走りは911の味わい。リアルスポーツSUVと呼びたい！

ポルシェ・カイエンS　試乗記

ポルシェ・カイエンS　価格：8SAT　1288万円

スポーツカー専業メーカー、ポルシェのSUV

　最新のカイエンSは、「6気筒エンジンを搭載したSUVのハイパフォーマンスバージョン」という位置づけだ。

　カイエンは、ポルシェのSUVラインアップのフラッグシップ。2002年の1stモデルの発売直後から人気が爆発。現行3rdモデルも世界中で高い支持を集める。現在は弟分のマカンとともに、ポルシェの屋台骨を支える存在に成長した。

　ポルシェは356、そして911で名声を確立した「スポーツカー専業メーカー」である。現在でも「自社が手がける作品は、すべてがスポーツカー」という姿勢を崩していない。

　SUVは、世界に星の数ほど存在する。カイエンが属するトップエンドクラスにも、魅力あふれるライバルが百花繚乱という状態。そうした中から、カイエンが選ばれる理由――それを、ポルシェは「911を作り続けているメーカーの作品だから」と分析する。

　911は、すでに半世紀を超える圧倒的に長い歴史と、つねに世界のトップスポーツカーとして君臨してきた実績を持つ名車だ。そんな911を手がけてきたメーカーの作品だからこそ、カイエンには他車とは決定的に異なる魅力がある......これこそが、最大のセールスポイントだ、というのである。

4WDシステムは走行状況に応じて４輪の駆動力を最適制御　新型はリアアクスルステアリング（4WS）を新たにオプション設定　安定性と小回り性に優れる

絶品エンジン。サウンドも最高

　カイエンの走りには、ポルシェらしさがあふれている。ドライバーの期待を決して裏切らない。

　440psという最高出力と、56.1kgmという最大トルクを発するツインターボ付き2.9リッターV6エンジンが発するパフォーマンスは、2080kgのヘビー級の車重を、ものともしない。

　エンジンのフィーリングはパワフルかつ滑らか。アクセルを軽く踏み込むだけで、「スポーツカーメーカーのＳＵＶ」という個性が存分に味わえる。

　トップスピードは265km／hに達し、0→100km／h加速は5.2秒でクリア。パフォーマンスはまさに豪快。ドライバーの望みに完璧に応えてくれる。

　新開発されたステップ式の8速ATの出来栄えは、実に素晴らしい。スタートの瞬間やごく低速時の挙動はスムーズそのもの。そのうえ素早い変速と、加速のダイレクト感はDCTに迫る。

　340ps仕様の3リッターターボを積むベースグレードとの明確な差はサウンド面。やや実用車的な音色のベースグレードに比べると、Ｓは遥かにスポーティで「ポルシェらしい」。加速のたびに届くこのサウンドを耳にするために、Ｓグレードを選びたいと思えるほど魅力的だ。

インパネは機能的　インフォテイメント機能充実　視界はワイド　車両感覚は把握しやすい　ステアリング操舵感はやや重め　高速走行時の安定性は抜群

高次元の運動性能。走るほどに魅力がきわだつ！

　フットワークにはほれぼれする。しなやかでフラット感に富み、加えてロードノイズの遮断性などが大きく向上した結果、最新モデルは上質性が大きくレベルアップした。

　巨大なタイヤを履きつつも、ばね下の動きは信じられないほど軽快。これも新型カイエンならではの挙動といえる。標準のコイルスプリング仕様でも満足できるが、コンフォート性をさらに引き上げたいというユーザーは、オプションのエアサスペンションの選択をお勧めする。

　試乗車が装着していたエアサスペンションは、単にダンピング能力を可変としたり、車高調整に対応しているだけではない。最大の特徴は、新開発された３チャンバーシステムによって、スプリングレートまでが変更できる点だ。これによって、運動性能と快適性が相反することなく、ともに大きく引き上げられる。

　カイエンとしては初設定のリアアクスルステアリング（4WS）は魅力的なオプションだ。走行面でのプラス効果はもちろんだが、日本の道路環境でメリットを感じるのは小回り性が高まる点だ。最小回転半径は標準の5.7ｍに対し5.4mに短縮される。ボディサイズが全長×全幅×全高4920×1985×1695mmと大柄なカイエンにとって、小回りがきくのはうれしい。

　走り込むほどカイエンの魅力は鮮明になる。豪快でありながらも軽快なカイエンＳにふさわしいのは、やはり「SUVのスポーツカー」というフレーズだ。

　見た目の強い押し出し感や、強力なエンジンを搭載することによる加速能力の素晴らしさだけにとどまらない、スポーツカーメーカーだからこそ実現できた高次元の運動性能――これこそが、数あるSUVの中にあって光り輝くポイントになっている。

シートは本革標準　写真のスポーツシートはオプション　室内スペースは前後席とも余裕たっぷり　乗り心地は全速度域でしなやか

※次ページでスペックを紹介

ポルシェ：カイエンS主要諸元

価格＝8SAT　1288万円
全長×全幅×全高＝4920×1985×1695mm
ホイールベース＝2895mm
トレッド＝フロント：1680×リア：1675
車重＝2080kg
エンジン＝2893cc・V6DOHC24Vツインターボ（プレミアム仕様）
最高出力＝324kW（440ps）／5700〜6700rpm
最大トルク＝550Nm（56.1kgm）／1800〜5500rpm
JC08モード燃費＝10.6km／リッター（燃料タンク容量75リッター）
サスペンション＝前後マルチリンク
ブレーキ＝前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ＆ホイール＝フロント255／55R19／リア275／50R19＋アルミ
駆動方式＝4WD
乗車定員＝5名
最小回転半径＝5.7m
パワーウエイトレシオ＝4.73kg／ps
トルクウエイトレシオ＝37.08kg／kgm
※価格とスペックは2019年4月現在