TOYOTA GAZOO Racingは、その歴史の一端を担ってきたTS050 HYBRIDと共に、シリーズチャンピオン防衛とル・マン24時間レース3連覇を目指し、FIA世界耐久選手権(WEC)2019-2020年シーズンに挑む。
WECの2019-2020年シーズンは全8戦で争われるが、今週末のスペイン、バルセロナで行われるプロローグテストが公式な幕開けとなる。今季は2016年以来、WECの歴史に名を刻んだTS050 HYBRIDにとって最後のシーズンとなる。
TS050 HYBRIDデビューの年、2016年のル・マン24時間レースは、残り1周でのトラブルによりまさかのリタイヤ。翌2017年は、小林 可夢偉が圧倒的なタイムでポールポジションを獲得し、マイク・コンウェイがレース中のコースレコードを更新する速さを見せたものの、勝利は叶なかった。2018-2019年「スーパーシーズン」として行われた昨シーズン、2018年のル・マン24時間レースで、トヨタは念願の初優勝を遂げることが出来た。そして、翌年の2019年のル・マンもトヨタは再び1-2フィニッシュを果たし、チームとドライバーの両シリーズチャンピオンを獲得した。トヨタのモータースポーツの歴史に名を刻んだ、4輪駆動、最高出力1000馬力を誇るTS050HYBRIDは空力性能改善、及びさらなる信頼性の向上を得て2019-2020年シーズンに臨む。
2台体制のTS050 HYBRIDのドライバーラインナップについては、7号車は昨年と変わらず、マイク・コンウェイ、小林 可夢偉、ホセ・マリア・ロペスの3名。
8号車は世界チャンピオンとなったセバスチャン・ブエミと中嶋 一貴の2人に、2017年のル・マン勝者で、かつWECチャンピオンであるブレンドン・ハートレーが加わる。また、テスト兼リザーブドライバーとしてチームに加入したトーマス・ローランは、同時にシグナテック・アルパインチームからLMP2クラスに参戦することによりさらなる経験を積んでいく。
TS050 HYBRIDにとって最後のシーズンは、開幕戦となる9月1日のシルバーストーン4時間レースを皮切りに4大陸を巡る、全8戦、計66時間の戦いとなる。シリーズは、富士スピードウェイ、アメリカのセブリング、ベルギーのスパ・フランコルシャン、といった伝統のコースを経て、来年の6月13日~14日のル・マン24時間レースで最終戦を迎える。
▲TS050 HYBRID
■村田 久武 TOYOTA GAZOO Racing WECチーム代表
先月のル・マン24時間レース優勝からまだ日が浅いですが、ワールドチャンピオンとして迎えるWEC新シーズンが待ち遠しいです。今シーズンはLMP1ハイブリッド規定の最後となります。それは同時にTS050 HYBRIDにとっても最後であることを意味します。TS050 HYBRIDは多くの勝利を収めましたが、博物館に行く前に、それをさらに積み重ねることが出来れば、と願っています。チームの最大の目標はル・マンの3連覇を果たすことです。それが2015年より、設計、開発、製造、及びレース運営に関わってきたチーム全員への贈り物になると思っています。TS050 HYBRIDと共にチームは成長して強くなり、今は活力に満ちています。次世代ハイパーカーの準備も並行して進めていますが、前年の覇者として臨む今シーズンも挑戦を続け、皆様に良いレースをお見せしたいと思っています。
■パスカル・バセロン テクニカルディレクター
今季向けのTS050 HYBRIDに対しては、昨シーズンから大きな変更は行なっていません。2016年のTS050 HYBRIDデビュー以来、毎シーズン、開発を進めてきましたが、今シーズンへの変更は細かな部分の最適化とさらなる信頼性向上です。目に見える変更は空力パッケージで、それ以外は信頼性向上のための細かい変更に留まっています。昨シーズンのTS050 HYBRIDは最速で、それは確かに結果に現れています。しかし、ライバル達も開発を続けており、2018年と2019年のル・マンを比べるとその車両性能が大きく伸びたことが分かります。ライバルたちの卓越した開発能力を考えると、更に性能が向上することは間違いありません。ですから我々も開発を止めるわけにはいきません。
■小林 可夢偉(7号車)
つい先日ル・マンを終えたばかりのような感覚なのに、このプロローグでもう新たなシーズンが始まってしまうのかという思いです。昨シーズンはル・マン勝利まであと一歩でした。全てが順調に見えても、厳しいレースではドラマが起こります。TS050 HYBRID 7号車のクルー全員はル・マンでの勝利を目指し攻め続けます。昨シーズンは8号車との僅差のバトルを繰り広げてきましたし、今年も同様の戦いになると期待しています。7号車、8号車共に経験豊富なドライバーが揃っているので、今シーズンもエキサイティングなレースになるでしょう。
