メルセデスAMGが往年の300SLをモチーフにした初のロードカー、SLS(専用設計、専用デザイン)を発表したとき、ファンや関係者は「AMGの悲願が達成された」と喜んだ。あれから10年。その間、AMGオリジナルモデルのGT(2ドアクーペ&ロードスター)が2014年に登場。同時にメルセデス・ベンツ各車をベースとする高性能グレードとして、AMGモデルのラインアップが拡充している。AMGは、いま元気だ。
AMG・GT4ドアクーペは、オリジナルモデル第3弾。AMGの勢いを象徴する存在だ。過去のSLSとGTは、専用のアルミスペースフレームを採用した完全フロントミッドシップ(前車軸の後方にエンジンを搭載)のFRモデルで、ピュアスポーツカーの領域にあった。だが、第3弾のGT4ドアクーペは、グループのモノコックボディを使っている。平たくいえば、EクラスAMGと共通項が多い。「Eクラスにアグレッシブなフロントマスクを無理やり付けた5ドアハッチバックだ」と口あしくいわれても、否定する言葉が見つからない。
ところが、実際に乗ってみると、その走りにはGTならではのテイストがはっきり感じられた。スポーツサルーンではなく4ドアスポーツカーとして新たな地平を開いたといって過言ではない。
試乗車はAMGパフォーマンスパッケージやAMGカーボンパッケージなど高価なオプションをふんだんに装着した最上級グレードの63S・4マチック+である。なお、AMGのEクラスと同様、63のほかに43や53といったグレードもある。
GT63Sのボディサイズは、全長×全幅×全高5050×1955×1445mm。E63S(同4995×1905×1460mm)と比べると、やや長く、ワイドで、少し低い。直接のライバルと思われるポルシェ・パナメーラとほぼ同じサイズ。不在となったCLSシューティングブレークのポジションを埋める、新たな実用スポーツカーをアピールするディメンションである。
注目は4リッター・V8ツインターボのパワースペックだ。E63S比で出力が25ps、トルクは50Nm増強され、639ps/900Nmを誇る。トランスミッションは9速のAMGスピードシフトMCT。
それにしても、街中ではよく目立つ。マットグレーという無彩色にもかかわらず、その迫力あるマスクとリア回り、なだらかな弧を描くルーフライン、そして5mを超える大柄なスタイルが、街行く人たちの視線を集める。
街中でのライドフィールはGTばりに剛直である。オプションの鍛造21インチホイールや専用バケットシートを装備するだけあって、いかにも固くフラットで、毎日気軽に乗りたい優しさとはほど遠い。MCTは、発進時に特有のショックを感じた。
速度を上げていくにつれ、走り味は変化した。足回りの固さが薄れ、フラット感だけが強調される。快適な、まさにGTカーに変貌する。EクラスやCLSクラスのテイストを残しつつも、いっそう豪華に仕立てられたダッシュボードを視界の一部に収めてのハイスピードクルージングは実に心地よい。充実した時間が流れていった。
もちろん、その気になってドライブモードをS+にセットし、強力なエンジンスペックを解放すれば、AMG開発陣がGTと命名した理由がわかる。ワイドトラック&ロングホイールベースゆえ、車体の挙動は把握しやすく、滑りやすい路面をやや強引に駆け上っても、車体は絶妙にコントロールできる。ハンドリングは十分スポーツカーといっていい。パナメーラにも対抗できる完成度だ。E63Sのマスク違いでないことは確か。さすがはニュルブルクリンク育ちの4ドアスポーツカーだと納得した。
価格=9SAT 2397万円
全長×全幅×全高=5050×1955×1445mm
ホイールベース=2950mm
車重=2150kg
乗車定員=5名
エンジン=3982cc・V8DOHC32Vツインターボ
最高出力=470kW(639ps)/5500~6500rpm
最大トルク=900Nm(91.8kgm)/2500~4500rpm
サスペンション=前後エアボディコントロール
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント265/40R20/リア295/35R20
駆動方式=4WD
最高速度=315km/h
0→100km/h加速=3.2秒
※デビュー●2019年2月 ※価格は消費税(10%)込み