独アウディAGは11月20日(現地時間)、フラッグシップSUVクーペのQ8シリーズにハイパフォーマンスモデルの「RS Q8」を設定し、2020年第1四半期にドイツおよびヨーロッパ諸国から発売を開始すると発表した。車両価格はベースグレードで12万7000ユーロ(約1532万5000円)に設定する。
▲アウディQモデルの頂点に位置するアウディRS Q8 パワーユニットに専用チューニングの3996cc・V型8気筒DOHC直噴ガソリンツインターボエンジン(600hp/800N・m)を搭載する
メーカー自ら「アウディRSモデルの25年の歴史において、今回初めて真のハイパフォーマンススポーツカーの遺伝子を備えた大型SUVクーペが誕生した」と謳うRS Q8は、パワーユニットに専用チューニングの3996cc・V型8気筒DOHC直噴ガソリンツインターボエンジンを搭載する。最高出力は600hp、最大トルクは800N・mを発生。セッティングを最適化した8速ティプロトニックトランスミッションを介して、強力パワーをクワトロシステムのフルタイム4輪駆動機構に伝達する。性能面では0→100km/h加速を3.8秒、0→200km/h加速を13.7秒でこなし、最高速度は通常で250km/h(電子リミッター作動)、オプションのダイナミックパッケージを選択すると同305km/hにまで引き上がる。
この強力パワーユニットには、48V主電源機構をベースとするマイルドハイブリッド(MHEV)ドライブシステムが組み込まれる。クランクシャフトにはベルト駆動式オルタネータースターター(BAS)を接続。減速および制動時には最大12kWの電力を回生してリチウムイオンバッテリーに蓄電し、またドライバーが55~160km/hの速度域で走行中にアクセルペダルから足を離した際は、ドライブマネージメントシステムが走行状況およびアウディドライブセレクトダイナミック・ハンドリングシステムで選択されたモードに従ってエネルギーを回生するか、エンジンを停止して最大40秒間コースティング(惰性走行)するかを選択する仕組みだ。BASはアクセルを踏み込むと、瞬時にエンジンを再始動。22km/h未満の速度域では、アイドリングストップ機能を作動させることも可能である。さらに、MHEVドライブシステムはカメラセンサーとも連動。停止時に前方車両が動き出すとエンジンが始動し、再発進の環境が整ったことをドライバーに知らせる。
▲高効率化を目的に48V主電源機構をベースとするマイルドハイブリッド(MHEV)ドライブシステムやシリンダーオンデマンド(COD)を組み込んだ
高効率化の面では、エンジン本体にシリンダーオンデマンド(COD)を採用したことも注目点だ。高めのギアが選択され、エンジンが低〜中負荷状態の場合、燃料噴射と点火を停止し、吸気バルブと排気バルブを閉じることにより2番、3番、5番、8番のシリンダーを休止。4気筒モードでは、高まる負荷に対応するようバルブの作動ポイントが最適化される。また、休止したシリンダーはほとんどパワーの損失を発生することなくガススプリングのように作動を続け、ドライバーがアクセルペダルを踏み込むとすぐに再作動するようにセッティングした。
高出力ユニットに合わせてチューニングしたクワトロシステムは、通常走行時に前後40:60の比率で駆動力を配分。スリップが発生すると、トラクションがかかっているアクスルにより多くのトルクを送り出す。この場合、駆動力の最大70%をフロントホイールに、最大85%をリアホイールに配分するよう設定した。また、オプションとしてクワトロ・スポーツディファレンシャルを用意。必要に応じて左右のリアホイール間に駆動トルクを最適配分し、スポーティなコーナリングでのトラクション性能をいっそう高めている。
前後5リンクで構成した懸架機構には、専用セッティングの電子制御ダンパー付アダプティブエアサスペンションスポーツを標準で装備する。ライドハイトは、運転状況やドライバーの好みに応じて最大90mmの間で変化。快適性とスポーティ性を高次元で融合させた。また、オプションとしてエレクトロメカニカル・アクティブロールスタビリゼーション(EAWS)を設定。高速コーナリング中のボディロールを最小限に抑えるとともに、48V主電源機構に統合されて回生システムの役割も果たしている。
操舵機構に関しては、高トルクの電動スピンドルドライブと2本のトラックロッドを介してリアホイールを動かすオールホイールステアリング(4輪操舵)を装備。また、操舵機構に加えてエンジンやトランスミッション、サスペンションなどを統合制御するアウディドライブセレクト・ダイナミックハンドリングシステムを採用し、ドライバーが計8モード(コンフォート、オート、ダイナミック、エフィシエンシー、オールロード、オフロード、個別に設定可能なRS専用のRS1およびRS2)から選択できるように設定した。
