日本のモータースポーツのグラスルーツ「ロードスターレース」とは?参戦車両NR-Aについて迫る!

 マツダは、草の根のモータースポーツカテゴリにおいて一翼を担う存在でもある。今回は6月16日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されたマツダファン・エンデュランス (マツ耐)と、ロードスター・パーティレースを踏まえながら、マツダのモータースポーツのベース車両「ロードスターNR-A」について注目してみたい。

マツダ ロードスター NR-A

▲マツダ ロードスター NR-A

 モータースポーツの楽しみ方は大きく分けて2つに分かれる。レースを「観戦」するか「参加」して楽しむかだ。

 だが、いざ実際に参加するとなると、費用面の問題や、始め方が分からないといったハードルの高さが課題になってくる。

 そんな中でマツダは、多くの人にモータースポーツを楽しんでもらいたいという思いで、比較的兼価に、ドライバー自らがステアリングを握って、クルマを操る楽しさ、レースの醍醐味を楽しめるカテゴリーとして「マツダグラスルーツカテゴリー」を開催している。

ロードスター・パーティーレース

▲イコールコンディションで争われるロードスター・パーティーレースは、伝統のレースカテゴリだ

 「マツダグラスルーツカテゴリー」は、マツダ車でモータースポーツを楽しむ人のための参加型カテゴリー群で、サーキットでの速さを磨くタイムトライアル、気の合う仲間と挑む耐久レース (マツダファン・エンデュランス/マツ耐)、イコールコンディションでのスプリントレースを楽しむパーティレースと、マツダ車の魅力をサーキットで堪能するためのバラエティ豊かなカテゴリーを用意している。

NB ROADSTER NR-A

▲NR-Aモデルは、2001年のNBロードスターから存在。レースのための「走り」のスペックを標準装備していた

 中でも「ロードスター・パーティーレース」は、長い歴史を持つワンメイクレースシリーズだ。

 参加者全員が同じ条件で戦うイコールコンディションで争われるJAF公認レースとして、2002年から開催。ライトウェイトスポーツを操る楽しさや、ドライバーの技量が勝敗を左右するレースとしての特徴を持ち、レース中に接触するとお互いにノーポイントになってしまうという独自ルールが採用され、マナーを重んじるジェントルマンのためのレースとして人気を博している。

 累計の参加者は延べ7100名以上(2023年シーズン終了時点)にも達している。

NDロードスター NR-A パーティレース仕様

▲NDロードスター NR-A パーティレース仕様

 参戦車両にはマツダ・ロードスターのモータースポーツグレード「NR-A」が用いられる。

 NR-Aは、サーキット走行を想定して、車高調整機能付きビルシュタイン社製ダンパーや、大容量ラジエター、大径ブレーキ、強化LSD(トルクセンシング式スーパーLSD)、強化ドライブシャフトなどを採用して走りを追求した部品を標準装備。

 一方で、車両重量の削減や価格を抑えるため、ハイスペックなグレードに見られるような一部の快適装備は省かれている。また、パーティレース指定部品として、6点式ロールバーが用意されている。

NDロードスター NR-A パーティレース仕様

▲パーティレースはNR-A車両に安全装備を装着するだけで参加できる

 パーティレース車両はナンバー付きであり、サーキットに向かい、レースを終えて、家に帰るまでをロードスター1台で対応できる。

 まさに、日常での利便性を極力損なわず、廉価な車両で平等な条件の下に、オープンFRライトウェイトスポーツの真髄を堪能できるコンセプトを体現するクルマだ。

 外観面での違いは、JAF 国内競技車両規則に則った牽引フックの装着くらいで、市販車と相違はない。牽引フックを取り外せば道路運送車両の保安基準内となり一般道も走行可能だ。

レース車両には指定部品のロールバーや、5点式以上のシートベルトの装着が義務付けられる

▲レース車両には指定部品のロールバーや、5点式以上のシートベルトの装着が義務付けられる

 インテリアは、指定部品の6点式ロールケージの装着が義務付けられる。なお、乗員保護のため頭部等に接触する恐れのあるロールケージの部位は、緩衝材で覆われている。

 シートは、サーキット走行の強いGがかかる場面でも体をホールドできるようにバケットシートに変更され、5点式以上のシートベルトが義務付けられている。

ブレーキ

▲ブレーキパッドは変更され、指定部品の青いエンドレス製ブレーキパッドを装着

 ブレーキパッドは指定部品の装着が義務付けられる。ブレーキへの負担が大きいモビリティリゾートもてぎでの開催時は、専用スペックのブレーキパッドの装着が推奨されている。

