアとなってしまいました。もっとヤリスを楽しんでもらいたかったのに申し訳ない気持ちです。次は、ラリー・イタリアでの参戦を計画してくれていると、マキネン代表からも聞きました。万全な状態でヤリスを提供できるよう、しっかり準備しておきます。次は思いっきり走ってください。
▲トミ・マキネン(チーム代表)
■トミ・マキネン(チーム代表)コメント
我々にとって最高の結果です。エルフィンは週末を通して素晴らしく、彼とスコットはスウェーデンで初めて優勝したイギリス人として、WRCの歴史に名を刻みました。また、カッレの最終ステージでの走りも素晴らしいものでした。ライバル達は過去にこのステージを何度もWRカーで走っていますが、カッレは初めてだったにも関わらず、ライバルを大きく突き放しました。ここまでのところ、我々はドリームチームだといえます。過去にないほどチームスピリットは高く、とても良い状態にあると思います。私はただただそれが嬉しく、彼らを誇りに思います。
▲セバスチャン・オジエ(ヤリスWRC 17号車)
■セバスチャン・オジエ(ヤリスWRC 17号車)コメント
この週末に満足していない訳ではありません。確かに4位という結果は不本意ですが、十分な選手権ポイントを獲得しましたし、次のメキシコを戦う上では良い順位につけています。カッレは今週末とても素晴らしく、パワーステージでも凄いタイムを出しました。表彰台に値する戦いだったと思います。パワーステージのコンディションはかなり難しく、選手権のことを考えると全開では攻められませんでした。エルフィンのドライビングもまた素晴らしく、彼にとってもチームにとっても価値ある勝利でした。彼らのような強い選手がチームにいるのは良いことですし、今シーズンのトヨタのラインアップは本当に強力だと思います。自分達は、気持ちを切り替えて次のラリーに臨み、優勝を目指します。
▲エルフィン・エバンス(ヤリスWRC 33号車)
■エルフィン・エバンス(ヤリスWRC 33号車)コメント
TOYOTA GAZOO Racingに加わって2戦目で勝つことができて、本当に嬉しく思います。素晴らしいクルマを提供してくれただけでなく、テストでは自分が望むクルマに仕上げてくれるなど、手厚くサポートしてくれたチームに心から感謝します。クルマは私に大きな自信を与えてくれ、今回のような変わりやすいコンディションでは、それが大きな助けになりました。ここまでのところ、運転をとても楽しめているので、この後のグラベルイベントでも良いフィーリングが続くことを願っています。一緒に戦ってくれたスコットには、とても感謝しています。彼と組んで以降とても上手くいっていますし、彼に初勝利をもたらすことができてとても嬉しく思います。
▲カッレ・ロバンペラ(ヤリスWRC 69号車)
■カッレ・ロバンペラ(ヤリスWRC 69号車)コメント
表彰台に立てて、とても良い気分です。今回のラリーは普段よりも距離が短く、常にフラットアウトで走らなければならなかったので大変でした。昨日までにミスでタイムを失いましたが、今日は遅れを挽回して表彰台に立ち、パワーステージで5ポイントを獲得することができました。自分の力を全て出しきり、良い走りができたと思います。ステージの序盤はタイヤをセーブしようと少し慎重になり過ぎ、あまり良くありませんでしたが、最後にはそれが報われ非常に速い区間タイムを刻むことができたので、全体を良いタイムでまとめることが出来ました。
▲17号車(セバスチャン・オジエ選手/ジュリアン・イングラシア選手組)
WRC次戦は、3月12日から15日にかけて開催される、第3戦「ラリー・メキシコ」。シーズン最初のグラベルイベントとなるこの1戦は、今年もメキシコ中央高地の都市レオンにサービスパークが置かれる。レオン周辺に広がるステージの標高は総じて高く、最高地点は2,737mにも達する。空気が薄い状態での走行となるため、エンジンのパワーダウンをいかに抑えるかが重要な技術的ポイントに。また、気温も摂氏30度前後に達するなど高く、エンジンの冷却面に関しても非常に厳しい1戦だ。