メルセデスAMGのGTモデルは、ブランドの高性能イメージをアピールするフラッグシップモデルだ。2014年にオリジナル設計の2シーターGTスポーツとしてデビューした。事実上、SLSシリーズの後継車だが、車格は引き下げられている。価格と性能を見る限りポルシェ911シリーズがライバル。17年にマイナーチェンジが実施され、性能アップと同時に、パナメリカーナデザインのフロントマスクに変更された。
ボディタイプはクーペとロードスターの2種。全車M178型4リッター直噴V8ツインターボエンジンを積む。Vバンク内にターボチャージャーをコンパクトに配置したホットインサイドVレイアウト式の高性能ユニットだ。トランスミッションは7速AMGスピードシフトDCTである。
グレード展開は多彩。ラインアップも911に負けてはならじ、という戦略だろう。簡単に整理すると、クーペはGT(476ps)/GTS(522ps)/GTC(557ps)/GTR(585ps)の4グレードがあり、GTとGTCにロードスターを設定している。
クーペのスタイルは、典型的なロングノーズショートデッキ。グラマラスなリアセクションが目を射る。対してロードスターはエレガント。まるで違う雰囲気を見せる。潔くオープン化されたソフトトップの効果だ。印象の違いは、往年の名車ジャガーEタイプのクーペとロードスターの関係とよく似ている。
どのグレードを選んでも、スターターボタンを押せば野太く、豪快なサウンドとともにV8エンジンは目覚める。ステアリングを握りしめた手を先へ伸ばしたならば、「そのままつかめてしまうのではないか」と思えるほどエンジンの存在が近い。V8ユニットがフロントアクスルより後方、つまり完全なフロントミッドに置かれているからだ。AMG・GTはFRのピュアスポーツカーである。
ひとたびワインディングロードにノーズを向ければ、フロントミッドシップカー独特の、切れ味鋭く軽快で剛性感たっぷりのハンドリングが楽しめる。軽量にして最強のGTRでも、メルセデス・ファミリーの一員らしく、決してハメを外させるような雰囲気はない。けれども過激なトルクフィールと豪放なサウンド、そして意のままのハンドリングが、ドライバーの興奮をかき立てる。その気になれば最高のスポーツマシンになる。
それでいて普段使いも十分に可能だ。911のライバルなのだから当然だろう。ただし、GTRのボディサイズは全長×全幅×全高4550×2005×1285㎜。車幅が広いので街中では気を使う。乗り心地も911GT3級に固めだ。ロードスターなら多少肩の力が抜けてクーペより快適な乗り心地をみせる。
車名=GT R
価格=7SMT 2453万円
全長×全幅×全高=4550×2005×1285mm
ホイールベース=2630mm
トレッド=1695×1685mm
車重=1660kg
エンジン=3982cc・V8DOHC32Vツインターボ(プレミアム仕様)
最高出力=430kW(585ps)/6250rpm
最大トルク=700Nm(71.4kgm)/1900~5500rpm
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ=フロント275/35ZR19/リア325/30ZR20
駆動方式=FR
乗車定員=2名
最高速度=318km/h
0→100㎞/h加速_=3.6秒
※価格を除きスペックは欧州仕様
撮影協力:フレサよしみ