全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦富士の決勝レースが、7月14日に静岡県の富士スピードウェイで行われ、トヨタ勢はルーキー、坪井 翔( JMS P.MU / CERUMO・INGING)が自身初となる2位表彰台を獲得。3位にはニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S)が入り、10番手スタートの中嶋 一貴(VANTELIN TEAM TOM'S)が5位、19番手とほぼ最後尾から猛烈な追い上げを見せた小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)が6位フィニッシュを果たした。優勝を飾ったのは、アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)だった。
▲初の2位表彰台を獲得した坪井翔選手(JMS P.MU / CERUMO・INGING:左)1位アレックス・パロウ選手と中嶋悟総監督(TCS NAKAJIMA RACING:中央)3位ニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM'S:右)
■予選 ヘビーウェット、難しいコンディションの中コースへ
今季より新型車両"SF19"で戦われているスーパーフォーミュラ。全7戦で争われるシーズンも早くも折り返しを迎えた。第4戦の舞台となるのは長いストレートが特徴の富士スピードウェイ。今季のスーパーフォーミュラは、ルーキーや海外勢とベテラン勢による、誰が勝つか全く分からない混戦が開幕から続いており、SF19での初レースとなる富士大会にも注目が集まった。
▲トヨタ勢の中で予選最上位を獲得した坪井翔選手(JMS P.MU / CERUMO・INGING)
12日(金)と 13日(土)の午前中、予選に先立って行われたフリー走行は、曇り空で7月としては低い気温ながらもドライコンディションで実施された。しかし、昼過ぎの併催レース、全日本F3決勝が始まる頃にはぱらぱらと雨が落ちてきて、スーパーフォーミュラの予選開始時には路面はほぼウェットコンディション。水煙が立つほどではないものの、天候と路面がどう変化していくのか、各チーム頭を悩ませる中難しい予選がスタートした。
午後2時45分、気温22度、路面温度24度というコンディションで、ノックアウト方式の予選Q1(20分間)が開始。しかし、 始まって2分少々、まだ誰もアタックに入っていない時点でパトリシオ・オワード(TEAM MUGEN)がセクター3でスピンを喫しコース上にストップ。セッションは赤旗中断となり、午後3時より残り20分間で仕切り直しとなった。
中断中に雨はやや強さを増し、走行車両からは水煙も上がるようになったが、その後は小康状態に。この変化するコンディションにセッティングを合わせられたかどうかによって各チーム明暗が分かれた。 上手く合わせてきたのは石浦宏明(JMS P.MU / CERUMO・INGING)と坪井でそれぞれ3、6 番手。午前中のフリー走行でトップタイムをマークするなど好調なキャシディが5番手、中嶋が9番手でトムス勢も2台がQ2進出した。
▲予選を走行する関口雄飛選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は5番手につけたが、チームメイトの平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) はタイムが伸びず14番手。大嶋和也(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)は11番手でQ2進出を決めたものの、チームメイトのアーテム・マルケロフ(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)は17番手敗退となった。
Q1の折り返しを迎える頃には雨足が少し強くなったが、セッション後半になるとQ2進出をかけた2度目のアタックが始まった。しかし各車アタックを行うものの、雨の影響もあってあまり大きなタイムの伸びは見られず。国本雄資(KONDO RACING)、山下健太(KONDO RACING)の2台が13、18番手。前戦SUGOで 2位表彰台を獲得した小林はまさかの実質最後尾(1台ノータイム)19番手でQ1敗退となってしまった。
午後3時半から開始されたQ2では、まず計測3周目に石浦が好タイムをマークすると、これを関口がかわし、トヨタ勢の1-2に。上位8台の進出ラインは終盤目まぐるしくタイムが塗り替えられる展開となり、キャシディが5番手タイムをマークしたことでチームメイトの中嶋がはじき出され、中嶋は10番手でグリッド確定。坪井が6番手、最後の最後に8番手に滑り込んだ大嶋までの5台がQ3へ進出を決めた。
▲予選に向け準備を進めるニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM'S)