 また、タイヤはブリヂストンのカジュアルスポーツタイヤ「ポテンザ アドレナリン RE004」が指定される。タイヤサイズは195/50R16だ。

サーキット走行するロードスター

▲2024年ロードスター・パーティレースIII in もてぎにカーアンドドライバー代表山本善隆が参戦!結果は29番手でフィニッシュ

 「ロードスター・パーティーレースIII」は、スポーツランドSUGO(宮城県)で開催される北日本シリーズ、筑波サーキット(茨城県)で開催される東日本シリーズ、岡山国際サーキットで開催される西日本シリーズの地域シリーズと、国内各地の主要なサーキットを転戦してJAF選手権タイトルとマツダカップを目指す「ジャパンツアーシリーズ」が開催されている。

マツダの参加型モータースポーツの活動について

▲マツダの参加型モータースポーツの活動について

 2023年からマツダは、参加型モータースポーツをいっそう盛り上げるため、2つの「倶楽部MAZDA SPIRIT RACINGチャレンジプログラム」を実施中だ。

 チャレンジプログラムの1つ「スーパー耐久レースへの道」では、パーティレース出場の成績優秀者に日本最大の耐久レース・シリーズ「スーパー耐久シリーズ」にチャレンジできる権利が与えられており、レーシングドライバーとしてのキャリアをステップアップできる道が開かれている。

 2024年にスーパー耐久シリーズに参戦する120号車「倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」は、このプログラムによって選ばれたドライバーたちが、新たな時代のモータースポーツ文化の担い手になってもらうことを狙いに、ステアリングを握っている。

倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER

▲スーパー耐久ST-5クラスに参戦する120号車 倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER

 6月16日には、栃木県のモビリティリゾートもてぎで、2024 ロードスターパーティレースⅢ第3戦と、マツダファン・エンデュランス (マツ耐)、マツダファン・サーキットトライアルが開催され、パーティレースには30台が、マツ耐には58台、サーキットトライアルには30台ものクルマが参戦。もてぎのパドックはマツダ車で埋め尽くされた。

「MAZDA SPIRIT RACINGチャレンジプログラム~バーチャルからリアルへの道~」2期生

▲「MAZDA SPIRIT RACINGチャレンジプログラム~バーチャルからリアルへの道~」2期生

 この日、マツダファンエンデュランス(マツ耐)に出場し、リアルレーサーとして初陣を飾った4人のドライバーたちがいた。

 この4人は、チャレンジプログラムの2つ目、「バーチャルからリアルへの道」と題し、eSPORTSから実際のレースへの参加をサポートするチャレンジプログラムによって選出された2期生のドライバー達だ。

倶楽部MAZDA SPIRIT RACINGチャレンジプログラム

▲倶楽部MAZDA SPIRIT RACINGチャレンジプログラム

 マツダは、2023年10月から12月にかけてPS5®、PS4®用ソフトウェア『グランツーリスモ7』を用いたeモータースポーツ大会「MAZDA SPIRIT RACING GT CUP 2023」を開催。大会には約7500人が参加し、その中から27人が選出されて実車によるサーキット走行を初めて体験したほか、そこから6人へと絞られ、今回のマツ耐参戦に至った。

 今回実戦レースデビューを飾ったのは、5号車が鍋谷泰輝選手と石水優夢選手。6号車は新木悠真選手と岩見瞭太朗選手が初レースとなり、当初エントリーしていた2期生の井上幸浩選手は実車によるトレーニングカリキュラムに参加できなかったため、今回は参戦を見合わせ、サポート役としてチームに帯同した。

マツダファン・エンデュランス

▲マツダファン・エンデュランス (マツ耐)栃木ラウンドには58台ものマシンが集結。150分のバトルを繰り広げた

 もてぎで実際にマツ耐に出場するドライバー達の顔ぶれを見ると、選出された4人以外の、27人に選ばれた人達の姿も見受けられた。話を聞くとスカウトされて出場を果たしているそうだ。

 皆表情が明るく、ドライビングスキルを存分に発揮している姿を見て、マツダの掲げている「バーチャルからリアルへの道」というテーマは成功しているように感じた。

kagerouP097さんのデザインしたリバリーが採用された6号車 バーチヤルtoロードスターV

▲6号車 バーチヤルtoロードスターV

 参戦車両のカラーリングは、グランツーリスモ7に登場するプレイヤーが車の外観を自分好みにデザインできる「リバリーエディター」の機能を活用したデザインコンテストで選ばれた2作品が採用された。

no_title_sigmaさんのデザインしたリバリーが採用された6号車 バーチヤルtoロードスターV

▲5号車 バーチヤルtoロードスターR

 グリーンのボディカラーの6号車「バーチヤルtoロードスターV」のデザインは、kagerouP097さんが担当。レッドのボディカラーの5号車「バーチヤルtoロードスターR」は、no_title_sigmaさんが担当した。2人には自身がデザインした車両でのサーキット同乗走行体験が提供された。

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