チーム三菱ラリーアートが開発するラリー車「トライトン」の実力

トライトンのアジアクロスカントリーラリー試験車に富士ヶ嶺オフロードの特設コースで同乗試乗。全長×全幅5300×1815㎜のピックアップボディに、2.4リッターターボディーゼルエンジンを搭載

 今回の取材会のメインイベントは、トライトンのラリー試験車の同乗試乗だ。このことを最初に聞いたときは、「トライトンって、ピックアップトラックでしょ? いくらアジアクロスカントリー・ラリーに参戦する車両といっても、たいしたことないのでは……」などとたかをくくっていた。
 しかし、実際はそのパフォーマンスに度肝を抜かれた。2周の特設コースから戻ってきたときには、もう首が痛くてグッタリという感じで、クロスカントリーラリー車両というのは、こんなにもスゴイものなのかと驚かされたのだ。

その過激な走りは、トライトンの見た目からは想像できないほどスゴかった

 取材当日はあいにく雨が降り続いていて、富士ヶ嶺オフロード(山梨県)のヒルクライムコースはドロドロで最悪のコンディション。しかし、その勾配がきついコースをトライトンはものスゴイ勢いで駆け上がっていく。

2015年にバハ・ポルタレグレ500に参戦したアウトランダーPHEV・TE仕様。アウトランダーPHEVの信頼性を実証する場としてポルトガルのラリーに参戦。増岡浩氏が監督兼ドライバーを務めた。滑りやすくタフなオフロードラリーで完走を果たし、モーター駆動のPHEVの有効性を確認



 ドライバーの小出一登氏は「これでもベース車にライトチューニングを施した程度ですよ」と語りながら、最後にジャンプ走行を披露してくれたが、トライトンがこんなにも過酷な条件下で過激な走りができるとは思いもしなかった。
 トライトンの競技車に搭載されているエンジンは、2.4リッター・MIVECターボディーゼルで、最高出力は133kW(180ps)、最大トルクは430Nmと、それほど強烈なスペックを持っているわけではない。それでも4WD技術が優れているからこそ、強力なトラクションを生み出せるのだろう。
 三菱自動車は技術支援する「チーム三菱ラリーアート」が11月に開催されるアジアクロスカントリー・ラリーに参戦することを発表した。

2002年のダカール・ラリーで、増岡浩氏のドライブによって優勝を果たしたパジェロ・スーパープロダクション仕様。ベースは3ドア(ショート)で、レース車両の全長は4110mm。ルーフ/ドア/フェンダーはカーボン製で軽量化を実現。エンジンは3.5リッター・V6を専用チューンしている

 

チームの総監督を務めるダカール・ラリーを2連覇した経験を持つ増岡浩氏は「今回の参戦は、三菱のモータースポーツブランド、〈ラリーアート〉復活の第一歩となります。トライトンはアジア地域での主力車種ですので、このクロスカントリーラリーでいい結果を残すことは、アジアでの販売戦略では重要になります。いきなり大風呂敷を広げることはできないのですが、これを足がかりにして、少しずつラリーアート・ブランドを盛り上げていきたいと考えています」とコメントしてくれた。

デリカ:D5はミニバンながら4WDロックモードを設定し、悪路走行や雪道などの滑りやすい路面でも優れた走破性を実現。今回の試乗はこの4WDロックモードで走ったが、雨でぬかるんだ道でも高いトラクションを発揮し安心して走れた

 なお、この日は、アウトランダーPHEVとデリカD:5でオフロードコースを試乗することができた。土砂降りの雨の中、モーグルのコースを走るのは最初は不安だったが、どちらも巧みなトラクション制御で、苦もなくコブ山をクリアしていく。最後は楽しくステアリングを握ることができた。
 雨のオフロードという過酷な環境下だったからこそ、三菱4WDの悪路走破性の高さを改めて知ることができた。

アウトランダーは6種類のドライブモードが選択できるが、今回は「マッド(ぬかるんだ道や深雪などで走破性を高める)」をセレクト。写真のようなモーグルで1輪が浮いてしまうような状況でも、タイヤのスリップ率を最適化して高い走破性を披露

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