午後3時47分からのQ3は、更に雨量が増え、各車から水煙が上がるようになっていく状況。ここで、Q2からタイヤ交換無しで臨んだ坪井が計測2周目でトップタイムをマーク。各車このタイムを上回ることが出来ないままセッションが進んでいき、坪井が初のポールポジションかと思われたが、終盤アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)が1分39秒167を記録して僅かに上回り、坪井は自己最高位タイとなる最前列2番手グリッドを獲得。第2戦オートポリスに続いてのフロントロースタートとなった。関口が3番手、キャシディが5番手、石浦が6番手、大嶋が7番手から決勝に臨む。
■決勝 アレックス・パロウが独走劇でルーキー初優勝 坪井翔が2位表彰台を獲得
14日(日)は朝からの強い雨は一旦止み、サポートレースのTCRジャパンが行われている頃には少しずつ路面も乾き始めた。そのためウォームアップ走行時には、スリックタイヤを装着するドライバーもいたのだったが、スタート前のグリッドウォーク中に再び降りだした雨が再び路面を濡らした。スタート時にはヘビーウェットコンディションになってしまった。
▲決勝、スタートグリッドに並ぶ坪井翔選手(JMS P.MU / CERUMO・INGING)
午後1時45分、セーフティカーの先導でレースはスタートが切られた。 レースは3周のセーフティカーランを経て、 4周目に本格戦が開始。レインタイヤ装着によりタイヤ交換の義務はなくなり、また、燃料消費もドライコンディションに比べればやや抑えられることやセーフティカー先導の周回も考慮し、多くのチームがノーピット作戦を選択。ハイスピードで走る車両が巻き上げる高い水煙で視界が遮られ、燃料消費も抑えなくてはならない状況で、PPスタートのパロウは後続とのギャップをどんどん広げていった。2位の坪井、3位関口、4位キャシディらの上位勢がそれに続き、周回毎にギャップが開き、順位は膠着状態となった。
▲2位を走る坪井翔選手(JMS P.MU / CERUMO・INGING)のレース模様
最も勢いある走りを見せたのは、小林可夢偉だった。19番手スタートの小林が水煙をものともせずに前車を1 秒以内の差で追撃。特に小林の追い上げは目覚ましく、次々に前車をパスし、18周目には11位へとポジションを上げた。 小林は更にポジションを上げていき、36周目には中嶋に続く8位へ浮上。中嶋と小林は、ずっと1秒ほどの差で前車を攻め続けていた6位の石浦に追いついた。
▲19番グリットから決勝で猛追を見せる小林可夢偉選手(carrozzeria Team KCMG)
レースは後半戦に入り、予定されていた55周を迎える前に規定の95分間で終わることが確実となり、燃料をセーブしていた車両も追い上げを開始。粘り強く2位を走り続ける坪井に、関口とキャシディが徐々に差を詰めていった。 しかし、3位走行の関口は、43周を終えたところで給油のためにピットイン。これでキャシディが3位へポジションを上げ、坪井との差を詰めて行った。 関口の後退によりその後方の順位争いはライバルの後方で、石浦、中嶋、小林が激しい接近戦を展開した。
▲決勝で3位表彰台を獲得したニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM'S)
レースは95分の規定により、53周で終了。このチェッカーを最初にくぐったのは、坪井に13秒余りの差をつけて独走となったパロウ。TCS NAKAJIMA RACINGにとっては、2010年開幕戦での小暮卓史以来、9年ぶりの優勝を果たした。
坪井はキャシディの猛攻を凌ぎ切り、2位でチェッカーを受け、デビュー4戦目にし て初の表彰台を獲得した。キャシディが3位。 その後方の争いは、中嶋が5位、小林が6位。小林は19番手スタートから13台抜きの入賞。石浦が7位、給油ピットでポジションを落としながらも関口が8位に入りポイント獲得を果たした。 ドライバーズランキングでは、 初優勝を果たしたパロウがランキング3位、坪井がランキング4位に浮上した。
▲決勝2位の成績を収めた坪井翔選手(JMS P.MU / CERUMO・INGING)
■JMS P.MU / CERUMO・INGING 39号車 ドライバー 坪井 翔 コメント
優勝できなかったのは悔しいですが、正直開幕3戦まではあまり良いレースが出来なかったので、今回は予選から決勝まですごく良いレースが出来、しっかり表彰台に乗ることが出来たので、そういった意味では内容には満足しています。レース中は水しぶきがものすごくて何も見えず、燃費もかなり気にしなくてはならなかったので、前に追いつける気配はありませんでした。最後はニ ック選手がものすごい勢いで追いついてきたので、厳しかったんですが、なんとか燃料をセーブしながらも、2位を守って走り切れて良かったです。
■VANTELIN TEAM TOM'S 37号車 ドライバー ニック・キャシディ コメント
とても難しい状況でのレースでしたが、3位という結果には満足しています。燃料が厳しく、前の2台に追いつくのは難しかったでしょう。チームとの無線でのコミュニケーションはとても良く、きちんとレースを組み立てられました。しかしそれでも燃料を計算しながらのレースとなり、レース周回が短くなるとわかった後半は100%で追い上げられましたが、そこまででした。
次戦のスーパーフォーミュラ第5戦は8月17日、18日に栃木県のツインリンクもてぎで開催される。