スポーツカーを操る楽しさは何か? 7速MT+機械式LSDを装備した究極のアストンマーティン、ヴァンテージAMRの興奮度

アストンマーティン・ヴァンテージAMR 価格:7MT 14万9995ポンド(英国) 試乗記

_AMR_Vantage_SabiroBlue_034.JPGアストンマーティン・ヴァンテージAMR AMRは伊グラツィアーノ社製7速MT搭載 ブレーキはカーボンファイバー 車重は標準ヴァンテージ比95kg軽量

専用7速MT搭載。最新にして「古典派」のAMR登場!

 久しぶりに古典的ともいえるピュアスポーツカーに乗った。その名はアストンマーティン・ヴァンテージAMR。どこが古典的なのか? 最新ではないのか。答えはトランスミッションである。

 現在は、ヴァンテージを含むモンスター級スポーツカーでも2ペダルが主流だ。よくも悪くも、誰もが大パワーに触れられるようになった。アクセルを踏みすぎてクルマが暴れたら安定制御が作動し、それでもアクセルを踏み続ければ制御の下で突進する。乗りこなせるかどうかは別にして、強烈な性能領域を経験するのはたやすい。

 だが「スポーツカーを操る楽しさは、ほかにもあるだろう!?」という思想から、アストンマーティンは3ペダル、7速MTのヴァンテージAMRを開発。同時に、今後もMTを続ける方針を明言している。

 アストンマーティン・レーシングを意味するAMRの文字を背負ったヴァンテージAMRは、先行で200台が限定発売され、即完売した。今回の試乗車は、通常カタログモデルのAMRである。

 メカニズムのハイライトは、標準ヴァンテージの8速ATとEデフ(電子制御デファレンシャル)から、7速MTと機械式LSDへの変更。車重はカーボンブレーキなどの軽量効果で標準比95kgも軽く仕上がっている。

_AMR_Vantage_SabiroBlue_029.JPGスタイリングはレース活動の経験を生かした造形 優れた空力特性を誇る AMRのパワーウエイトレシオは2.94kg/ps

トップスピード314km/h! シフトパターンはモータースポーツ指向

 AMG製4リッターV8ツインターボエンジンは、アストンマーティンが排気系とエンジン特性のチューニングを行ったスペシャルユニットだ。スペックは510ps/6000rpm、625Nm/2000~5000rpmを発生する。7速MTでパフォーマンスを引き出すと、0~100km/h加速を4.0秒(8ATは3.6秒)で駆け抜け、最高速度は314km/hに達する。

 期待とともに試乗に向かった先は、ドイツのニュルブルクリンク。サーキット試乗という予想はあっけなく外れ、ニュルブルクリンクのAMRパフォーマンスセンターを拠点に、アウトバーンとカントリーロードで試乗した。もちろん走行速度域は高い。

 7速MTは左下が1速で、2と3、4と5、6と7速が縦に3列に並ぶレイアウト。モータースポーツの経験がフィードバックされたシフトパターンを、メーカーは「ドッグレッグ」と呼ぶ。加速してクラッチを切った瞬間でもエンジン回転は次のギアにエンゲージしやすいよう、瞬時には落とさない設定。「アクセル全開のままシフトアップが可能だ」と、後から聞いた。ダウンシフトは自動ブリッピングでジャストミートする。

_AMR_Vantage_SabiroBlue_035.JPGAMRの0~100km/h加速は4.0秒 タイムは8ATの通常モデル(同3.6秒)のほうが速いがドライビングの充実感は格別

五感を刺激するスポーツドライビングを堪能。スポーツカーは芸術だ!

 標準のヴァンテージは切れ味鋭いハンドリングの持ち主。このハンドリングには旋回初期と脱出の駆動力を有効に伝達するEデフが貢献している。

 一方、AMRは機械式LSDだ。左右後輪の回転差が生じると加速側38%、減速側40%のロック率を持つLSDが即座に回転制御に入る。

 アウトバーンへの流入のループで3速をキープ、アクセルを深々と踏み込んでみた。最大に横Gが加わったあたりでパワースライドの兆候が表れる。そのまま踏み込めばドリフトに持ち込める状況だ。

 機械式LSDを持つAMRは、明確なリアの動きを見せる。この点がEデフとの違いだ。サーキットのような限られたステージで本領を発揮するに違いない。

 アウトバーンで各ギアの最高速度も確認した。アッという間に5速7000rpm、250km/hに達するが、まだまだ余裕。追越レーンが混雑していたので、6~7速はアクセルを戻す。

 4輪のタイヤをはじめ、エンジン、ブレーキなど、あらゆる情報を得ながらクルマを操る楽しさ、醍醐味を、AMRは呼び覚ましてくれる。随所に神経を行き届かせた運転はアトラクティブである。スピード性能は、標準の8速AT+Eデフにかなわない。しかし7速MT+機械式LSDのAMRには、操る楽しみがある。スポーツドライビングは五感を駆使するものだ、と再認識した。

ステアリング回り_AMR_Vantage_SabiroBlue_074.JPGインパネはアルカンターラ張り ステアリングギアレシオは12.9対1のクイックな設定 インパネ中央に8インチ液晶スクリーンを装備 7速MTはシフトダウン時自動ブリッピング機能付き

_AMR_Vantage_SabiroBlue_113.JPGAMRは機械式LSD標準装備 アクセルの踏み込みで挙動が調整しやすいセッティング 駆動方式はFR 前後重量配分は理想的な50対50

※次ページでスペックを紹介

アストンマーティン・ヴァンテージAMR主要諸元

_AMR_Vantage_SabiroBlue_106.JPG

価格=7MT 14万9995ポンド(英国)
全長×全幅×全高=4465×1942×1274mm
ホイールベース=2704mm
乾燥車重=1499kg
乗車定員=2名
エンジン=4リッター・V8DOHC32Vツインターボ
最高出力=510ps/6000rpm
最大トルク=625Nm(63.8kgm)/2000~5000rpm
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ=フロント:255/40R20/リア:295/35R20
駆動方式=FR
最高速度=314km/h
0→100km/h加速=4.0秒
※デビュー●2019年5月、スペックは欧州仕様

_AMR_Vantage_SabiroBlue_071.JPG3982cc・V8DOHC32Vツインターボ 510ps/6000rpm 625Nm/2000~5000rpm AMG製パワーユニットをチューニング エンジンはフロントミッドシップに配置

_AMR_Vantage_SabiroBlue_087.JPG7速MTのシフトパターンは「ドッグレッグ」と呼ぶ1速を左手前に配したレイアウト

_AMR_Vantage_SabiroBlue_066.JPGタイヤはピレリPゼロ フロント255/40R20/リア295/35R20サイズ ホイールは強靭な鍛造スポーク形状

△_AMR_Vantage_SabiroBlue_021.JPGリアエンドはディフューザー形状 エグゾーストエンドは左右4本出し 排気音は豪快

SNSでフォローする