日産アリア 日本発売2021年中ごろ予定 新車ニュース
世界の自動車産業の「電動化」の勢いは、新型コロナウイルス感染拡大の中でも鈍っていない。むしろ加速している。とりわけ欧州の動きは積極的だ。
ドイツでは国のEV購入補助金を9000ユーロ(約108万円)に倍増した。自動車業界からはエンジン車への補助金を望む声も出たが、政府は受け入れなかった。
フランスは総額80億ユーロ(9600億円)の自動車産業支援を決め、うち10億ユーロをEVとPHVの購入補助に充てる。EV購入補助金は7000ユーロ(約84万円)になった。
欧州はコロナ禍で打撃を受けた自動車産業を立て直してから電動化に進むのではなく、立て直しと同時に電動化を一気に推進する状況になっている。
昨年の東京モーターショーでコンセプトカーが世界初公開された日産のクロスオーバーEV、アリアの正式発表は、こうした流れに対する日本からの意欲的な回答だ。
なによりも斬新なのはデザイン。内外装とも、コンセプトカーほぼそのままで発表された。
「スリーク・シック・シームレス」というキーワードで描かれたエクステリアは、シンプルながら力強く、モダンである。
フロント回りはスモーク仕上げのパネルでカバーされ、内側は日本の伝統的な組子パターンで表現。白く光るVモーショングリル両側は、シーケンシャルウインカーとしても機能する。リアは水平方向に伸びるコンビランプがアクセント。細く赤い光が浮き出る演出が印象的だ。ボディサイズは全長×全幅×全高4595×1850×1655mm。ハリアー(同4740×1855×1660mm)と全幅と全高はほぼ同等。全長は145mm短い。
室内もシンプルかつシームレスな構成。インパネは2つの12.3インチディスプレイと、その下の木目調パネルに浮かび上がるエアコンスイッチで構成。物理的なスイッチは最小限に留めた。大型のフルカラーヘッドアップディスプレイを装備する。
エアコンやナビは音声操作に対応。アマゾンのアレクサを採用し、天気予報の確認や家族との通話のほか、走行中の車内から自宅の照明やエアコンのスイッチ操作が可能になった。ソフトウエアは通信でアップデートする機能付き。専用スマートフォンアプリは、乗車前にドライブコースを決めてクルマに転送したり、エアコン操作ができる。
パッケージングも優秀だ。新開発のEV専用プラットフォームはフラットなフロアを実現。エアコンのユニットをキャビンからフロントモータールームに移設した設計が、ワンクラス上のゆったりとした室内空間に結びついた。
アリアは1モーター式FFと2モーター式4WDの2シリーズ構成。それぞれに65kWhと90kWhバッテリー搭載モデルをラインアップ。WLTCモードの満充電での航続距離は、最長(FF・90kWhモデル)で610kmに達する。
バッテリーは130kWの急速充電に対応。30分で最大375km分の走行が可能。日産では最大出力150kWのチャデモ急速充電器を、国内の公共性の高い場所に設置する調整を進めているという。
4WDは「e―4ORCE」と命名した最新の制御技術を搭載。前後モーターと4輪のブレーキを繊細にコントロールし、減速時のノーズダイブを防止、リニアで安定したコーナリングを可能にした。
新開発プラットフォームはバッテリーを車体中央に置くレイアウトで、低重心かつ優れた前後重量配分を達成。バッテリーケース内にクロスメンバーを通して高い剛性も確保した。4WD・90kWhモデルにはプロパイロット2.0を標準装備。プロパイロットパーキングは車外からの操作で駐車する機能が追加された。
アリアの日本発売は2021年中ごろを予定。価格は約500万円からという。アリアは世界のEVシーンを改革する期待の意欲作である。