【モータースポーツ特集】女性ドライバーの走り熱い! KYOJO CUPに注目を

実力拮抗の戦いは最終ラップまで目が離せない

KYOJO CUPはドライバーのトークショー開催などファンとの接点を大切にしている。写真右の佐藤こころ選手は16歳の女子高生レーサーとして注目されている

 2017年から始まった女性だけのレース“KYOJO CUP”が、いま人気急上昇中だ。

 KYOJO CUPは、富士スピードウェイを舞台に、女性ドライバー=競争女子だけの “ガチンコ勝負”が繰り広げられるワンメイクレースイベントで、今年で8シーズン目を迎える。

開幕戦で優勝した翁長実希選手。翁長選手は2022年の年間チャンピオンで、23年はシリーズ2位、全日本カートEV部門の年間チャンピオン(女性初)も獲得している実力者

 近年はエントリー台数も増加傾向にあり、2024年シーズン開幕戦には28台ものマシンが勢ぞろいした。

 KYOJO CUPは、何よりレースのレベルが非常に高く、毎戦繰り広げられるテールトゥノーズのバトルはスリリングそのもの。手に汗をにぎってしまう。

KYOJO CUPで上位に入る選手は予選アタックで2分を切るタイムを刻む。開幕戦は17号車の斎藤選手がポールポジションを獲得し、決勝レースもリード。だが、最終周で翁長選手にトップを奪われた

 1レースの優勝賞金が120万円と高額で、成績優秀者には、アメリカでレース参戦できる権利を提供するスカラシップ制度など賞典も充実している。

 本格的なレースながら、KYOJO CUPは比較的リーズナブルに参戦できるカテゴリということもあり、さまざまなバックグラウンドを持った選手たちが出場している。

繊細な操作が要求されるマシンで多彩な選⼿が競い合う

 たとえば、沖縄初の女性プロレーサーで抜群のバトルセンスで選手権をリードする翁長実希選手。小さいころからカートで腕を磨いてきた新進気鋭の斎藤愛未選手や富下李央菜選手、元・陸上競技の短距離選⼿で普段はトラックドライバーをしながらレースに参戦している清水愛選手など、選手は16歳の高校生ドライバーから40代、50代で10年以上のレースキャリアをもつベテラン勢まで実に多種多様だ。

 参戦車両として使用されるのは、VITA CLUB製レーシングカー、VITA-01である。2代目トヨタ・ヴィッツのパワートレーンをミドシップに搭載(MR)、出力は約110㎰と控えめだが、車両重量は約600㎏と超軽量でドライバビリティに優れている。最高速は200㎞/hを超える。  筆者もサーキットでVITA-01をドライビングしたことがあるのだが、 フォーミュラカーでもなく、ハコ車(ツーリングカー)でもない。そのちょうど中間といった乗り味のマシンだった。

 それほど速いマシンではないが、コーナリングはクイックで動きが繊細なので、ドライバーのミスがダイレクトにタイムに影響してしまう。レーシングカーとしてはそこまでハイグリップではないタイヤを履いているのも一因だ。

 VITA-01の場合は自分の腕でどうにかカバーしなければならないという、繊細に運転しながらも、大胆さが必要とされる奥深いマシンといったといった点が特徴だ。読者の方にご説明するなら、一般車ではロータス・エリーゼに一番感覚が近いかもしれない。

富士スピードウェイの特徴を活かしたレース展開

 KYOJO CUPはワンメイクレースという特性上、全車がイコールコンディションに近いといえる。ドライバーの腕がためされるカテゴリーだ。また、レース中の接触に対してはペナルティが設定されており、クリーンで安全なレースが求められる。競走相手をプッシュしてでも先行したい、という走り方は厳重に禁止されている。この点もレースのスポーツ性、アスリート性を高めている要素と考えていいだろう。

 レースが繰り広げられる富士スピードウェイは約1.5㎞の長いストレートを持つ高速サーキットという関係もあり、スリップストリームによる効果が受けやすく、抜きつ抜かれつのバトルが至るところで繰り広げられる。ドライバーがどのコーナーでオーバーテイクを狙っているのか、プレッシャーをかけているだけなのかがよくわかるレース展開が楽しめる。

 5月12日に開催されたKYOJO CUP開幕戦では、最終ラップでオーバーテイクを決めた2022年のチャンピオンでもある114号車 Car Beauty Pro RSS VITAの翁長実希選手が1位を獲得。ポールポジションからスタートした17号車 Team M 岡部自動車 D.D.R. VITAの斎藤愛未選手は2位。3位は86号車 Dr. Dry VITAの下野璃央選手が獲得した。

 本大会のオーガナイザーを務めるレーシングドライバー関谷正徳氏は将来的にKYOJO CUPを「女性のスーパーフォーミュラ」という位置づけに持っていきたいと語っている。  現在、2025年に向けて、コックピット保護装置(ヘイロー)を備えたフォーミュラカーの導入を考案中だという。詳細はまだ明かされていないが、楽しみだ。

7月20日発表された2025年シーズンのKYOJO CUP用マシン。オープンホイール・フォーミュラで、エンジンは1.4リッター

 2024年のKYOJO CUPは全戦が富士スピードウェイで開催される。次戦は7月19日に予選、7月20日に第2戦、翌日の7月21日に第3戦が行われ、国内のフォーミュラレースのトップカテゴリーに当たるスーパーフォーミュラと併催される。

 レースのもようはYoutubeでも配信される予定だが、現地でぜひ観戦してみてはいかがだろうか。

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