■マイク・コンウェイ(7号車)
昨シーズン最終戦のル・マンが終わったときから新しいシーズン開幕を楽しみにしてきました。レースの現場に戻り、また新たなチャレンジに臨めるのは素晴らしいことです。今季はTS050 HYBRIDにとって最後となる特別なシーズンです。幸運にも私はデビュー当時からTS050 HYBRIDでレースし、とてもよい経験をしてきました。特に、ル・マンをこの車で走るのは本当に最高です。TS050 HYBRIDで最後のシーズンを戦うために私たちは努力を続けてきました。7号車のクルー全員でル・マン勝利を目指します。
■ホセ・マリア・ロペス(7号車)
私の目標は、マイク、可夢偉と共に多くのレースで勝利しシリーズチャンピオンになること、そしてもちろんル・マンでの勝利です。今シーズンはTS050 HYBRIDにとって最後のシーズンということで、複雑な気分です。また新たな2020-2021年レギュレーションはとてもエキサイティングで、他のマニュファクチャラーと再び戦えるのが楽しみです。しかしながらTS050 HYBRIDのダウンフォースやスピード、パワーは最高ですし、このような素晴らしい車でレースが出来たのは幸運だったといつか言う日が必ず来るでしょう。レース中は毎周回、そして全ての瞬間を楽しみ、TS050 HYBRID最後のシーズンを楽しみたいと思います。
■中嶋 一貴(8号車)
世界チャンピオンとしてシーズンを迎えるのは素敵な気分です。目標はTS050 HYBRIDの最後のシーズンにタイトルを防衛することです。TS050 HYBRIDで長きにわたってレースを戦ってきて、多くの特別な瞬間を味わってきただけに、別れは残念です。しかし同時に、新しいレースカーでの挑戦はとてもエキサイティングなものになるでしょう。WECを新しいハイパーカーで戦うのが今から楽しみです。また今年も簡単なシーズンではないでしょう。7号車は最強のライバルとして立ちはだかるでしょうし、他のLMP1車両からの挑戦も予想されるので、エキサイティングなシーズンになるのは間違いありません。
■セバスチャン・ブエミ(8号車)
ブレンドンが加わる今シーズンは新たなチャレンジになります。彼とはずっと友人で、一貴と私のチームに彼が加わることをうれしく思います。彼がチームを家族のように感じられるようにしたいですし、共に勝利を重ねて行ければ、と思っています。私たちはTS050 HYBRIDでずっとレースを戦ってきました。そんな時間も来年6月のル・マンでエンジンを止めた瞬間に終わると思うと、その時はすごく感慨深いものになると思います。今季の全ての瞬間を楽しみたいと思いますし、新シーズンスタートが待ちきれません。
■ブレンドン・ハートレー(8号車)
ル・マンを出場せずにただ見ているのは少し辛い時間でしたが、新しいチームに溶け込むための良い機会でもありました。私は初めて出場した2012年からル・マンが大好きでしたが、2年間出場出来なかったので、戻れるのを心待ちにしていました。ル・マンのテスト以来、TS050 HYBRIDでの初めての本格的な実走行テストを行いましたが、既にTS050 HYBRIDに慣れ、更なるスピードアップに挑んでいます。私は常に、得られた結果よりも、自分がどれだけベストを尽くしたか、を重視します。もちろんシリーズチャンピオンやル・マンで勝利できたら最高です。
■トーマス・ローラン(テスト兼リザーブドライバー)
私にとっては、TOYOTA GAZOO Racingの一員でありながらもLMP2クラスにも出場するという、とても忙しいシーズンになると思います。トヨタのスタッフとの仕事を楽しんでいますし、TS050 HYBRIDという素晴らしいクルマを学んでいくのはいい経験で、運転するのがいつも楽しみです。テストの時間は非常に限られていますが、シミュレータでのセッションも多くこなしており、経験豊富な他のドライバーとの共同作業も、私自身のドライバーとしての成長にも役立つと思っています。忙しく、有意義なシーズンになると思いますので、とても楽しみです。
■2019-2020 FIA世界耐久選手権(WEC)カレンダー
2019年9月1日 シルバーストーン4時間
2019年10月6日 富士6時間
2019年11月10日 上海4時間
2019年12月14日 バーレーン8時間
2020年2月1日 サンパウロ6時間
2020年3月20日 セブリング1000マイル
2020年5月2日 スパ6時間
2020年6月13-14日 ル・マン24時間