シューズには10スポークスターデザインの22インチアルミホイール+295/40R22タイヤを標準装備し、オプションで5Yスポークローターデザインの23インチ鋳造アルミホイールを用意。制動機構には内部ベンチレーション機能付コンポジットディスク(ディスク径フロント420mm/リア370mm)を標準で、RSセラミックブレーキ(ディスク径フロント440mm/リア370mm)をオプションで設定した。
▲リアビューには上部にRSルーフエッジスポイラー、下部にハイグロスブラックのディフューザークリップを備えたRS専用リアスカートとRS専用楕円テールパイプを装備して空力特性の向上や見た目の存在感のアップを果たした
エクステリアについては、"自信にあふれたスタイル"に仕立てたことが訴求点だ。フロント部は印象的な八角形シングルフレームにハイグロスブラックのRS専用ラジエーターグリル、グロスブラックのRSハニカムグリル、そしてグリルと組み合わせたサイドエアインレットおよびハイグロスブラックのブレードを採用し、鍛え上げられたアスリートのような雰囲気を創出。また、サイドビューは優雅なラインを描くルーフとホイールアーチ上の力強いブリスター、ボディ同色のRS専用トリムストリップ(車幅は前10mm、後5mm拡大)などによってパワフルな外観を強調する。そしてリアセクションは、上部にRSルーフエッジスポイラー、下部にハイグロスブラックのディフューザークリップを備えたRS専用リアスカートとRS専用楕円テールパイプを装備して、空力特性の向上や見た目の存在感のアップを果たした。一方、外板色には1色のソリッドと8色のメタリックまたはパールエフェクト仕上げの計9カラーをラインアップ。ドアミラーハウジングはブラックが標準で、ボディ同色、アルミニウムまたはカーボンをオプションとして用意する。また、ヘッドライトは標準のLEDタイプとオプションのRSマトリクスLED(スモークタイプ)が選択可。さらに、LEDテールライトやデジタルキャラクターを備えた立体的なデイタイムランニングライトシグネチャー、ダイナミックターンインジケーターなども設定した。
インテリアについては、スポーティかつクリーンなデザインで構成したことが特徴だ。ヘッドライニングは標準でブラックのクロス、オプションでルーナーシルバークロス、アルカンターラルーナーシルバー、アルカンターラブラックを設定。キャビン部はヘッドライニングと調和のとれたカラー(ブラックが標準で、コニャックとグラナイトグレーをオプション設定)でまとめる。インパネはスリムかつ水平基調ラインで仕立て、ダッシュボード中央には最上位システムのMMIタッチレスポンスディスプレイを配した。また、幅の広い左右対称のセンターコンソールにはアルミニウムで織ったレース地のようなテクスチャーで装飾するフレームを組み込み、大型SUVクーペのスポーティなキャラクターをより強調している。一方、前席にはRSエンボス加工を施したブラックパールナッパレザー/アルカンターラのスポーツシートを装着。オプションとして、ハニカムパターンとRSエンボス加工を施したヴァルコナレザーのRSスポーツシートを設定する。3名掛けの後席は、標準でスライド機能を内蔵。背もたれを折りたたむと、ラゲッジコンパートメント容量を最大で1755リットルまで拡大できる。テールゲートは利便性に優れる電動式だ。機能面の拡充もトピックで、アウディバーチャルコクピットの専用RSディスプレイとMMIディスプレイにはトルクや出力、タイヤ空気圧、温度、ラップタイム、Gフォースなどの情報を表示。また、オプションのヘッドアップディスプレイにはRS固有の情報も表示するようにアレンジした。
▲インテリアはスポーティかつクリーンなデザインで構成。パフォレーテッドレザーを使用したフラットボトムのステアリングホイールにはマルチファンクションボタンを装備する
安全運転支援システムの充実ぶりも見逃せない。最新のアダプティブクルーズアシストやエフィシェンシーアシスト、交差点アシスト、車線変更警告、360度カメラなど、30以上のアシストシステムを利用可能とする。また、Audi connectオンラインサービスにはルート計算のプロセスに予測機能を追加した。
なお、RS Q8の日本への導入時期は現在のところ未定。いち早いラインアップを期待したいところだ。