バリューモデル・パーソナルセレクション by 西川淳
ホンダがやっとKカー以外でも本気を出した。新型フィットの乗り味にはこれまでの国産コンパクトカーにはない「しなやかさ」を感じる。とくにクロスターはその印象が強い。通常モデルと比べて没個性なフロントマスクだけは玉にキズだが、それを補ってあまりあるドライブフィールが魅力だ。
どこかヨーロッパのベーシックカーを思わせるが、それは基本がしっかりしている証拠である。クロスターの実力はライバル各車を上回る。
ポルシェが作ったミッドシップの本格スポーツである。2シーターであること以外、実用面でも困らない秀逸なスポーツカーだ。
通常グレードでも大いに価値があるが、今日ではレアな4リッター自然吸気のフラット6エンジン(400ps/420Nm)を積むGTS4.0グレードとなれば、一気に気分は盛り上がる。しかもトランスミッションは3ペダルマニュアルだ。NAフラット6+6速MT。リセールも大いに期待できる。クーペのケイマンも同評価である。
高級ビッグサルーンに乗ったとき、高価なのだからこれくらいの性能は当たり前……そう思う機会が多い。素晴らしいクルマでもなかなか期待値を上回らない。その点、S400dは想像を超えた。大きく超えた。
街乗りから高速までつねにクルマと一体感があり、精神的にも肉体的にも、経済的にも往復1000kmをいとわないGT性能は圧巻のひと言。いま世界で最も完成度の高い乗用車。一度この乗り味を経験するともう他のセダンには戻れない。
安ければいい、という話ではない。投じたお金が相対的に安かった、と思えることが大事。とはいえこれが難しい。カテゴライズやクラスごとに性能や機能、価格が横並び、というのが現代の常識だからだ。それでも何かしら飛び抜けてユニークな“価値”をひとつでも発見できれば、積極的に楽しめ、乗る価値がある。