独アウディAGは11月20日(現地時間)、電気自動車「e-tron」シリーズにSUVクーペモデルの「e-tronスポーツバック」を設定し、2020年春にヨーロッパ市場に導入すると発表した。
▲アウディe-tronスポーツバック SUVクーペのスタイリングは全長4901×全幅1935mm×全高1616mm/ホイールベース2928mmに設定。量産車として初めてデジタルマトリクスLEDヘッドライトを装備する
e-tronスポーツバックは、広々としたスペースのSUVモデルとエレガントな造形の4ドアクーペ、そして先進的な電気自動車のキャラクターを統合した新種のピュアEVモデルである。まずエクステリアでは、リアに向かって優雅なラインを描くルーフに大きく傾斜したDピラー、そして筋肉質で力強いボディ下部を融合させて、エレガントかつ豊かなSUVクーペのフォルムを創出したことが訴求点。ボディサイズは全長4901×全幅1935mm×全高1616mm、ホイールベース2928mmに設定する。ディテールにもこだわり、フロント部はブライトプラチナグレーで彩った八角形のシングルフレームグリルにマトリクスLEDヘッドライト、デイタイムランニングライトの機能を有するヘッドライト下端の4本のデザインエレメントなどを配してオリジナリティあふれるマスクを構成。サイドビューは立体的な造形としたうえでアンスラサイトに塗ったホイールアーチトリムやブラックで仕立てたアンダーボディプロテクション/ディフューザー/ドアシルなどを採用し、SUVモデルならではの力強い外観を強調する。そしてリアセクションは、幅広いディフューザーに横長のLEDコンビネーションランプ、エッジの利いた後端の形状、厚みのあるパネル面などによって安定感と独特の存在感を演出した。また、より個性を打ち出す仕様として、アドバンストエクステリアラインとSラインを設定する。アドバンストエクステリアラインでは、グレーのアタッチメントやマットシルバーのアンダーボディプロテクションおよびディフューザーを採用。Sラインでは20インチホイールとスポーティセッティングのエアサスペンション、専用アレンジのグリルにより明確な輪郭を持たせたバンパー、照明付きのアルミニウム製ドアシルトリム、リアスポイラーなどを装備した。
存在感あふれるSUVクーペのスタイリングは、エアロダイナミクスの点でも効果を発揮する。空気抵抗係数(Cd値)は0.25の優秀な数値を達成。1回の充電での航続距離は最大で446km(WLTPモード)に達し、既存のe-tronと比較して約10km伸びた。また、ウィング形状のサポートに設置した小型のバーチャルエクステリアミラーや電動格納式のエアインテークなども、空力特性の向上に貢献する。なお、エクステリアミラーの画像はインパネとドアの間に配した高解像度OLEDディスプレイに表示。ドライバーがディスプレイ上で指を動かすと、映し出すアングルを調整することが可能だ。高速道路/旋回時/駐車時の3パターンの運転状況に合わせて自動調整する機能も組み込み、それぞれのシナリオにおいて最適な視界を確保している。
▲存在感あふれるSUVクーペのスタイリングはエアロダイナミクスの点でも効果を発揮。空気抵抗係数(Cd値)は0.25の優秀な数値を達成。1回の充電での航続距離は最大で446km(WLTPモード)に達する
外装では、量産車として初めてデジタルマトリクスLEDヘッドライトを装備したことも注目ポイントだ。これはビデオプロジェクターなどにも採用される「DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)」の技術に基づいており、100万個のマイクロミラーを含むチップをライト内に設置。静電界を活用しながら、各エッジの長さがわずか数百万分の1mmのマイクロミラーを毎秒5000回あまりも調節することで、高い精度での照射と緻密な制御を実現する。さらに、きめ細かい照射パターンにより路面や壁にライトで文字や図形を表示することも可能とした。
前後アクスルに電気モーターを、フロア部に駆動用バッテリーを搭載するパワートレインに関しては、「55クワトロ」用と「50クワトロ」用の2種類を設定する。55クワトロには前後合わせて最高出力265kW/最大トルク561N・mを発生する2基のモーターと、容量95kWhのバッテリーを採用。性能面では、0→100km/h加速が6.6秒、最高速度が200km/h、最大航続距離が446km(WLTPモード)を達成する。また、シフトセレクターをDからSに移してアクセルを全開にすると起動する「ブーストモード」も設定し、この際は最長8秒間、最高出力300kW/最大トルク664N・mを発揮し、0→100km/h加速は5.7秒に達する。一方、50クワトロは前後合わせて最高出力230kW/最大トルク540N・mを発生する2基のモーターと、容量71kWhのバッテリーを搭載。システム自体は55クワトロに比べて120kgほど軽くなる。性能面では、0→100km/h加速が6.8秒、最高速度が190km/h、最大航続距離が347km(WLTPモード)をマークする。なお、バッテリーシステムは頑丈な保護フレームとセルモジュールを保持するアルミニウムケースにより、非常に高い剛性と耐衝撃性を実現。充電は55クワトロが最大150kWの直流(DC)急速充電に対応し、約30分でバッテリー容量の約80%まで充電可能。50クワトロは最大120kWに対応し、約30分でバッテリー容量の約80%までを充電できる。走行パターンについては、通常時がリアモーターによる後輪駆動をメインとし、ドライバーがさらなる加速を求めるとき、または滑りやすい路面などを走行するとき、そして高速コーナリング中に過度なアンダーおよびオーバーステアが発生しそうなときに、即座にフロントモーターが作動して4輪駆動に移行する仕組みだ。
▲前後アクスルに電気モーターを、フロア部に駆動用バッテリーを搭載。55クワトロには前後合わせて最高出力265kW/最大トルク561N・mを発生する2基のモーターと容量95kWhのバッテリーを採用。ブーストモードも設定し、この際は最長8秒間、最高出力300kW/最大トルク664N・mを発揮する
機構面については、5リンクサスペンションにプログレッシブステアリング、電気油圧式ブレーキシステムといったコンポーネントを専用セッティングで搭載。懸架システムにはアダプティブエアサスペンションを組み込み、走行状況に応じて車高が最大76mm変化して走行安定性や空力性能の向上を図る。また、ドライバーが任意に走行モードを設定できるアウディドライブセレクトを標準で装備。ドライバーはサスペンションやステアリングなど、各コンポーネントの設定を7種類のプロファイルから選ぶことが可能だ。
▲機能装備として12.3インチのアウディバーチャルコクピットや12.1インチと8.6インチのふたつのディスプレイを備えたMMIタッチレスポンスオペレーティングシステムを設定
インテリアはロングホイールベースを活かした広い居住空間と、EV機構ならではのフラットなフロアなどにより、乗員5名が快適に過ごせ、かつ大容量の荷物が積めるスペースを確保する。また、空間自体はデザインとテクノロジーがシームレスに融合した、エレガントなラウンジのような雰囲気を演出。機能装備として、12.3インチのアウディバーチャルコクピットや12.1インチと8.6インチのふたつのディスプレイを備えたMMIタッチレスポンスオペレーティングシステム(Amazonの音声認識サービス「Alexa」の利用可)なども装備した。
▲積載容量は615リットル、後席格納時で最大1655リットルを確保。テールゲートは電動式
一方、積載容量は615リットル、後席格納時で最大1655リットルを実現。フロントにも充電ケーブルや工具キットが収まる収納コンパートメントを設定している。