「このモデルはヤリスにクラッディング(樹脂パーツ)を装着し車高を上げた、お手軽クロスオーバーではない。ダイナミックなデザインと独自の個性を備えた新しいコンパクトSUV(欧州Bセグメント)」と関係者は語る。
新型ヤリスクロスは、WRC(世界ラリー選手権)ウエポンのGRヤリスに続くヤリス・ファミリー第2弾だ。欧州をはじめ世界で販売されるトヨタの戦略車である。発売時期は日本が今秋、欧州は2021年半ばを予定している。
エクステリアは50%がオリジナル、 50%はヤリス・ファミリーといったイメージ。
フロントは高めのボンネットとヤリス比で 60mm延長されたオーバーハング、そしてRAV4のイメージを継承した伸びやかで力強いデザインが特徴的だ。
サイドは、個性的な形状のホイールアーチと大胆なクラッディング処理、そして大径タイヤ&ホイールが目を射る。
リアはレクサスUXを彷彿させる寝かされたCピラー、ワイドフェンダーからの強い絞り込み、特徴的なリアコンビランプで、堂々とした印象をアピールした。
全体としてタイヤが4隅にドシッと踏ん張った安定感の高いスタイリッシュフォルムである。
ボディサイズは全長×全幅×全高4180×1765×1560mm。ヤリス(同3940×11695×1500mm)よりひと回り大きい。とくに全幅は70mmもワイド(欧州仕様のヤリスは全幅1745mm)だが、日本の道路環境でも扱いやすいサイズ設定といえる。
むしろ気になる点は、1560mmの全高だ。日本仕様の発売時に、一般的なタワーパーキングが利用できる改良が行われるか、注目したい。
インテリアはヤリスと共通点が多い。
メーター回りは専用デザイン。
公開された日本仕様にはシフトレバー後方に走行モード切り替え用のダイヤルが装着されていた。
さらに欧州仕様のシートはダイヤモンドステッチ形状。
各部にヤリスクロス独自の演出がなされている。
ブラウン/ブラックのインテリアカラーと相まって、全体的にヤリスよりも「大人」の雰囲気を強調。駐車ブレーキは電子式だ。
ホイールベースはヤリス比10mm長い2560mm。
後席の居住性はヤリス同等のようだが、ルーフライン変更による頭上空間の拡大やサイドウィンドウの大型化で開放感はアップしている。
また、ヤリス比140mmのリアオーバーハング延長はラゲッジスペースに活用されており、40対20対40の3分割シートバックや多彩にアレンジできるラゲッジボードと相まってユーティリティは高い。
リアゲートはこのクラスでは珍しいハンズフリー機能付きの電動タイプが設定された。
パワートレーンはガソリンが1.5リッター直列 3気筒ダイナミックフォースエンジンと発進ギアを持つダイレクトCVT。
ハイブリッドは1.5リッターエンジンとモーターで構成するTHS-Ⅱだ。基本的にはヤリスと共通。
ハイブリッドの4WDシステムはリアにモーターを搭載する電動AWD(E-Four)と推測するが、発表リリースには「通常運転はFF、必要な時にトルクを後輪に伝える」、「日常の運転、悪条件、低μ路でのさらなる安定とトラクションを提供」、「モーター駆動で機械式よりコンパクトで軽量」とある。
ヤリスより出力の高いリアモーターを搭載する可能性が高い。なお、インパネ空調パネル下にはヒルディセントコントロールのスイッチを配置している。
プラットフォームはGA-B型。TNGA理論に基づいて開発された次世代タイプを採用している。
低重心、ワイドスタンスなどの基本特性はそのままに、トレッドや最低地上高を変更。俊敏性が高く無駄な動きが抑えられたヤリスの走りに加え、ストロークとロールを活かした、しっとりした乗り味が期待できる。
最低地上高は未公表。写真を見る限り、十分なロードクリアランスが確保されており、しかもフロア底面はフラット仕上げ。オフロード性能は十分に確保されていると判断できる。
安全支援システムは、最新のトヨタセーフティセンスを採用。日本仕様のヤリスのACC(アダプティブクルーズコントロール)は全車速対応ではないが、電子パーキングブレーキのヤリスクロスは、この弱点が解消されるだろう。
価格はヤリスより高い。ライズ(167万9000〜228万2200円)、C-HR(236万7000〜309万5000円)とのバランスを考えると、190万円~270万円前後だと予想される。