7月20日、21日に富士スピードウェイで開催されたKYOJO CUP第2戦と第3戦。「ELEVレーシングドリーム OS スハラ VITA」からKYOJO CUPに参戦した16歳レーシングドライバー佐藤こころ選手にフォーカスしたレポート第2弾をお届けする。
佐藤こころ選手は、現在16歳の高校生レーシングドライバーだ。自動車運転免許はまだ持っていないが、カートでの成績が認められ、四輪車のJAF公認国内競技に参加できる限定Aライセンスを取得。2024年はゼッケン76号車「ELEVレーシングドリーム OS スハラ VITA」でKYOJO CUPに参戦中だ。
筆者は佐藤こころ選手の新米メカニック兼エンジニアとして参加した。
7月19日の予選日、マシンにミッショントラブルが発生し、第2戦と第3戦と共に最後尾29番手スタートとなった。
前日19日の夜にはミッションの載せ替え作業が完了し、翌7月20日午前中に、トランスミッションの慣らし作業。各部の再調整などに時間を割き、お昼からの決勝レースに挑んだ。
レース前に実施されたグリッドウォークには、スーパーフォーミュラと併催されていることもあり、開幕戦よりも盛り上がりを見せていた。
佐藤選手には、パレードラップ中クルマをチェックしてもらったが問題なしとのこと。それを聞いてメカニックの立場としては少し安堵した。
「KYOJO CUP Rd.2」、13:00レースフォーメンションラップ開始。出走台数は29台。グリッド15順目最後尾からのスタートだ。
開幕戦で佐藤選手はスタンディングスタートに失敗したが、今回は上々。1コーナーまでに1台を抜くものの、その後行き場をなくし順位を戻す。
前方では、3コーナー目となるコカ・コーラコーナーで2台が接触しスピン。うまく回避しレースを継続した。
しかし、この2台の接触により1周せずにして、車両回収のためセーフティカーが導入される展開になった。
セーフティカー導入後、2週目の再びコカ・コーラコーナーで渋滞が発生。集団最後尾を走っていた佐藤選手は前のクルマを避けるため、コース外に飛び出してしまった。これがペナルティ審議対象になる。
5週目にセーフティーカーがコースを離れ再びグリーンフラッグ。前車のスリップストリームに入り1コーナーでインを差すとともに、他の車両のスピンも回避しつつ2つポジションアップ。その後も何台かのスピンをかわし、着実に順位を上げていく。
21位とスタートから9番手ポジションアップし、前方の集団に追いつきバトルを繰り返すものの、10週目に再びセーフティーカー導入。このままセーフティーカーに先導される形でゴールを迎えた。
Rd,2、レース後セーフティカー中のコースアウトについて審議が行われ、10秒ペナルティが加算され正式リザルトは23番手フィニッシュとなった。
■佐藤こころ選手 コメント
「今回のレースでは手応えはあまり感じませんでした。10ポジションupしていましたが、自分の力で抜けたのは4、5台で、SCが入り、そのままレース終了となりました。自分が納得できるレースができなかったので、不完全燃焼のまま終わってしまい、ペナルティも受けて凄く悔しい結果になりました。ペナルティに関しては、初めてのSCで焦ってしまい、先が見えないコーナーで加速をしたら、低速走行車両の列ができており、追突を回避したところ、コース外走行でペナルティを受けてしまいました。コース外走行をしてしまったコーナーが、クラッシュ車両の回収をしていた場所だったので、10秒ペナルティが加算されました。チームの方達に車を直してもらったから、いい結果を残したかったのに自分のミスでペナルティを受けて、 申し訳ない気持ちでいっぱいです。今後二度同じことを起こさないように気をつけます」
レース後、佐藤選手にヒヤリングすると、SC中の表示は気づいていたが、最後尾に近かったこともあり、前のクルマにおいて行かれないか心配で、ペースを維持することに集中しすぎていたこと。気持ちが先行してしまい渋滞に気づくのが遅れたこと、クラッシュした車両に目を向けていたことなどを整理した。
今回は運よく他車との接触はしなかったが、彼女自身にケガが及ぶことや、他のドライバーを危険にさらす可能性のあった行為なので、どうして起こってしまったのか、今後対策する際にはどうしたらいいかなどを時間をかけて話し合った。
翌7月21日日曜日。スーパーフォーミュラ決勝レースの1時間前にKYOJO CUP Rd.3が開催された。
予選日にトラブルのあったマシンだが、Rd.2を走った佐藤選手からマシンのフィーリングは上々とのコメントが挙がった。
日曜日午前中に、Rd.2でセーフティーカーの出動が多かったことや、セーフティカー中のペナルティの件もありエントラント全体の緊急ブリーフィングが実施された。
13:00、晴れ、路面温度47度。KYOJO CUP Rd.3 決勝レースフォーメーションラップが開始。Rd.3のグリッド順は19日予選のセカンドベストタイム順となるため佐藤選手は最後尾スタート。
レッドシグナルがブラックアウトし全車スタンディングスタート。クラッチの蹴りだしは上々でスタート成功。前方グリッドのマシンがエンジンストールしてしまうものの、全車が綺麗に車両を抜きながら、佐藤選手もワイドになった1コーナーに入っていく。
インからポジションアップをうかがうものの、ターンインを開始していた前方のマシンの右側面と、佐藤選手の左タイヤが接触してしまいダメージを追う。
この接触により、佐藤選手はステアリング・タイロッドを損傷。マシンがまっすぐ走らない状態となり、2コーナー内側にマシンを停めた。
■佐藤こころ選手 コメント
「Rd.2では自分が思うようなバトルできなくて悔しかったので、Rd.3では積極的に抜いていって、悔いの残らないレースをしたいという思いでレースに挑んでいました。早く前に行きたいという気持ちはもちろん持っていました。あともう少し冷静さがあればと悔やまれます」
レース後、悔し涙を流す姿を見て、ライターやカメラマンとしては、カメラを向けるべきなのだろうが、チームスタッフとしては写真に収めることはできなかった。
■佐藤こころ選手 コメント
「今回のレースは、私にとってすごく情けない結果となってしまいました。この結果をしっかり受け止め、失敗で終わらさずに次戦に活かしたいです。次戦はもっと見応えのある、自分の納得のいくレースができるよう頑張ります!応援よろしくお願いします」
次戦KYOJO CUP Rd.4は、富士スピードウェイで8月18日 (日)に2024富士チャンピオンレースシリーズ 第3戦内で開催される。佐藤選手の活躍を期待する。
■佐藤こころさん プロフィール
佐藤こころ(さとう・こころ) 、2008年3月4日生まれ、A型、16歳。兵庫県出身。4歳からレースを開始し、2023年には全日本カートのFS125で年間ランキング5位を獲得。限定Aライセンスを取得しKYOJO CUPに76号車「ELEVレーシングドリーム OS スハラ VITA」より参戦中。