日産自動車は10月23日、東京モーターショー2019において電気自動車のクロスオーバーコンセプトカー「アリア コンセプト(ARIYA Concept)」を世界初公開した。
▲日産アリア コンセプト 最新の先進技術を搭載したEVシステムに次世代のヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)とコネクテッドカー技術を採用する
今回発表されたアリア コンセプトは、最新の先進技術を搭載したEVシステムに次世代のヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)とコネクテッドカー技術を採用するという、"ニッサン インテリジェント モビリティ"の新しい象徴モデルの役割を担っている。まずパワートレインには、前後に高出力電動モーターを配置したツインモーター4輪制御システムを採用。瞬時に緻密なトルクコントロールが可能な電動モーターを前後に合計2基設置することによって、高次元の発進および加速性能を実現する。また、前後のモータートルクやステアリング、ブレーキなどを統合制御することによって、雪道やぬかるんだ道などの滑りやすい路面においても優れたトラクション性能を発揮。さらに、ドライバーの操作に応じて最適な駆動力コントロールとブレーキ制御を行うことで、ドライバーの意思通りのドライビングを具現化した。この統合制御技術は、エンジニアが「GT-R」に搭載しているATTESA E-TSや「エクストレイル」に搭載しているインテリジェント4×4などの開発から得たノウハウを基に新設計している。
▲パワートレインには前後に高出力電動モーターを配置したツインモーター4輪制御システムを採用。瞬時に緻密なトルクコントロールが可能な電動モーターを前後に合計2基設置することによって高次元の発進および加速性能を実現した
運転支援システムには、最先端の「プロパイロット2.0」を設定する。プロパイロット2.0は、高速道路の本線に合流してナビ連動ルート走行を開始すると、ルート上にある高速道路の出口までの走行を追越しや分岐などを含めて支援し、同一車線内でのハンズオフ走行が可能な先進システム。また、アリア コンセプトではプロパイロット2.0の作動時にインテリアのライトの色が切り替わり、ハンズオフ走行が可能になると室内空間にリラックスした雰囲気を創り出す機能を内蔵した。
クルマに乗っているときも乗っていないときも、シームレスに高度な機能を提供することもアリア コンセプトの特徴だ。まず"ドア ツー ドア ナビゲーション"は、スマートフォンで設定した目的地を車載のナビゲーションシステムと共有することで、乗車前はスマートフォン、乗車中は車載のナビゲーションシステム、降車後はスマートフォンによって乗車前後の徒歩ルートも含め、出発地点から最終目的地までシームレスにドライバーを案内する。次に、パーソナルな設定機能。ドライバーがアリア コンセプトに近づくとウェルカムライトが点灯し、自動的にロックが解錠され、シート位置やエアコンの設定などがスマートフォンに個人のプロフィルとして保存されたドライバーの好みの状態にセットされる。また、ドライバーのスケジュール管理ソフトとクルマの持つ情報を同期させることで、出発時間を予想して空調をコントロールするなど、すぐに快適な状態で出発できるよう準備する仕組みも採用した。3つめは"バーチャル パーソナル アシスタント(VPA)"。ドライバーがクルマに乗り込むとVPAがナビゲーションを開始し、自ら情報検索することなく、駐車場の情報や走行中に必要な情報を提供する。また、ルートの途中で友人をピックアップする場合は、友人のスマートフォンとクルマに搭載されたビデオチャット機能をリンクすることにより、友人がいる正確な位置を車載モニター上に表示する機能も内蔵した。4つめは"スマート ルート プランナー"。走行中に自動で充電スポットを見つけ、目的地に到着するまでの充電計画を提示する。さらに、充電する際にドライバーが充電スポットに近づくと充電口が自動で開錠され、鮮明な色で充電状況を表示する機能も設定した。ほかにも、スマートフォンや専用デバイスで操作してクルマを自動駐車させることができる "プロパイロット リモートパーキング"、EVのバッテリーに蓄電した電力を住居やオフィス、電力網に供給することなどによりEVを移動手段としてだけではなく生活の様々なシーンで役立てる"Nissan Energy(ニッサン エナジー)"連携、ナビゲーションシステムやユーザーインターフェースのグラフィック、クルマの走行キャラクター制御などを常に最新の状態に更新する"FOTA(ファームウェア オーバー ジ エアー)"などを導入している。
▲エクステリアはシンプルでありながら力強く、かつモダンな表現の"タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム"をデザインに反映し、"スリーク"や"シック"をキーワードに造形を仕立てた。全長4600×全幅1920×全高1630mm
エクステリアに関しては、シンプルでありながら力強く、かつモダンな表現の"タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム"をデザインに反映し、"スリーク"や"シック"をキーワードに造形を仕立てたことが訴求点だ。フロントセクションは、幅広いフェンダーや超極薄LEDヘッドライト、そして輝く日産エンブレムを特別にあつらえたシールドなど、随所に新しいデザインランゲージを採用。Vモーションシグネチャーが発光すると、シールドに組み込まれた幾何学模様がかすかに浮かび上がるアレンジも印象的である。一方、サイドビューは専用タイヤを履いた5本スポークの21インチ大径アルミホイールと、風を切り裂くような低くてスリークなルーフラインが特徴。そしてリア部は、傾斜の強いCピラーが筋肉質のリアデッキに自然に調和し、加えてボディ幅いっぱいにデザインされたテールランプや豊かな広がりのあるフェンダー、高い位置に取り付けたウィングなどによって、力強くかつ存在感あふれる後ろ姿を創出した。
外装色については、"彗星ブルー"と称するスペシャルなカラーを採用。遠くから見た時は深いブルーでマットな印象を与え、クルマに近づくと塗料に含まれる大きなガラスのフレークの効果により夜空を輝きながら流れる彗星のような無数の光の屈折が表面に映し出される。また、新しい1日を迎える太陽の色、さらに古くより日本の工芸品に取り入れられてきた銅をイメージした新カラーの"カッパー"をルーフラインやホイールに沿って配し、エクステリアに効果的なアクセントを加えた。
▲インストルメントパネルとドアパネルがシームレスにつながり、一体感のあるすっきりとしたダッシュボードまわりにはボタンやスイッチが未装備。アリア コンセプトを起動するとインストルメントパネルに柔らかな輝きを放つハプティック操作ボタンが表示される
内包するインテリアは、日常生活のなかで技術が精工な日本の職人技と自然に融合している"シームレス"を表現したことが特徴だ。インストルメントパネルとドアパネルがシームレスにつながり、一体感のあるすっきりとしたダッシュボードまわりにはボタンやスイッチが未装備。アリア コンセプトを起動すると、インストルメントパネルに柔らかな輝きを放つハプティック(触覚)操作ボタンが表示される。物理的なボタンやスイッチは、スタートボタンと12.3インチのディスプレイモニター用の操作ノブ、そしてエアコン操作ボタンのみで、これらはインストルメントパネル下部の木製部分に整然として配列した。
シートに関しては、超極薄フレームで構成した新デザインを採用。乗員を快適にサポートしながら、より広々とした室内空間と優れた視界を創出する。また、背面と座面にはパーコレーションレザー(孔のあいた革)を導入し、孔の下から覗く鮮やかなカッパー色のファブ リックによって美しさと深みを強調した。
なお、日産はアリア コンセプトを「日産EVの新しい世界の始まり」とアナウンスする。つまり、このモデルをコンセプトカーとして終わらせず、新世代の"ニッサン インテリジェント モビリティ"の具現化につなげることを表明したのだ。アリア コンセプトがどのように市販EVへと発展するのか、期待が膨らむところである。